第16話 放課後コンビニ
十月。
文化祭も終わり、学校はいつもの日常に戻っていた。
放課後。
映像アーカイ部の部室。
三人は特にやることもなくコメント欄を眺めていた。
最近は登録者も少しずつ増えている。
コメントも増えていた。
その中に。
少し変わったものがあった。
『コンビニ回とか見たい』
『学校帰りに寄るやつ』
『日常回好き』
シルヴァはコメントを見て首を傾げる。
「コンビニ?」
ティナも覗き込む。
「コンビニ」
クジャも読む。
三人はしばらく考えた。
そして。
「行くか」
「行くか」
「行く」
結論は早かった。
◇
学校帰り。
夕方。
三人は近所のコンビニへ向かっていた。
特に目的はない。
動画の企画としても弱い。
だが。
それが逆に面白そうだった。
「何買う?」
ティナが聞く。
「決めてない」
シルヴァが答える。
「いつも通り」
クジャが言う。
否定できなかった。
◇
コンビニ到着。
自動ドアが開く。
涼しい空気が流れてくる。
「生き返る」
シルヴァが言う。
「大げさ」
ティナが笑う。
「大げさ」
クジャも言う。
三人は店内を歩き始めた。
◇
飲み物コーナー。
お菓子コーナー。
アイスコーナー。
特に用事はないのに見てしまう。
それがコンビニだった。
「これ新商品だ」
ティナが言う。
「本当だ」
シルヴァも手に取る。
クジャも見ている。
三人とも買った。
こういう時だけ妙に団結力がある。
◇
会計を済ませる。
外へ出る。
夕焼け。
少し涼しい風。
三人は店の横のベンチへ座った。
ジュースを開ける。
お菓子を食べる。
ただそれだけ。
◇
「平和だな」
シルヴァが言う。
「平和だね」
ティナも笑う。
「平和」
クジャも頷く。
本当にそれだけだった。
事件もない。
特別なこともない。
でも。
不思議と楽しかった。
◇
ティナが空を見上げる。
夕焼けは少しずつ暗くなっている。
「夏終わったね」
ぽつりと言う。
シルヴァも空を見る。
「終わったな」
海。
花火。
夏祭り。
ついこの前のことなのに。
少し懐かしく感じる。
「次は冬」
クジャが言った。
「気が早い」
ティナが笑う。
「早い」
シルヴァも笑った。
◇
その帰り道。
横断歩道。
信号待ち。
何気ない時間。
シルヴァはふと思う。
春に部室へ入った時は。
こんな風に毎日一緒に帰るとは思っていなかった。
ティナも。
クジャも。
今では当たり前になっている。
少し不思議だった。
◇
部室へ戻る。
クジャが編集を始める。
今日の動画は本当に普通だった。
コンビニへ行っただけ。
それだけ。
だが。
映像を見返していると少し笑える。
きっと。
こういう日も思い出になる。
◇
動画投稿。
タイトル。
『放課後コンビニ』
◇
夜。
コメント欄。
『こういう回好き』
『なんか落ち着く』
『高校生って感じ』
『日常回助かる』
『コンビニ行きたくなった』
三人は画面を見ながら笑った。
登録者数。
百七十四人。
↓
百九十二人。
「もう二百人見えてきたな」
シルヴァが言う。
「早いね」
ティナも笑う。
「順調」
クジャも頷いた。
◇
窓の外。
夕焼けはもう消えていた。
秋の夜が少しずつ深くなっていく。
映像アーカイ部の放課後は。
今日も静かに続いていた。




