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第19話 放課後自販機

 十一月。




 秋も少しずつ深まってきた。




 放課後。




 映像アーカイ部の部室。




 三人は窓の外を見ていた。




 夕方になるのが早くなった気がする。




 夏ならまだ明るかった時間だ。




 今はもうオレンジ色だった。







「寒くなったな」




 シルヴァが言う。




「分かる」




 ティナも頷く。




「寒い」




 クジャも言った。




 つい数か月前まで海に行っていた。




 それなのに。




 季節が変わるのは早い。







 その時。




 シルヴァのお腹が鳴った。




 部室が静かになる。




「聞こえた」




 ティナが言う。




「聞こえた」




 クジャも言う。




「聞こえてない」




 シルヴァは否定した。




 だが無理だった。




 聞こえていた。




 しっかり。







「何か買う?」




 ティナが聞く。




「自販機」




 クジャが言う。




 それは名案だった。




 校舎裏の自販機。




 映像アーカイ部の定番スポットの一つだ。







 三人は部室を出る。




 夕焼けの校舎。




 少し冷たい風。




 自販機の光が妙に明るく見えた。




「何にする?」




 ティナが聞く。




「ココア」




 シルヴァは即答した。




「冬」




 クジャが言う。




「冬だね」




 ティナも笑う。







 三人は飲み物を買う。




 シルヴァはココア。




 ティナはミルクティー。




 クジャはホットレモン。




 完全に夏ではなかった。







 ベンチに座る。




 温かい缶を手に持つ。




 それだけで少し落ち着く。




「うまい」




 シルヴァが言う。




「分かる」




 ティナも頷く。




「分かる」




 クジャも同意した。







 しばらく三人は夕焼けを見ていた。




 校庭にはまだ部活帰りの生徒がいる。




 吹奏楽部の音も聞こえる。




 どこにでもある放課後。




 だけど。




 今の三人にとっては大切な時間だった。







「来月にはクリスマスか」




 ティナが言う。




「早いな」




 シルヴァが答える。




「早い」




 クジャも頷く。




 夏祭りが遠く感じた。




 海も。




 花火も。




 少し前のはずなのに。







「動画見返したら面白そう」




 ティナが笑う。




 シルヴァも頷く。




「たぶんな」




 夏祭り回。




 海回。




 肝試し回。




 全部残っている。




 それが映像アーカイ部だった。







 部室へ戻る。




 今日の動画は本当に短かった。




 自販機へ行っただけ。




 それだけだった。




 でも。




 編集後の映像を見ると不思議と悪くない。




 いつもそうだった。







 動画投稿。




 タイトル。




『放課後、自販機』







 夜。




 コメント欄。




『こういう日常回好き』




『ココア飲みたくなった』




『秋を感じる』




『この三人本当に仲良いな』




『癒やされる』







 登録者数。




 二百三十四人。




 ↓




 二百五十六人。




「増えたな」




 シルヴァが言う。




「順調だね」




 ティナが笑う。




「順調」




 クジャも頷いた。







 窓の外。




 秋の夜空。




 冷たい風。




 映像アーカイ部の放課後は今日も終わっていく。




 そして。




 明日もまた続いていく。

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