第24話 クリスマスイブ
十二月二十四日。
クリスマスイブ。
学校は終業式を終え、冬休みに入っていた。
それでも。
三人はいつものように部室へ集まっていた。
◇
旧校舎三階。
映像アーカイ部。
小さなクリスマスツリーはまだ飾られている。
部室の中だけ少し特別な雰囲気だった。
◇
「クリスマスイブだな」
シルヴァが言う。
「イブだね」
ティナも頷く。
「イブ」
クジャも言った。
会話の内容は薄い。
いつも通りだった。
◇
コメント欄を見る。
『クリスマス回楽しみ』
『イブ何するの?』
『三人でパーティー?』
期待されていた。
少なくとも視聴者はそう思っているらしい。
◇
「どうする?」
ティナが聞く。
シルヴァは少し考える。
「ケーキ」
「雑」
「雑」
二人に即否定された。
だが。
結局それになった。
◇
三人は駅前へ向かう。
街はクリスマス一色だった。
イルミネーション。
クリスマスソング。
赤と緑の装飾。
どこを見てもクリスマスだった。
◇
ケーキ屋には行列ができていた。
「すごいな」
シルヴァが言う。
「クリスマスだからね」
ティナが答える。
「クリスマス」
クジャも頷く。
◇
しばらく並び。
三人は小さなホールケーキを買った。
部費ではなく三人で割り勘。
高校生らしい。
◇
部室へ戻る。
机を寄せる。
ケーキを置く。
紙皿を並べる。
それだけで少しイベントっぽかった。
◇
「メリークリスマス」
ティナが言う。
「まだイブ」
クジャが言う。
「細かいな」
シルヴァが笑う。
◇
三人でケーキを食べる。
甘い。
普通に美味しい。
「うまい」
シルヴァが言う。
「うまいね」
ティナも笑う。
「うまい」
クジャも同意した。
◇
外はもう暗い。
窓の外にはイルミネーションの光が見える。
部室のツリーも光っていた。
◇
ティナは少しだけ窓の外を見る。
春に出会った。
夏祭りへ行った。
海へ行った。
花火をした。
文化祭もあった。
色々あった。
そして今。
クリスマスイブを一緒に過ごしている。
◇
「どうした?」
シルヴァが聞く。
ティナは少し笑った。
「なんでもない」
本当は少し違う。
でも。
今はそれで良かった。
◇
クジャはそんなティナを見る。
そして。
「青春」
いつもの一言。
「うるさい」
いつもの返事。
シルヴァはやっぱり分かっていない。
◇
三人は笑った。
それで十分だった。
◇
夜。
編集。
投稿。
タイトル。
『クリスマスイブ』
◇
コメント欄。
『メリークリスマス!』
『平和で好き』
『ケーキ美味しそう』
『青春してるな』
『この三人ずっと仲良くいてほしい』
◇
登録者数。
三百八十九人。
↓
四百三十七人。
◇
「四百人超えた」
シルヴァが言う。
「おめでとう」
ティナが笑う。
「おめでとう」
クジャも頷く。
◇
春に始まった映像アーカイ部。
登録者ゼロ。
動画一本。
そこから始まった。
今は四百三十七人。
まだ大きな数字じゃない。
でも。
三人にとっては十分すごかった。
◇
クリスマスイブの夜。
部室の小さなツリーが静かに光る。
映像アーカイ部の冬は、まだ続いていく。




