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第19話 激高

閲覧ありがとうございます!

 

 庇われたハンスが、主に礼を述べる。


「……ありがとうございます」

「お礼を言われる筋合いは無いよ。僕は当然のことを言ったまでだ。―――あ、石が」


 不意にアルトリウスが輝きを強くする石を手にし、目を見開いた。

 ついに、その石が眩いばかりの輝きを放ったのだ。


「この中に……」


 アルトリウスは金色の髪の毛を持つ女性の数を数えた。


「いないじゃないか」


 誰も、いなかった。列の最後尾までおよそ15名。その中に女性は12名。

 誰もかれもが色とりどりの髪色を持っていたが、黄色、ましてや金色などいるはずもない。


「どういうことだ?」


 ここに来て己の記憶違いの可能性に焦る。僕が金色だと思っていた人物は、まさか全くの別色だったのか?いや、だとしても関係ない。この中にいるのだ。

 手元の石が、そう言っているのだから。

 この石は魔法に長けたメリッサ先生に特別に探知機能をつけてもらった代物だ。

 ……正直、その方法は合法とは言い難いが。

 人が長い間持っていた物には、無意識にその人特有の魔力が宿る。その宿った魔力を探知する、という簡単な追跡機能。この石は確実に、あの日の女の子から投げられたものだ。それは間違いない。

 とすれば、狼狽えることは無い。


「きゃっ」


 アルトリウスは、思考の海から現実に突如引き戻された。

 短い女性の悲鳴が窓際の白いカーテンの奥から聞こえたのだ。カーテン越しに、影が頭を守っているシルエットが見える。彼女の背後から刺す黄色の夕日がその影を強調し、まるで舞台のワンシーンのように思えた。


「お前のせいだ!! 全部、全部、全部!!」

「やめて!!」


 ヒステリックに叫んだミーシャが、カーテン越しに影を殴りつけている。アルトリウスは体が動いていた。無論、ハンスは彼の一歩先に行動していたようだが。

 アルトリウスの視界の端には目を眇め、魔法を放とうとするクラリスが映る。

 その隣のユージンが駆けだそうとしているのも見えた。


「お前さえいなければ!!!」

「え」


 呆けた声と共に、その影は宙を舞った。

 彼女はミーシャによって突き飛ばされたのだ。

 同時に突風が吹き抜けた。窓という窓のカーテンがまるで誰かに強引に開かれたかのように両脇に開き、差し込む強烈な西日を最大限に迎え入れる。

 まるでスローモーションのように階段を落ちてゆく彼女の姿を見て、アルトリウスは絶句した。


 ガシャーン パラパラパラ


 大きなガラスの花瓶が割れた音がした。

 破片が床を跳ね返る音。カラカラと転がる音。

 音の全てが、花瓶の割れた音であると。

 ミーシャに突き飛ばされた女性が、階段から落ちる前に思わず花瓶を手に取り、花瓶とともに落下していったのだと――そう物語っていた、はずだった。


「あ、れ? 痛く、ない」


 夕日に染まった髪がブンブンと左右に揺れる。

 現実を理解できていない彼女が、恐る恐る背後を見るとそこには何も無かった。いや、砕け散った宝石が金色に染まり、その人を輝かせていた。


 ――妖精。


 アルトリウスはその姿を見て、そう思わざるを得なかった。探し求めた女性を見つけた事よりも、目の前の女性がおそらく古代魔法を使っていた事よりも、何よりも先に感じたのがそれだった。


 ヴァンガーディ王国の国宝――【妖精の嬉涙】。

 あまりにも神秘的な代物であるがゆえに、この世界のものではないと主張する学者も多くいるとされる宝。アルトリウスは幼い頃からその石が好きだった。妖精の涙とはよく言ったもので、陽光を受けて異彩を放つその姿は見る者を須らく虜にする。

 妖精はお伽噺の存在に過ぎないというのが世の常識であるが、彼はそれを素直に信じることが出来なかった。

 彼は【妖精の嬉涙】を実際に目にした数少ない人物であり、彼自身にも古代魔法の心得が少々ある。

 だからこそ妖精の存在を確信してしまったのだ。

 古代魔法は妖精の産物である。

 ――妖精が使用する魔法が古代魔法なのである。


お読みいただきありがとうございました!

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