第25話 クリスマス当日
十二月二十五日。
クリスマス当日。
冬休み。
朝から街は賑やかだった。
◇
午後。
映像アーカイ部の部室。
シルヴァが扉を開ける。
すると。
すでにティナとクジャが来ていた。
「早いな」
シルヴァが言う。
「シルヴァが遅い」
ティナが返す。
「少し」
クジャも頷いた。
◇
部室のクリスマスツリーは今日も光っている。
昨日より少しだけ静かな空気。
クリスマスイブが終わったからだろうか。
◇
「クリスマスだな」
シルヴァが言う。
「クリスマスだね」
ティナも笑う。
「クリスマス」
クジャも言った。
会話の内容は相変わらず薄かった。
◇
三人はコメント欄を見る。
『メリークリスマス』
『クリスマス当日も期待』
『プレゼント交換しよう』
そんなコメントが並んでいる。
「プレゼント交換だって」
ティナが読む。
「持ってきてない」
シルヴァが即答する。
「持ってきてない」
クジャも言う。
その時だった。
◇
「私は持ってきたけど」
ティナが小さな袋を取り出した。
シルヴァが固まる。
「え?」
クジャも少し驚いた。
◇
「そんな高いやつじゃないから」
ティナは少しだけ視線を逸らした。
耳が少し赤い。
だが本人は隠しているつもりらしい。
◇
「二人分」
そう言って袋を二つ置く。
シルヴァ用。
クジャ用。
◇
「おお」
シルヴァは素直に驚いた。
中を見る。
キーホルダーだった。
シンプルなデザイン。
普段使いできそうなもの。
◇
「ありがとう」
自然とそう言葉が出る。
ティナは少し笑った。
「どういたしまして」
◇
クジャも受け取る。
「ありがとう」
「うん」
ティナは少し安心したようだった。
◇
シルヴァはキーホルダーを見る。
こういうプレゼントをもらう機会はあまりない。
だから少し嬉しかった。
「大事にする」
そう言う。
◇
一瞬。
ティナの動きが止まった。
ほんの一瞬だけ。
「そ、そう」
それだけ返す。
だが少しだけ嬉しそうだった。
◇
クジャは見ていた。
全部見ていた。
そして。
「青春」
◇
「うるさい」
ティナが即答する。
◇
「何が?」
シルヴァだけ分かっていない。
クジャはため息をついた。
いつものことだった。
◇
三人は少し笑う。
それで空気が戻った。
◇
その後。
三人は駅前を散歩した。
クリスマス当日の街。
昨日より人は少ない。
どこか穏やかだった。
◇
夕方。
帰り道。
冬の空は早く暗くなる。
イルミネーションが光り始めていた。
◇
「今年ももう終わるな」
シルヴァが言う。
「早かったね」
ティナも頷く。
「早い」
クジャも言った。
◇
春に出会った。
そして今は冬。
本当にあっという間だった。
◇
部室。
編集。
投稿。
タイトル。
『クリスマス当日』
◇
コメント欄。
『プレゼントいいな』
『ティナ優しい』
『青春すぎる』
『この空気感好き』
『映像アーカイ部最高』
◇
登録者数。
四百三十七人。
↓
四百八十九人。
◇
「もう五百人だな」
シルヴァが言う。
「見えてきたね」
ティナが笑う。
「近い」
クジャも頷いた。
◇
部室のクリスマスツリー。
窓の外の冬空。
そして机の上のキーホルダー。
それは小さなプレゼントだった。
でも。
今年のクリスマスを思い出すには十分だった。




