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第18話 放課後雨宿り

 十月下旬。




 その日の天気予報は晴れだった。




 少なくとも朝までは。







 放課後。




 映像アーカイ部の部室。




 三人は動画のコメントを眺めていた。




 二百人登録を超えた影響なのか、少しずつコメントも増えている。




 シルヴァは満足そうだった。




 ティナも嬉しそうだった。




 クジャはいつも通りだった。







「今日は何する?」




 ティナが聞く。




 シルヴァは窓の外を見る。




「散歩でもするか」




「雑」




「雑」




 二人から即座に返ってきた。




 それでも却下はされない。




 最近はこういう日も多かった。







 三人は校内を歩く。




 秋の空気は少し冷たい。




 夏の暑さはもうない。




 気付けば季節は変わっていた。




「秋だな」




 シルヴァが言う。




「秋だね」




 ティナも頷く。




「秋」




 クジャも言った。







 その時だった。




 遠くで雷の音が聞こえた。




 三人が空を見上げる。




 灰色の雲。




 嫌な予感がした。




「降るかも」




 ティナが言う。




 その数分後だった。







 雨。




 突然だった。




「うわっ!」




 シルヴァが声を上げる。




 かなり強い。




 予報にはなかった。




 三人は慌てて走る。




 近くの昇降口へ飛び込んだ。







 屋根の下。




 雨音が響いている。




 校庭はあっという間に濡れていた。




「すごいな」




 シルヴァが外を見る。




「すごいね」




 ティナも隣に立つ。




「すごい」




 クジャも頷く。




 帰れなくなった。




 完全に。







 仕方なく。




 三人は昇降口のベンチへ座る。




 雨が止むまで待つしかない。




 動画のネタにもならない。




 そう思った。




 だが。




 意外とそうでもなかった。







 雨の校庭。




 誰もいないグラウンド。




 静かな校舎。




 いつもと全然違う景色だった。




「なんかいいな」




 ティナが言う。




 シルヴァも少し分かった。




 静かだった。




 不思議なくらい。







「雨の日好き?」




 ティナが聞く。




 シルヴァは少し考える。




「嫌いじゃない」




 雨そのものは好きではない。




 でも。




 こういう静かな感じは嫌いじゃなかった。




 クジャも答える。




「分かる」







 三人はしばらく雨を眺めていた。




 会話は少ない。




 でも気まずくない。




 静かな時間だった。







 ティナがふと笑う。




「春だったらさ」




 二人を見る。




「絶対気まずかったよね」




 シルヴァは少し考える。




 確かに。




 入部したばかりの頃だったら。




 何を話せばいいか分からなかったかもしれない。




「かもな」




 そう答える。




 クジャも頷いた。




「かも」







 少しだけ静かになる。




 だが。




 嫌な沈黙ではない。




 むしろ落ち着く。




 そんな沈黙だった。







 やがて。




 雨は弱くなっていく。




 空も少し明るくなった。




「止みそう」




 ティナが言う。




「止みそう」




 クジャも言う。




 シルヴァは立ち上がった。







 帰り道。




 濡れたアスファルト。




 雨上がりの匂い。




 空には少しだけ夕焼けが見えていた。




「結果的に動画になったな」




 シルヴァが言う。




「なったね」




 ティナも笑う。




「なった」




 クジャも頷いた。




 何気ない雨の日。




 でも。




 きっと後で見返したら思い出になる。







 夜。




 動画投稿。




 タイトル。




『放課後、雨宿り』







 コメント欄。




『こういう雰囲気好き』




『なんか落ち着く』




『三人の距離感いいな』




『雨の音癒やされた』




『エモい回だった』







 登録者数。




 二百十一人。




 ↓




 二百三十四人。




「増えたな」




 シルヴァが言う。




「増えたね」




 ティナも笑う。




「順調」




 クジャも頷いた。







 秋の夜。




 映像アーカイ部の放課後は続いていく。




 今日もまた。




 一つ思い出が増えた。

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