7 秘密組織-3-
外は晴れていた。
アナグマたちには眩しすぎるほどの光が容赦なく降り注いでいる。
持ってきておいてよかった、と思いつつ彼はゴーグルを装着した。
夜間の活動が主な彼らにとって、白昼の日差しは強すぎるのだ。
「巨獣に遭わないことを祈ろう」
こちらは三人。
ハイモルデトーチのような凶暴な敵に遭遇したら終わりだ。
「まずは東。少し進んだところに丘がある。それから――」
普段とは異なるゴンドラで地上に出たため、カイロウたちとはぐれた場所を何度も確認する。
「新入り、お前は真ん中だ」
それなりに経験のある二人でさえ、今回は初めてのコースである。
ダージが先頭、キンケルが後尾につき、周囲を警戒しつつ歩む。
見通しはいいが、それは巨獣にとっても同じだ。
「しっかし、こんなことになるなんてな」
ダージが漏らす。
「調査団は動けない。兵団も出せない。王族はおれたちをどうするつもりなんだ」
「ああ、ゴモジュ隊も隊長も見殺しにしろ、と言っているようなものだからな」
調査団の王族に対する怨嗟の声はあちこちで聞こえていた。
表立って反抗する者はいなかったが、不満がくすぶっていることはアナグマも肌で感じている。
一行は岩陰や木陰を選んでさらに歩を進めた。
時おり、天高くで怪鳥とおぼしき鳴き声がしたが、襲ってくることはなかった。
「新入り、ここからは地面がぬかるんでいるから気をつけろよ」
前を歩くダージが言う。
彼としては当然の忠告だったが、アナグマには少々不満だった。
「あの……」
「どうした?」
「その、新入りっていうのはいつまで――」
アナグマが言いかけたとき、頭上で音がした。
「タウディイーだ……!」
キンケルが小さく叫んだ。
コバルトブルーの美しい羽の持ち主が、木の枝に留まっていた。
タウディイーは遭遇する機会が最も多い怪鳥だ。
普段、出くわす怪鳥の中では小さい種だが、それでも体高はアナグマたちの三倍ほどはある。
赤い瞳が白昼にぎらりと光った。
(分かってるな?)
ダージが目配せした。
この種の怪鳥は動くものに敏感に反応する。
息をこらし、じっとしていればやり過ごすことができる。
これに襲われるのは、たいていは恐怖心からあわてて逃げ出す臆病者だ。
――数秒。
彼らにとっておそろしく長く感じられる数秒だ。
わずかに風が起こり、木の葉が宙を舞った。
タウディイーは斜面の上からアナグマたちを見下ろしたままだ。
(まずい……)
これはやり過ごせない、とアナグマは直感した。
怪鳥と目が合っているのだ。
つまり敵は”動かない標的”を見定めている。
このことには二人も気づいている。
あのタウディイーが気分屋の個体だったら、気まぐれでどこかへ飛び去ってくれるだろう。
しかし、どうやらそうではなさそうである。
アナグマはきわめて緩慢な動作で、腰に提げた短剣に手をかけた。
怪鳥が翼を大きく広げ、甲高い声で鳴く。
攻撃の合図だと踏んだアナグマはかまえた。
(あいつは獲物を目がけて滑空すると、地面にぶつかるまで進路を変えられない。最初の動きを見て進路を読めば簡単に側面を取れる!)
全神経を集中させる。
ここで見事に仕留め、二人に新入り卒業を認めさせたい、という想いもあった。
(大丈夫……大丈夫だ……! こいつは前にも相手をしたことがある!)
怪鳥が滑空した。
そのはずみで木の枝が大きくたわみ、木の葉の音を降らせる。
鋭い嘴が眼前に迫る――。
その一瞬前だった。
どこからか放たれた一矢が、怪鳥の首を貫いた。
バランスを崩した巨体は金切り声をあげながらも進路を変え、よろよろと飛び去ろうとする。
突然の出来事にアナグマは惑った。
タウディイーはまだそこにいる。
だが矢がどこから射られたのかも探りたい。
その迷いがわずかな隙を生んでしまう。
「あぶねえッッ!!」
叫び声が落ちたのと、首が落ちたのはほぼ同時だった。
降ってきた影が、鈍色に輝く刀身で怪鳥をふたつに分けていた。
切り離された胴体は数秒、バタバタともがいたあとでピクリとも動かなくなった。
「お前は……!」




