第20話 放課後イルミネーション
十一月も終わりに近付いていた。
放課後。
映像アーカイ部の部室。
窓の外はすでに薄暗い。
夏ならまだ明るかった時間だ。
季節が変わったことを実感する。
◇
シルヴァはスマホを見ていた。
「これ行くか?」
ティナが覗き込む。
クジャも近付く。
画面には地域イベントの告知が表示されていた。
駅前イルミネーション点灯式。
「もうそんな時期か」
ティナが言う。
「冬」
クジャも頷く。
シルヴァは立ち上がった。
「動画になるな」
「なるね」
「なる」
決定だった。
◇
夕方。
三人は駅前へ向かった。
気温はかなり下がっている。
制服の上に上着を羽織る人も増えていた。
「寒い」
ティナが言う。
「寒いな」
シルヴァも同意する。
「寒い」
クジャも頷いた。
三人とも同じだった。
◇
駅前広場。
人が集まっている。
家族連れ。
カップル。
学生。
様々な人がいた。
中央には大きなツリー。
まだ点灯していない。
◇
「思ったより人多いな」
シルヴァが言う。
「人気なんだね」
ティナが周囲を見回す。
クジャはすでにカメラを回していた。
◇
やがて。
カウントダウンが始まる。
十。
九。
八。
七。
広場が少しずつ静かになる。
三人も自然と空を見上げた。
三。
二。
一。
◇
その瞬間。
イルミネーションが一斉に点灯した。
白。
青。
金色。
たくさんの光が夜を照らす。
「おお」
シルヴァが思わず声を漏らす。
ティナも見上げていた。
「綺麗」
クジャも小さく呟く。
◇
三人は広場を歩く。
どこを見ても光だった。
木々。
噴水。
歩道。
全部光っている。
昼間とは全く違う景色だった。
◇
ティナは少し足を止める。
目の前には青いイルミネーション。
光が瞳に映っていた。
シルヴァは何となく振り返る。
「どうした?」
「いや」
ティナは少し笑う。
「思ったより綺麗だったから」
シルヴァも周囲を見る。
「確かにな」
それだけの会話だった。
でも。
ティナは少しだけ嬉しそうだった。
◇
クジャはそんな二人を見る。
「青春」
「うるさい」
今日も即答だった。
シルヴァは意味が分かっていない。
クジャは知っていた。
いつも通りだった。
◇
帰り道。
三人は温かい飲み物を買った。
夜風は冷たい。
吐く息も少し白い。
冬が近付いている。
◇
「今年もあと少しだな」
シルヴァが言う。
「早いね」
ティナも頷く。
「早い」
クジャも言った。
春に出会ったはずなのに。
もう冬が来る。
少し不思議だった。
◇
部室。
編集。
投稿。
タイトル。
『放課後イルミネーション』
◇
夜。
コメント欄。
『綺麗だった』
『冬って感じ』
『イルミネーション回好き』
『ティナ楽しそうだった』
『青春だなぁ』
◇
登録者数。
二百五十六人。
↓
二百八十七人。
「増えたな」
シルヴァが言う。
「もう三百人見えてる」
ティナが笑う。
「見えてる」
クジャも頷いた。
◇
窓の外。
冬の空気が少しずつ近付いている。
映像アーカイ部の放課後は。
今日も静かに思い出を残していた。




