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第13話 ~ビューレの瞳の奥にあるのは、かつて義妹(ミネア)が自分に向けてくれた輝きと同じものだった~


――そうだよね、立ち向かわなくちゃならないんだ……たとえ勝てなくても、仲間のために、最期まで僕は……ッ――


「――ノイシュ……」


 意識の中で熱感に似たものが湧き上がってくる中、ささやく様な声で自分の名前が呼ばれるのに気づく――


――この声は、ビューレ……ッ


 ノイシュはゆっくりと視線を向けた。


 眼前にその顔の半分が痣で覆われた少女を視認する。


 彼女はノヴァに向けて手をかざしながらも、眼差しだけはこちらに注いでいた。


 ビューレの瞳の奥にあるのは、かつて義妹(ミネア)が自分に向けてくれた輝きと同じものだった――


「――イイィギィヤェエィッッ」


 再び激しい鳴き声が耳朶を打ち、ノイシュは顔を上げた。


 そこには朱幻竜の巨体が宙を舞い、さらにその体長を超える程の巨大な波動が生じている。


 その周囲では大気が乱れて旋風を引き起こし、まばゆい雷光さえも放たれていた――


「――うっ、うぅゥ……っ」


 すぐ脇から聞こえてくる義妹(エルン)のうめき声を、ノイシュは無理やり意識から遮断した。


 ここで集中を途切れさせたら折角の霊力が掻き消されてしまう――


――ごめんね、エルン……ッ


 そしてなおも術句を紡いでいくと、やがて自らの身体から輝きが湧き上がっていく――


――これで終わりにするから、どうか耐えていて……っ


 突如として自らを包む輝きが一気に瞬き、まばゆい閃光となって周囲へと広がっていくのにノイシュは気づいた。


 義妹(エルン)の超高位秘術が自らの霊力を増幅させてくる――


――もっとっ、もっと集中を研ぎ澄ませるんだ……ッ


 ノイシュはなおも自らの意識の奥部へと感覚を向けていった。


 足許から激しい熱感が迫り上り、身体の均衡を失うほどの目まいを覚える。


 とっさに片膝を地に着けるとともに気力を振り絞り、何とか姿勢を立て直した――


――僕の全霊力を、この一撃に込める……ッ


「――いけっ、【紫黒衝撃波】……ッ」


 そう告げる暗紅の悪魔の叫び声が耳に届き、ノイシュは急ぎ振り向いた。


 視界の先で薄闇色に染まる衝撃波を視認した次の瞬間、朱幻竜が大きく顎を開けていく。


 そして一瞬だけ、静寂が流れた――


「――ギイイアアァヤァヤャャッ」


 次の瞬間には周囲に激しい竜の咆哮が鳴り響き、ほぼ同時に薄闇色の衝撃波が放たれていくのをノイシュは視認した。


 同時に大気を切り裂く甲高い音が響き渡り、瞬く間に他のあらゆる音を凌駕していく。


 紫黒に煌めく衝撃波はその規模のため動きは緩慢であるものの、あまりの巨大さゆえに見ているだけで身震いが止まらない。


 しかも視界のほとんどを紫黒に覆うほどなのだ、間違いなく避ける事などできない――


「――発現せよ……っ」


 不意に近くからノヴァの声が耳に届き、ノイシュはそちらへと視線をやった。


 隊内随一の攻撃術士の身体を激しい輝きが包んでいる――


「【蒼撃波動】ッ、どうか、一縷の望みをっ……」


 瞬時にノヴァの身体が閃光を放った。


 攻撃術士の少女を包む蒼き輝きが一気に大きく広がり、上空へと解き放たれていく――


――ノヴァ、君の霊力はいったい……ッ


 思わずノイシュは眼を見開いた。


 蒼き波動が激しく明滅しながら膨張を続けていく。


 瞬く間に朱幻竜の衝撃波と同程度の規模となり、暗紅の悪魔へと迫っていった――


――彼女の攻撃術と義妹エルンの超高位秘術……両者が組み合わさると、これ程の威力が発揮される……っ――


「――激突するぞッ」


 ウォレンの声が耳に差し込まれた直後、紫黒の衝撃波と蒼い波動撃が重なり合っていくのをノイシュは視認した。


 直後に強烈な明度が網膜へと差し込まれ、反射的に強く両眼を閉じる。


 耳許では絶えず轟音が耳許に響き渡り、他の音が判別できなかった。


 もはや敵の攻撃や仲間達がどうなっているのかも分からない。


 自分の研ぎ澄ませた意識だけは保ち続けようと、それでも必死にあがく――


――みんな、どうか無事でいて……っ


  そのままどれ位の時間が過ぎただろう、やがて少しずつ周囲から強烈な明度が薄れていくのにノイシュは気づいた。


 ゆっくりと両眼を開き、上空を見据える。視界の先に紫黒の衝撃波は無く、さらにその奥には朱幻竜と暗紅の悪魔の姿があった――


「――まっ、全くの無傷なのか……っ」


 絶望の色を含んだ隊長の声音が耳に届き、とっさにノイシュは眼を細めた――






~登場人物~


 ノイシュ・ルンハイト……主人公。男性。ヴァルテ小隊の術戦士で、剣技と術を組み合わせた術剣の使い手


 マクミル・イゲル……ヴァルテ小隊の隊長。男性。ヴァル小隊の術戦士で、増強術という支援術の使い手


 ウォレン・ガストフ……ヴァルテ小隊の隊員で、戦士。男性。あらゆる術を無効化する術耐性の持ち主


 ノヴァ・パーレム……ヴァルテ小隊の隊員で、術士。女性。様々な攻撃術の使い手


 ビューレ・ユンク……ヴァルテ小隊の隊員であり、術士。また修道士でもある。女性。回復術の使い手


 エルン・ルンハイト……ノイシュおよびミネアの義妹。術増幅という超高位秘術の使い手


 ミネア・ルンハイト……ノイシュの義妹かつエルンの義姉。魂吸収術という超高位秘術の使い手。通称『暗紅の悪魔』


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