第18話 放課後雨宿り
十月下旬。
その日の天気予報は晴れだった。
少なくとも朝までは。
◇
放課後。
映像アーカイ部の部室。
三人は動画のコメントを眺めていた。
二百人登録を超えた影響なのか、少しずつコメントも増えている。
シルヴァは満足そうだった。
ティナも嬉しそうだった。
クジャはいつも通りだった。
◇
「今日は何する?」
ティナが聞く。
シルヴァは窓の外を見る。
「散歩でもするか」
「雑」
「雑」
二人から即座に返ってきた。
それでも却下はされない。
最近はこういう日も多かった。
◇
三人は校内を歩く。
秋の空気は少し冷たい。
夏の暑さはもうない。
気付けば季節は変わっていた。
「秋だな」
シルヴァが言う。
「秋だね」
ティナも頷く。
「秋」
クジャも言った。
◇
その時だった。
遠くで雷の音が聞こえた。
三人が空を見上げる。
灰色の雲。
嫌な予感がした。
「降るかも」
ティナが言う。
その数分後だった。
◇
雨。
突然だった。
「うわっ!」
シルヴァが声を上げる。
かなり強い。
予報にはなかった。
三人は慌てて走る。
近くの昇降口へ飛び込んだ。
◇
屋根の下。
雨音が響いている。
校庭はあっという間に濡れていた。
「すごいな」
シルヴァが外を見る。
「すごいね」
ティナも隣に立つ。
「すごい」
クジャも頷く。
帰れなくなった。
完全に。
◇
仕方なく。
三人は昇降口のベンチへ座る。
雨が止むまで待つしかない。
動画のネタにもならない。
そう思った。
だが。
意外とそうでもなかった。
◇
雨の校庭。
誰もいないグラウンド。
静かな校舎。
いつもと全然違う景色だった。
「なんかいいな」
ティナが言う。
シルヴァも少し分かった。
静かだった。
不思議なくらい。
◇
「雨の日好き?」
ティナが聞く。
シルヴァは少し考える。
「嫌いじゃない」
雨そのものは好きではない。
でも。
こういう静かな感じは嫌いじゃなかった。
クジャも答える。
「分かる」
◇
三人はしばらく雨を眺めていた。
会話は少ない。
でも気まずくない。
静かな時間だった。
◇
ティナがふと笑う。
「春だったらさ」
二人を見る。
「絶対気まずかったよね」
シルヴァは少し考える。
確かに。
入部したばかりの頃だったら。
何を話せばいいか分からなかったかもしれない。
「かもな」
そう答える。
クジャも頷いた。
「かも」
◇
少しだけ静かになる。
だが。
嫌な沈黙ではない。
むしろ落ち着く。
そんな沈黙だった。
◇
やがて。
雨は弱くなっていく。
空も少し明るくなった。
「止みそう」
ティナが言う。
「止みそう」
クジャも言う。
シルヴァは立ち上がった。
◇
帰り道。
濡れたアスファルト。
雨上がりの匂い。
空には少しだけ夕焼けが見えていた。
「結果的に動画になったな」
シルヴァが言う。
「なったね」
ティナも笑う。
「なった」
クジャも頷いた。
何気ない雨の日。
でも。
きっと後で見返したら思い出になる。
◇
夜。
動画投稿。
タイトル。
『放課後、雨宿り』
◇
コメント欄。
『こういう雰囲気好き』
『なんか落ち着く』
『三人の距離感いいな』
『雨の音癒やされた』
『エモい回だった』
◇
登録者数。
二百十一人。
↓
二百三十四人。
「増えたな」
シルヴァが言う。
「増えたね」
ティナも笑う。
「順調」
クジャも頷いた。
◇
秋の夜。
映像アーカイ部の放課後は続いていく。
今日もまた。
一つ思い出が増えた。




