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7 秘密組織-2-

 適当な装備を見繕う。


 これは任務ではない。


 彼の、きわめて個人的な理由による独断である。


 だから隊としての行動はとれなかった。


 ゴモジュ隊捜索以降、調査団は実質的な活動停止状態となっている。


 探索に出る隊もあるにはあるが、活動範囲や時間を大幅に縮小しての小規模なものである。


「装備は……これでいいか」


 アナグマは格納庫を覗き、今の自分に足りないものはないかと考えた。


 必要なものは自宅から私物を持ってきている。


 団の使用許可が必要な強力な武具は持ち歩けないが、最低限の武装は個人レベルでの携行が認められている。


 一般的な兵装なら市販されており、これを扱うのは自由だ。


 考えた末、アナグマは格納庫からは何も持ち出さないことにした。


 これは誰かに見咎められても、私用だと言い訳するためだ。


「……よし」


 深呼吸ひとつに覚悟を決める。


 そんな装備でひとりでどこへ行くつもりだ! ……と制止する者はいない。


 そう叱りつけてくれる人を今から捜しに行くのだから。


 アナグマは基地を出て裏手に回った。


 普段使っているゲートは現在、監視が厳しくなっている。


 ゴモジュ隊の捜索以降、地上に出るには煩雑な手続きが必要となってしまったため、周辺には監督者が何人もいる。


 とても個人的な理由でゴンドラを使えそうにない。


 しかし裏手にある、小さなゴンドラは別だ。


 元々は電気系統の保守点検用に稼働していた昇降機だ。


 軽量の資材の運搬に便利だからと、いちおうは地上まで到達できる構造となっていたが、メインゲートが整備されたことで今では地上への道は閉ざされている。


 が、これはフタをした程度の処置のため、開けようと思えば難しくはない。


「ん…………?」


 古錆びた昇降機の近くに、ふたりの隊員がいた。


 彼と同じ、カイロウの隊の者たちだ。


「アナグマ? なんでここにいるんだ?」


「それは……」


 これは迂闊だった。


 点検用のゴンドラなど普段、人は寄り付かないと思っていたため咄嗟に言いくるめることができない。


 答えに詰まるアナグマはふと、ふたりが携行している物を見た。


 粗末だが地上探索用の武具だった。


「ふたりはこれを使って地上に出るつもりなのでは?」


 うまく質問をかわしつつ、逆に問い返す。


 彼らは顔を見合わせ、アナグマに詰め寄った。


「お前はどうなんだ? こんなところに用はないハズだろ?」


「そうですね。地上に出る以外にここに来る用はないですね」


 アナグマは笑った。


 今の返し方でふたりの真意は分かった。


「ダージさん、キンケルさん。地上に出るんでしょう?」


 彼らが保守係に転向したという話はない。


 つまりふたりがここにいる理由は――。


「お前もか?」


 こういうことになる。


「はねっかえりの新人だと思っていたが、ここまでとは思わなかったぜ」


「お互い様ですよ」


「おれたちは隊長に恩がある。お前はどうしてだ? ここまでする理由があるのか?」


「隊長は父親同然なんです」


 彼は父を喪ってからの経緯を簡単に説明した。


 わざわざこんな場所まで来ている二人だから、ある程度は話していいかもしれない、とアナグマは思った。


「そういうことだったのか……。よし、分かった。じゃあ一緒に行くか」


 二人の顔つきが変わったのを彼は見逃さなかった。


(もしかしたらオレを疑っていたのかもしれないな)


 調査団と兵団はかつてないほど険悪な関係となっており、あらぬうわさが飛び交っている。


 仲違いさせて利益を得ようとする者もいるくらいで、誰もが流言飛語に神経質になっていた。


 いずれ地上での活動を禁止されることを知っているのは、ごく一部だ。


 つまり褒賞欲しさに『地上に出ようとしている者がいる』と王族に密告する者がいないとも限らない。


「途中で落ちたりしませんよね?」


 サビついていたせいか、ゴンドラは甲高い悲鳴をあげた。


「どうだろうな。使われなくなってかなり経つからな」


 事故でも起こせばたいへんだ。


 地上に出ようとしていたことが周囲に知られれば当然、王族の耳にも入る。


「何もないことを祈ろう」


 祈りが通じたか、ゴンドラは問題を起こすようなことはしなかった。


「念のため、ゴンドラは地下に戻しておこう」


 できるだけ痕跡を残さない……というのは経験豊富な調査団だからこその判断だ。




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