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マイノアルテ・チャルチ家【耐久力がある者】3

 ゼムロットを御姫様抱っこして逃げたビルグリムがテーブルを盾にして身を隠したのを見てヌェルティスもシャロンを連れてそこに逃げ込む。

 同時にシャルロッテと共に茉莉が逃げ込んできた。

 遅れ、ラナエが同じ場所へと避難して来る。


「ちょぉ!? 流石にテーブル一つに人数過多じゃね!?」


「狭いんだ、もっと中央に寄れ!」


「え? 理不尽!?」


 ビルグリムが左右から女性に押され真後ろに押し出される。

 そして隣に来る犬猿の姉妹。

 シャロンとシャルロッテが顔を合わせ、苦虫を噛み潰した顔をする。


「ここで会ったが百年目、貴女を殺すッ」


「面白い冗談だわシャロン。茉莉、こいつの首を切りなさい」


「阿呆、現在進行形で生命の危機に晒されとるのに休戦中の儂らで争ってどうする!」


「そうだよーシャルねーちゃん。それに茉莉防御魔法展開するので手いっぱいだからヌェルちゃんに無防備な分不利だよー」


 茉莉の言葉にシャルロッテがさらに苦い顔になる。

 その瞬間、耐久力がある者から放たれたガトリングが彼らが防壁に使っていたテーブルを粉砕する。

 茉莉のリフレクトシールドにより銃弾自体は防がれたが、争っている場合ではないと再確認するには充分な衝撃だった。


「ラナエとエルフリーデは儂の後ろに居れ、最悪の場合儂が盾になっておこう」


「ヌェル!? なぜその二人を守るのです!? 守るのならば私でしょう!?」


「もちろんそのつもりはあるが、不要に戦火を広げようとする主人は見限られても問題はないとは思わんか。儂は上品な者、なのだろう? ならば例え不利であろうと常に上品に、戦闘力の無い者を庇うくらいはしておかんとな」


「馬鹿ですかあなたは!?」


「我が夫ならばこうする。それを行っておるだけだ。元の世界に帰った際、夫に胸を張れる女でいたいのだよ」


 ふっとニヒルに微笑むヌェルティス。

 その前方では今、まさに決戦が行われていた。

 周囲の酒飲みたちを巻き込んで、耐久力がある者と風変わりな者、そして気難しい者が闘っている。


「サイボーグか」


「鉄壁人型兵器フラグニア。製作者からはそう呼ばれていた」


「ふぉっふぉ、そんな自己紹介どうでもよろしいですな」


 耐久力がある者フラグニアへと斬りかかる龍華。腕で防ぎながら空いた左腕からガトリングランチャーを発動、周囲を巻き込みながら龍華を襲う。

 だが、彼女はこれを難なく躱し、出来た隙を付いて踏み込んだ風変わりな者がステッキを煌めかす。


「ボンナバンッ」


 ステッキによる一撃。

 ガインと音がして弾かれる。

 鋼鉄のような鉱物で作られたフラグニアの装甲を破るには、ステッキの一撃では無理なようだ。


「なんと!?」


「私の一撃を受ける装甲だ。おそらくその身体はオリハルコンやミスリル、アダマンタイトなど比ではないもので作られた存在だろう、なっ!」


 言葉の途中で全力のフルスイング。

 大鎌がフラグニアの胴を襲うが、フラグニアはこれを蹴りで弾く。


「ヒヒイロカネ、確か時間の止まった鉱石だったか」


「御名答。ゆえに貴様等に勝機はない」


 拳を握ったフラグニア、風変わりな者向けてフラグニアの拳が炎を吹き上げフラグニアから切り離される。

 まさかのロケットパンチに風変わりな者が目を見開くが、避ける暇はなかった。

 直撃を受けた風変わりな者がヌェルティスの間横を吹き飛び酒場の壁を爆散させる。


「あれ……死んだんじゃね?」


 ビルグリムの言葉にエルフリーデが肩を振るわせる。


「おじ様っ」


「ぐ……ぬぉぉっ!! 幼女が、幼女が見ているのだぞッ!!」


 エルフリーデの叫びに答え、初老の紳士は立ち上がる。

 全身の骨が軋みをあげる。それでも紳士は立ち上がる。

 なぜならば、そこに少女の悲鳴があるからだ。

 なぜならば、そこに守るべき少女が居るからだ。

 ならば、紳士は己の限界を越え、何度でも立ち上がる。それが……


「このロリコーン伯爵、エルフリーデお嬢様の為に、絶対に負けはせぬッ!!」


 幼女の守護者【風変わりな者】なのだから。


「私はまだ、三度の変態を残しているのですよっ」


 立ち上がった紳士は燕尾服に手を掛けた。

 紳士が立ち上がったことで歓喜するエルフリーデの前で、ロリコーン伯爵は迷うことなく服を脱ぐ。

 ばさり、宙を待った燕尾服がシャロンの頭に被さった。歓声が止まった。


 さらにワイシャツが宙を舞い、ゼムロットに覆いかぶさった。

 バサリ、ゆっくりと歩きながらスラックスを脱ぎ去る。

 宙を舞うスラックスがラナエの頭に、トランクスがエルフリーデの頭にふぁさりと乗った。


「さぁ、本気で行かせていただきますよ?」


 纏うモノを全て脱ぎ去り、自由の戦士と成った変態紳士がステッキを構える。

 あまりに突然の全裸状態に、その場の全ての者がただただ呆然とその光景を見てしまっていた。

 一番最初に正気に戻ったヌェルティスは、異常過ぎる男の出現にただただ嫌悪感を顔に浮かべるしかできなかった。

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