第17話 放課後図書室
十月。
放課後。
映像アーカイ部の部室。
三人はいつものようにコメント欄を眺めていた。
最近は少しずつ視聴者も増えている。
色々な企画案も届くようになった。
「今日はどうする?」
ティナが聞く。
シルヴァは椅子にもたれながら考える。
特に思いつかない。
クジャも珍しく何も言わない。
そんな時だった。
「図書室でも行く?」
ティナが言った。
「図書室?」
「たまには」
悪くない。
シルヴァは立ち上がった。
クジャも続く。
◇
放課後の図書室は静かだった。
ページをめくる音だけが聞こえる。
窓から差し込む夕日。
独特の空気がある。
「久しぶりに来たな」
シルヴァが周囲を見回す。
「私も」
ティナも本棚を眺める。
クジャはすでに何かを探し始めていた。
◇
しばらく歩いていると。
図書室の奥に小さな棚を見つけた。
学校資料コーナー。
あまり目立たない場所だった。
「何だこれ」
シルヴァが一冊取り出す。
古いアルバム。
かなり昔のものらしい。
◇
三人は机へ持っていく。
ページを開く。
そこには何十年も前の学校が写っていた。
「制服違う」
ティナが言う。
「違う」
クジャも頷く。
今とは全然違う。
校舎も違う。
グラウンドも違う。
知らない学校みたいだった。
◇
ページをめくる。
文化祭。
体育祭。
部活動。
色々な写真が並んでいる。
どれも知らない人たちだ。
だけど。
楽しそうだった。
「昔も同じなんだな」
シルヴァが言う。
「何が?」
ティナが聞く。
「文化祭とか」
アルバムを見る。
「楽しそうだろ」
ティナも写真を見る。
クジャも見る。
「確かに」
「確かに」
二人も頷いた。
◇
さらにページをめくる。
十年前。
二十年前。
三十年前。
時代は違う。
でも。
笑っている顔は変わらない。
少し不思議だった。
◇
「記録だな」
シルヴァがぽつりと言う。
クジャが顔を上げる。
「記録」
映像アーカイ部らしい言葉だった。
写真も。
動画も。
残していることは同じ。
時間が経っても見返せる。
思い出せる。
◇
ティナは窓の外を見る。
夕焼けが図書室を照らしていた。
「私たちもさ」
二人を見る。
「何年後かに動画見返すのかな」
少しだけ静かになる。
シルヴァは考えた。
高校卒業後。
何年も経った後。
今の動画を見る。
少し想像する。
「見るだろ」
自然とそう答えていた。
クジャも頷く。
「見る」
◇
しばらく誰も喋らなかった。
ただアルバムを見る。
知らない誰かの思い出。
でも。
どこか自分たちにも重なった。
◇
帰り道。
夕焼けはもう薄くなっていた。
ティナが歩きながら言う。
「今日地味だったね」
「地味だったな」
シルヴァも笑う。
「地味」
クジャも言う。
でも。
悪くなかった。
むしろ映像アーカイ部らしかった。
◇
部室。
編集。
投稿。
タイトル。
『昔の卒業アルバムを見つけた』
◇
夜。
コメント欄。
『こういう回好き』
『記録っていいな』
『映像アーカイ部らしい回だった』
『なんかエモい』
『将来見返したら泣きそう』
三人はコメントを眺める。
そして。
登録者数。
百九十二人。
↓
二百十一人。
「二百超えた」
シルヴァが言う。
ティナも笑う。
クジャも頷く。
大きな数字ではない。
でも。
三人には十分嬉しかった。
今日もまた。
一つ思い出が増えたのだから。




