6 枢へ-5-
その後、王は小さな食事会を用意した。
三層では見ることのない高級な料理の数々が並ぶ。
ビュッフェ形式のため、めいめい好きなように食事を楽しんでいる。
「貴族ってのは毎日こんなモンばかり食ってやがるのかねェ」
新鮮な肉にスープ、色とりどりのフルーツ。
味気のないものばかり食べているギトーは、居心地の悪さを感じていた。
「いいじゃないか。向こうも私らの食べているものを見たら同じように思うだろうさ」
ズィロはせっかくの機会だから、とこの食事会を楽しむことにした。
「きみたち、いくら王様がいらっしゃらないからといって……さっきも言ったように言葉には気をつけてくれよ……。ボクの心臓が持たないから」
皮肉っぽく言ってソブレロは一気に水をあおった。
「ところでアナグマ君、さっきの話は本当なのかい?」
部屋の隅で静かに食べているアナグマに声をかける。
「さっきの話?」
「暗闇の中で何かを見た、って話さ」
「ああ、でもあれは――」
いま思えば見間違いかもしれない、とアナグマは言った。
「そんな気がしただけなのかも……」
「ものの見え方はその人の心理状態に左右される――そういう研究結果もあるらしいね」
ソブレロは苦笑した。
「さっきは言いませんでしたが……」
アナグマは周囲をはばかるように声を落とした。
「地上での活動を禁止する件、どうしましょう?」
「どうする、って?」
「ゴモジュ隊もですが、カイロウ隊長の捜索もできなくなりますよ」
はっと顔を上げたソブレロは、部屋の入口に番兵が立っているのを見て慌てて頭を下げた。
「そう、だね……」
「禁止令はまだ正式には出ていません。すぐにでも捜すべきだと思います」
「ん……でも今は調査団と兵団の関係も悪化してる。それに多くの隊が再調査に慎重になっているよ」
「それはそうですが……」
「ただ、アナグマ君の言うことも分かるよ。禁止令が出てしまったらいよいよボクたちは動けなくなるからね」
ソブレロは近くのテーブルからグラスを手に取り、水を一口ふくんだ。
「帰ったらよく話し合おう。ここではあまり――」
そう言い、目で合図する。
アナグマは自然な所作で料理を口に運びながら辺りを見た。
なごやかな雰囲気だが、番兵はいたるところにいる。
狼藉を働けばすぐに斬りつけられるだろう。
会話も聞かれているかもしれない。
「……分かりました」
彼はぎこちない笑みを浮かべることしかできなかった。




