第23話 放課後クリスマスマーケット(後編)
クリスマスマーケットの続き。
外はすっかり夜になっていた。
空気は冷たい。
だが広場は人で賑わっている。
イルミネーションの光が街を照らしていた。
◇
三人はゆっくり歩いていた。
急ぐ理由はない。
撮影も順調。
だから今日は景色を楽しむ時間の方が長かった。
◇
「夜になるともっと綺麗だな」
シルヴァが言う。
ティナも周囲を見回す。
「本当だね」
クジャも頷く。
「綺麗」
広場全体が光に包まれていた。
◇
歩いていると。
小さな雑貨屋台を見つけた。
クリスマス限定らしい。
手作りのキーホルダーや小物が並んでいる。
「こういうの好きそう」
シルヴァが言う。
ティナを見る。
「どういう意味?」
「なんとなく」
ティナは少し笑った。
◇
その時。
ティナの視線が一つのキーホルダーで止まる。
星の形。
小さなガラス細工だった。
「綺麗」
ぽつりと呟く。
◇
シルヴァも見る。
「確かに」
本当に綺麗だった。
イルミネーションの光を反射している。
◇
クジャは二人を見る。
そして。
「青春」
いつもの一言。
「うるさい」
ティナが即答する。
シルヴァだけ意味が分かっていない。
いつも通りだった。
◇
広場の奥。
少し人が少ない場所。
イルミネーションがトンネルみたいになっていた。
青い光。
白い光。
冬の景色だった。
◇
三人はそこで少し立ち止まる。
風が吹く。
少し寒い。
「冬だな」
シルヴァが言う。
「冬だね」
ティナも頷く。
「冬」
クジャも言った。
◇
しばらく無言だった。
でも気まずくない。
映像アーカイ部では珍しくない時間だった。
◇
ティナは光のトンネルを見る。
春。
夏。
秋。
色々あった。
動画もたくさん撮った。
気付けば冬になっている。
少しだけ早かった気がする。
◇
「来年もこうしてそう」
ティナが言う。
シルヴァは少し笑った。
「してそうだな」
クジャも頷く。
「してる」
◇
三人は笑った。
来年のことなんて分からない。
でも。
今はそんな気がした。
◇
帰り道。
駅前のイルミネーションを背に歩く。
夜空は澄んでいた。
冬の星も見える。
◇
「クリスマスも近いな」
シルヴァが言う。
「あと少し」
ティナも答える。
「少し」
クジャも頷いた。
◇
部室へ戻る。
編集。
投稿。
今日の映像は綺麗だった。
いつもより少しだけ。
エモい動画になった気がする。
◇
タイトル。
『クリスマスマーケット 後編』
◇
コメント欄。
『雰囲気最高』
『冬回好き』
『なんか泣きそうになった』
『この三人ずっと見ていたい』
『来年も続いてほしい』
◇
登録者数。
三百四十五人。
↓
三百八十九人。
「もう四百人見えてるな」
シルヴァが言う。
「本当だ」
ティナも嬉しそうだった。
「近い」
クジャも頷く。
◇
部室の小さなクリスマスツリー。
窓の外の冬空。
そして三人の笑い声。
クリスマスイブは、もうすぐだった。




