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第12話 ~たとえ勝ち目など無くても、仲間のために、最期まで僕は……ッ~


「発現せよっ、【朱幻竜(しゅげん)】ッ」


 中空に舞う少女の声が耳に届き、ノイシュは胸の鼓動が強く脈打つのを感じた。


 紅い煌めきを放ちながらその場に現れたのは、まさしく偉大なる大神官ヨハネスの超高位秘術が創造した伝説の怪物、幻竜の姿だった――


「存分に味わせてやるぞっ……圧倒的な力の差に直面した際の恐怖、絶望、苦痛をな……っ」 


 そう告げる暗紅の悪魔の声を聞いた直後、朱き竜の翼が動き始めるのをノイシュは視認した。


 朱き竜の翼はその開閉の動作を繰り返し、次第に速めていく――


「――ギャエイイイイイイッ」


 朱幻竜がその顎を大きく開き、咆吼を発した。


 その雷鳴の様な響きが大気が震わせ、ノイシュは思わず強く奥歯を噛み締める。


 途端にその巨体が薄闇色に煌めき始め、周囲から風が湧き起こっていく――


――なっ、なんだ……ッ


 激しい閃光に思わずノイシュは左腕で目許をかばった。


 それでもなお朱幻竜に視線を向けると、やがて朱幻竜の体躯を球状の波動が包み、そのまま膨張していくのが分かった――


――なっ、衝撃波を放つ気か……っ


 いつの間にかノイシュは自らの全身が震えている事に気づき、奥歯を噛み締めた。


 薄闇色の輝きはさらに巨大化し、視界のほぼ全てを覆っていく。


 あれ程の巨体から発せられる衝撃破が、一体どれだけの破壊を引き起こすというのか……っ――


――ただでさえ義妹(エルン)はもう、限界を迎えているのに……っ


 思わずノイシュは両眼を閉じると、深くうなだれた。


 あれ程の攻撃を浴びたらきっと自分達など跡形もない。


 不意に脳裏で無力感が湧き上がり、急速に広がっていく。


 やはり自分達では暗紅の悪魔に太刀打ちできないのか――


「――ノイシュさん、最後まで戦いましょう。私とともに」


 不意に自らの名前を呼ばれ、顔を向けた。そこにはまばゆい輝きで自身の身体を包むノヴァの姿があった。


 蒼き光芒のような輝きに包まれたその白い肌は、今にも消えてしまいそうな程の透明感だった――


「ノイシュッ、お前がノヴァの攻撃に続くんだっ」


 胸に突き刺さる程の鋭い声が耳に届き、振り返ると剣呑な表情のマクミル隊長が武具を構えていた。


 彼の前にはなおも自分達へと迫る死霊兵達の姿があった――


「頼むぞ、ノイシュ」


 その低く落ち着いた声はウォレンだとすぐに気づく。


 ノイシュが顔を向けると、彼は未だに膨れ上がっていく衝撃波をただ睨んでいた。


 あれ程の圧倒的な霊力を前にしても、まだ彼は立ち向かおうとしていた。相当な恐怖のはずなのに――――


――みんな……っ 


 ノイシュは強く眼を閉じた。


 そして静かに唇を震わせながらも詠唱していく――


――そうだよね、立ち向かわなくちゃならないんだ……たとえ勝ち目など無くても、仲間のために、最期まで僕は……ッ――




~登場人物~


 ノイシュ・ルンハイト……主人公。男性。ヴァルテ小隊の術戦士で、剣技と術を組み合わせた術剣の使い手


 マクミル・イゲル……ヴァルテ小隊の隊長。男性。ヴァル小隊の術戦士で、増強術という支援術の使い手


 ウォレン・ガストフ……ヴァルテ小隊の隊員で、戦士。男性。あらゆる術を無効化する術耐性の持ち主


 ノヴァ・パーレム……ヴァルテ小隊の隊員で、術士。女性。様々な攻撃術の使い手


 ビューレ・ユンク……ヴァルテ小隊の隊員であり、術士。また修道士でもある。女性。回復術の使い手


 エルン・ルンハイト……ノイシュおよびミネアの義妹。術増幅という超高位秘術の使い手


 ミネア・ルンハイト……ノイシュの義妹かつエルンの義姉。魂吸収術という超高位秘術の使い手。通称『暗紅の悪魔』


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