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「信也! ちょっと、早くしないと入学式に遅刻するよ!」
耳元で響いた鋭い声に、信也は重い瞼をうっすらと開けた。
枕元に立っていたのは、幼馴染の少女だった。彼女は腰に手を当て、今にも爆発しそうなほど膨れている。
「……ん、なんだよ……。入学式って……何の?」
信也はまだ半分夢の中にいるような、ぼんやりとした声を返した。頭の芯がじんわりと温かく、思考がうまくまとまらない。何のことかさっぱり分からない、といったまぬけな表情で、少女を見上げている。
そんな信也の様子に、少女は呆れたように深くため息をついた。
「はぁ……。寝ぼけてるのもいい加減にしてよね。今日は待ちに待った『魔術学校』の入学式だよ! あんた、今日から魔術師の卵になるんでしょ!」
「……まじゅつがっこう……にゅうがくしき……?」
その単語が、信也の脳内でゆっくりと結びついていく。
昨日までの厳しい受験勉強、合格通知を受け取った日の興奮、そして――今日がその本番であるという事実。
「――っ!? う、嘘だろ、今日だっけ!?」
すべての記憶が一瞬でパズルのようにつながり、信也の顔から血の気が引いていく。
ガバッと跳ね起きた彼は、完全にパニックに陥っていた。一刻の猶予もないという焦りから、目の前に少女が居るということすら、その頭から完全に消し飛んでしまった。
「やべぇ、やべぇ! 遅れるッ!」
信也はベッドから飛び降りるやいなや、躊躇なくパジャマのシャツを脱ぎ捨てた。
「きゃっ!? ちょっと、信也!?」
少女の悲鳴のような声が部屋に響く。
しかし、必死に制服のシャツを探している信也の耳には届かない。
少女の視界に、容赦なく信也の露わになった上半身が飛び込んできた。普段はひょろひょろしているように見えて、実は引き締まった肩のラインや、健康的な少年の背中。
至近距離でそれを見てしまった少女は、自分の頬が急激に熱くなっていくのを感じた。心臓がドクドクと信じられない早さで脈打ち、顔がリンゴのように真っ赤に染まっていく。
「な、なにいっぺんに脱いでるのよ、このバカ信也ーっ!!」
少女は両手で顔を覆い、恥ずかしさに耐えかねて、慌てた足取りでドタドタと部屋から飛び出していった。
バタンッ! と激しくドアが閉まる音で、信也は一瞬だけ我に返った。
「あ……あいつ、いたんだっけ……」と呟きつつも、迫る遅刻の恐怖には勝てない。彼は大急ぎで新しい制服に袖を通し、ネクタイを雑に締めると、カバンを掴んで一階へと駆け下りていった。
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