第19話 放課後自販機
十一月。
秋も少しずつ深まってきた。
放課後。
映像アーカイ部の部室。
三人は窓の外を見ていた。
夕方になるのが早くなった気がする。
夏ならまだ明るかった時間だ。
今はもうオレンジ色だった。
◇
「寒くなったな」
シルヴァが言う。
「分かる」
ティナも頷く。
「寒い」
クジャも言った。
つい数か月前まで海に行っていた。
それなのに。
季節が変わるのは早い。
◇
その時。
シルヴァのお腹が鳴った。
部室が静かになる。
「聞こえた」
ティナが言う。
「聞こえた」
クジャも言う。
「聞こえてない」
シルヴァは否定した。
だが無理だった。
聞こえていた。
しっかり。
◇
「何か買う?」
ティナが聞く。
「自販機」
クジャが言う。
それは名案だった。
校舎裏の自販機。
映像アーカイ部の定番スポットの一つだ。
◇
三人は部室を出る。
夕焼けの校舎。
少し冷たい風。
自販機の光が妙に明るく見えた。
「何にする?」
ティナが聞く。
「ココア」
シルヴァは即答した。
「冬」
クジャが言う。
「冬だね」
ティナも笑う。
◇
三人は飲み物を買う。
シルヴァはココア。
ティナはミルクティー。
クジャはホットレモン。
完全に夏ではなかった。
◇
ベンチに座る。
温かい缶を手に持つ。
それだけで少し落ち着く。
「うまい」
シルヴァが言う。
「分かる」
ティナも頷く。
「分かる」
クジャも同意した。
◇
しばらく三人は夕焼けを見ていた。
校庭にはまだ部活帰りの生徒がいる。
吹奏楽部の音も聞こえる。
どこにでもある放課後。
だけど。
今の三人にとっては大切な時間だった。
◇
「来月にはクリスマスか」
ティナが言う。
「早いな」
シルヴァが答える。
「早い」
クジャも頷く。
夏祭りが遠く感じた。
海も。
花火も。
少し前のはずなのに。
◇
「動画見返したら面白そう」
ティナが笑う。
シルヴァも頷く。
「たぶんな」
夏祭り回。
海回。
肝試し回。
全部残っている。
それが映像アーカイ部だった。
◇
部室へ戻る。
今日の動画は本当に短かった。
自販機へ行っただけ。
それだけだった。
でも。
編集後の映像を見ると不思議と悪くない。
いつもそうだった。
◇
動画投稿。
タイトル。
『放課後、自販機』
◇
夜。
コメント欄。
『こういう日常回好き』
『ココア飲みたくなった』
『秋を感じる』
『この三人本当に仲良いな』
『癒やされる』
◇
登録者数。
二百三十四人。
↓
二百五十六人。
「増えたな」
シルヴァが言う。
「順調だね」
ティナが笑う。
「順調」
クジャも頷いた。
◇
窓の外。
秋の夜空。
冷たい風。
映像アーカイ部の放課後は今日も終わっていく。
そして。
明日もまた続いていく。




