空中戦
こうして、カトゥル帝国軍は、久々となる外征に乗り出した。総大将は、宰相のリュカが務めることとなり、軍監に陸相のパンチと海相のコーラルが就任した。
「お待ちください。私は、一度も軍を指揮したことがありません。」リュカの不安を余所にテレサは言う。
「大丈夫だ。お主は、ドンと構えて、全軍の士気をあげてくれればよい。」
「ええ…」リュカは戸惑いを隠せない。
今回の戦争でリュカに手柄を立てさせ、リュカを出世させようという魂胆だろうが、有難迷惑だ。
「出世などどうでもいい。大事なのは、民の安寧だ。」
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リュカ軍は、2万5千の軍勢を率いて、タイアルの北に進軍した。彼らは、東国の歩兵と騎兵からなっている。この地は、シドレミという軍事的要地で、複数の緩やかな谷筋や小川があるほか、広大な平原には点々と小さな丘や岩塊が点在する。
「一度ここで休息をとる。」リュカは全軍に号令をかける。
「ここは開けた土地だから、敵襲に備えやすいですね。」とパンチ。コーラル軍は、アドン川を北上し、敵国の首都ラソンに向かっている。
「この先のファドーで、コーラル水軍と合流しよう。」「ええ、カトゥル側の国境・ファドーに着けば、総力であたれますからな。」
その時、兵士の慌てる声が響く。
「て、敵襲!敵襲!」
「敵襲だって?!」とリュカは驚く。
「相手は!?」
「敵プルチーノ軍!空を滑空してやってきます。その数500!」
「500だって?!」これは、罠か?
「婿殿、これぐらいなら、このパンチが蹴散らして御覧に入れよう。」
「頼もしい限りです!ただ、罠かもしれないので、深入りはしないでください。」
「わかったぜ!」
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プルチーノの空軍は、空から俯瞰により、カトゥル帝国の遠征軍を攻撃した。
「まずは、あいつらの物資を焼くのだ!」とプルチーノのチュン軍曹が号令をかける。
「敵は火矢で輜重隊を狙っています!」
「馬が暴走しました!荷車が谷へ落ちます!」
空から火矢を落とす。空からの炎により、野営地の物資はあらかた焼き払う作戦である。
辺りが、次第に火に包まれる。その様子を見たリュカは、消火を命令する。
「なんとしてでも、火を消そう!」とリュカ自身も側の池から水をくんで掛けることを繰り返す。しかし、劫火は燃え盛る業火のごとく延焼する。「食糧庫が燃えています!水も尽きます!」火矢を放った鳥人族は、矢の届かぬ高さまで一斉に舞い上がる。消火に兵が集まったのを見計らい、再び急降下した。
「投石隊、放て!」そこにプルチーノ軍は、石礫の雨を降らせる。石礫を侮ってはいけない。中世日本で死傷者を出す争いがあったように、それは人を殺傷する力がある。みるみるうちに、カトゥル帝国軍は、打ち倒され、士気も下がり、敗走するものが目立ち始めた。
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「ひるむな!」とリュカは兵士たちを鼓舞しようとするも、もはや戦線は壊滅している。
「リュカ殿、お逃げなされよ!」
「いや、一人でも多くの兵士を帰そう!殿は僕が引き受ける!」
リュカは、近衛兵500を率いて、パンチとともに殿を引き受けた。数百の兵士が安全圏へと逃げ込むのを見届けると、リュカは隘路の入口を塞ぐように布陣する。
鳥人族は、そこにめがけて急降下し、突撃を始める。
隘路の入口に敵が来た時、リュカは合図した。「いまだ!」
その時、リュカが両側に伏せていた近衛兵たちが、弓矢を浴びせる。多くの鳥人族が討ち取られる。だが、奇襲の奏功はそれで終わった。第二弾は、弓矢の軌道を読んだ鳥人族が、するりするりとかわしていく。
仲間が次々と、討ち取られる中、リュカは近接戦に作戦を変更した。
「ここを持ちこたえれば、故郷へ帰れるぞ!」
鳥人族は、飛び道具を持ってないらしい。近接戦になると、カトゥル帝国軍は次々と敵を打ち倒していく。
接近する鳥人族に、煌めく刀を振り下ろすと、彼らは死を恐れずに突撃する。ある兵士は、鳥人族を薙ぎ払う血飛沫も気にせず、別の鳥人族に突撃する。また別の兵士は、泥に塗れながら、鳥人族の肩を刺し、そのまま胸までもっていく。また別の場所では、盾で猛攻を防御する。身動きが止まる鳥人族を、別の兵士が射抜いて倒す。見事な連携だ。
刀光剣影のなか、リュカは幼い頃の記憶を思い出す。ふと、男の人が剣を振るう姿が見える―
「リュカ!」パンチが叫ぶ。
次の瞬間、リュカは鳥人族に囚われていた。




