第15話 理解
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話の繋がり上、今回は少し短めです。
どっと背から汗が流れた。
「レラ? どうかしましたか」
不思議を装ったハンスの声が背後から聞こえるが、振り返れない。
だって、鏡越しに見えたハンスの顔は怖かった。
怪訝とは言い難い、獲物を見つけた猛禽類みたいな眼をしていたから。
……怖い、その眼が私を捉えていることが。
「かっ、勘違いさせる言い方してごめん。似た宝石をいい感じに並べて縫い付けるのはすごく大変だったろうって言いたかったんだ。いくら私でも宝石が造れる人間がいない事くらい知ってるよ。メリッサ先生もよく言ってるもの。古代魔法を扱う人間はもうこの世にいない、失われた魔法だって……」
怖い顔をするハンスを鏡越しに見るのをやめ、下を向いたせいか、ポンポンと言葉が口から出てきた。
ドキドキして待っていると、ふはっと吹き出す声がした。
恐る恐る視線を戻すと、鏡越しの彼は一転、柔らかな眼差しを向けていた。曇り空から太陽が覗いたような安心感を覚えた。
「びっくりしましたよ。いいですか? 君は対話能力を磨いた方がいい。今のはですね、勘違いさせる物言いにも程があります。人によっては目の色変えて君を捕まえに来ますよ」
「脅さないでよ」
「脅しじゃない。俺は今まで悪い人間を沢山見てきた。君は珍しくて美しい見た目をしているから、もっと警戒心を持つべきだ。世間知らずの君に言っときますが、俺が目にしてきた悪行に比べたらあのミーシャ嬢なんて可愛い悪人ですよ」
私の手からドレスを手に取り、ハンスがふむ、と頷いた。
「いいですね。とても似合うと思います」
彼は猫目を吊り上げ、人懐こく笑った。
それに安堵した私はドレスの値段を知るために、店員を探しに行った。
――彼女の後ろ姿を1対の猫目が追っている。
若干挙動不審なレラの背を睨みつけ、ハンスはぼそりと呟いた。
「……メリッサ女史は、古代魔法の現存を信じている。使い手がいなくなった、なんて口が裂けても言わねぇよ。ましてやお気に入りのあんたに」
店員を見つけたレラが、黄色く輝くドレスたちの脇を足早に通り過ぎた時。
透明な髪が淡い金色に照らされるのを見て、彼は息を飲んだ。
「……くそ」
苛立たし気に頭を掻きぐしゃりと顔を歪める。
――あぁ、彼女が、彼女こそがアルトリウス様の探し人だ。
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