第22話 放課後クリスマスマーケット(前編)
十二月中旬。
街は少しずつクリスマス色に染まり始めていた。
駅前のイルミネーション。
店先の飾り付け。
流れてくるクリスマスソング。
どこへ行っても冬を感じる。
◇
放課後。
映像アーカイ部の部室。
三人はいつものようにコメント欄を見ていた。
『クリスマスマーケット行ってほしい』
『イルミネーションの続き見たい』
『冬イベント回期待』
シルヴァはスマホを置く。
「行くか」
「早いね」
ティナが笑う。
「いつも通り」
クジャも頷いた。
◇
土曜日。
駅前広場。
冬のイベントとして開催されているクリスマスマーケットだった。
木製の屋台。
イルミネーション。
大きなクリスマスツリー。
思った以上に賑わっている。
「すごいな」
シルヴァが言う。
「思ったより本格的」
ティナも周囲を見回す。
「綺麗」
クジャも小さく呟いた。
◇
三人はゆっくり歩き始める。
ホットチョコレート。
焼き菓子。
クリスマス雑貨。
見ているだけでも楽しい。
◇
「これ美味そう」
シルヴァが立ち止まる。
屋台の前だった。
ティナは苦笑する。
「食べ物ばっかり」
「大事だろ」
「大事」
クジャが同意した。
ティナは諦めた。
◇
三人でホットチョコレートを買う。
紙カップから湯気が立つ。
冷えた手が少し暖かくなった。
「うまい」
シルヴァが言う。
「分かる」
ティナも頷く。
「分かる」
クジャも同意した。
◇
広場の中央。
大きなツリーの前。
たくさんの人が写真を撮っていた。
三人も立ち止まる。
イルミネーションが光る。
冬の夜空。
綺麗だった。
◇
ティナはスマホを取り出した。
「写真撮ろうよ」
「いいな」
シルヴァが答える。
クジャも頷いた。
◇
三人で並ぶ。
スマホを構える。
撮影。
確認。
そして。
「なんか変な顔してる」
ティナが笑った。
「してない」
シルヴァが否定する。
「してる」
クジャが言う。
今日も二対一だった。
◇
その後も。
三人は色々な屋台を見て回った。
雑貨を見たり。
飾りを見たり。
動画を撮ったり。
気付けば時間はかなり過ぎていた。
◇
イルミネーションが一番綺麗な時間。
広場全体が光っている。
人も増えている。
冬の景色だった。
◇
シルヴァはふと思う。
春に映像アーカイ部へ入った時。
こんな冬を迎えるとは思わなかった。
ティナ。
クジャ。
動画。
部室。
全部が当たり前になっている。
少し不思議だった。
◇
「どうした?」
ティナが聞く。
「いや」
シルヴァは笑う。
「楽しいなと思って」
ティナも少し笑った。
「私も」
クジャも頷く。
「私も」
◇
夜。
部室へ戻る。
クジャが編集を始める。
今日だけでも十分動画になりそうだった。
◇
投稿。
タイトル。
『クリスマスマーケットに行ってきた』
◇
コメント欄。
『冬って感じ』
『イルミネーション綺麗』
『この三人好き』
『後編もありそう』
『楽しそうで良かった』
◇
登録者数。
三百十二人。
↓
三百四十五人。
「増えたな」
シルヴァが言う。
「順調だね」
ティナも笑う。
「順調」
クジャも頷いた。
◇
クリスマスまであと少し。
映像アーカイ部の冬は、まだ始まったばかりだった。




