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マイノアルテ・チャルチ家【耐久力がある者】4

「行きますぞ!」


 全裸男が走る。

 まさかの光景に女性陣が慌てて顔を隠し、隠した掌の隙間からしっかりと見ていた。

 ヌェルティスだけは顔すら隠さず白い眼で見つめていたが。


「なんだ……あの変態?」


 思わずエルフリーデに尋ねるシャロン。

 エルフリーデはただただ反射的に知りません。他人です。

 感情の抜け落ちた顔で告げていた。


「カスタムバルカンストライクッ」


「っ!?」


「FOOOOOOOOOOOOッ! 滾りますぞぉぉぉぉぉ――――っ!!」


 ド変態がド変態な言葉を吐き散らしながらフラグニア向かい突く突く突く。

 ステッキの連打は止まることを知らず、連続でただただ一点だけに集中して穿たれた。

 時の止まった鉱石相手であるというのに、その連撃は徐々に加速し、凹みを作って行く。

 それはまさに、雨垂れが石を穿つが如く。


「なんと!? 全裸になっただけで能力が上がるのか!?」


「私の背に幼女がおわす。守るべき幼女がそこに居る。全裸の私を見て勝利を願う。なれば紳士としてこれに答えずなんとする! この伯爵、かつて無いリビドーが迸っておりますぞっ!!」


「ただのド変態だな」


 一瞬感心してしまった龍華は吐き捨てるように告げるとフラグニアの背後から急襲する。

 連撃を食らいながら前進し、ロリコーン伯爵を殺さんと動くフラグニアの喉に鎌をひっかけ動きを阻害する。

 今回ロリコーン伯爵の攻撃が一応のダメージを与えているのに気付いた龍華は彼のフォローに回ったのである。


 わずかずつではあるが確実なダメージを積み重ね、否、徐々に実力を上げ始めるロリコーン伯爵。穿たれているフラグニアの胴体に少しづつ、徐々に穴が空いて行く。

 それも時間を経るごとに掘削速度も範囲も広がり、ロリコーン伯爵の力が増しているのが嫌でも理解できた。


「バカな! 我が身体が!?」


「幼女が見てくださっているのならば、我が力は無限に増加する。これぞ我がスキル【幼女の守護者】なり!」


 ロリコーン紳士種という魔物が、異世界グレイシアに存在した。

 彼らの特性はまさに幼女を見守ることに特化したスキル構成である。

 幼女が危機に陥れば、守るために彼らは何処からともなく出現し、守るべき幼女が居る限り、無限に力を増加させる、まさに幼女を守る為だけに生み出された魔物である。

 そう、彼、ロリコーン伯爵は人間ではない。ントロとして呼ばれた偽人という種族の魔物なのだ。


 だから、茉莉との闘いでは実力の半分も発揮できず敗北必死だっただけであり、目の前にいるフラグニアが、自分が守るべきマスターであるエルフリーデを攻撃対象にしている限り、否、目に移る場所に危機を迎えている幼女が居る限り、ロリコーン伯爵の能力は無限に増大する。

 ゆえに、フラグニアがどれ程の防御力を誇ろうと、どれ程の火力を持っていようとも、幼女を狙う限り、ロリコーン伯爵の実力は徐々に彼に匹敵、追い抜いて行く。


「ファンデヴエスパーダッ!!」


 それはトドメの一撃だった。

 背後から首に鎌を掛けられ動きを止められたフラグニアに、至高の一撃が襲いかかる。

 避けることすらできなかったフラグニアは、その一撃で胴を粉砕され、胴体が二つに割れる。


「やった!?」


「まだよシャロン」


 思わずガッツポーズするシャロンに姉のシャルロッテが窘める。

 事実、フラグニアは上半身だけにされようと普通に動き、口をパカリと開いた。


「っ!? 伯爵離れろッ!」


 初めに気付いたのは龍華だった。

 光を集め始めたフラグニアの口に危機を察したのだ。

 伯爵もそれに気付いたが、避けることはせず両手で自分をガードする。

 一瞬遅れ、光の奔流が放たれた。


「バカな!? 避けなかっただと!?」


 龍華が信じられない者を見たと目を見開き、しかし同時に理由を察した。

 彼の背後に彼らが居た。

 エルフリーデを初めとした伯爵が守るべき幼女たち。

 それを背後に、敵の一撃を避けるなど紳士が出来る筈がなかったのだ。


「おじ様ぁッ!!」


 エルフリーデの悲鳴と共にロリコーン伯爵の姿が光に消える。

 流石に彼だけでは留めきれなかったようで、光が背後まで来たが、これは茉莉がリフレクトシールドで跳ね返す。威力が激減していたせいか殆ど苦にならずに防御出来ていた。


「まず、一人」


 光が収まった先を見て、フラグニアが無情に告げる。

 ロリコーン伯爵は立っていた。

 確かに立っていたが、既にその姿、絶命していると言われても仕方ない程に痛々しい。


 だが、倒れない。死んではいられない。

 彼の背中には守るべき幼女がいるのだから。

 だから……


「幼女が……幼女が見ているのだぞッ!!」


 幼女たちの笑顔が見れるなら、彼女達を守れるのなら、どのような攻撃だって、紳士は耐えきってみせるのだ。

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