表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/60

銀座の防御力と、黒田邸の熱帯夜

自分の帰還が原因で、この世界に魔素が漏れ出し、『魔科学兵器』という争いの種を生み出してしまった――。

 その重い事実に押し潰されそうになった俺を、凛さんは大人の包容力で全力で肯定し、寄り添ってくれた。

 俺は一人じゃない。彼女たちがいる。俺が招いた災厄なら、俺の手で、彼女たちと一緒に終わらせればいい。


そう決意を新たにしたのも束の間。

 翌週末。俺は凛さんの手配によって、銀座の一等地に建つ高級水着専門店へと連れてこられていた。


「あら、カイト様。そんなに怯えた顔をなさらないでください」


凛さんは、完璧な秘書の微笑みを浮かべながら、俺の腕にそっと手を添えた。


「本日は、黒田グループの力をもって、このお店を夕方まで貸し切りにしております。来る夏休みに向けて、皆様の水着を選ぼうと、お祖父様からの提案でございます」

「……お爺ちゃん、相変わらずスケールがデカいなぁ」


俺が苦笑していると、試着室の方から賑やかな声が聞こえてきた。


「天城くーん! 準備できたよ! 私が一番乗りーッ♪」


シャッ!という音と共にカーテンが開き、星野リカが飛び出してきた。

 彼女が選んだのは、ネオンピンクの際どいマイクロビキニ。小麦色に焼けた肌に、その鮮やかな色が映え、彼女の爆発的なギャルオーラをさらに強調している。


「どう? 天城くん! 際どすぎ!? でも、これくらい攻めないと、アンタの隣は歩けないっしょ!」


リカは俺の目の前でクルクルと回り、これでもかとばかりにそのダイナミックなボディをアピールする。

 (……現代の女子高生、防御力低すぎない!? 異世界ならスライムの酸で一撃だぞ!?)と俺が戦慄していると。


「……星野さん、少しは慎みを覚えなさい」


隣の試着室から、瑞希が静かに歩み出てきた。

 彼女が選んだのは、漆黒のセパレートタイプ。リカのような際どさはないが、ハイレグのボトムスからは、武道で鍛え上げられた無駄のない、引き締まったカモシカのような脚が伸び、トップスの背中は大きく開いて、美しい背筋が露わになっている。


「私は……機能性を重視したわ。動きやすく、いざという時には泳いで敵を制圧できる。……でも、その……天城くんが、魅力的に感じてくれるなら……嬉しいわ」


瑞希は顔を赤らめながら、少し照れ臭そうに髪を直した。その凛とした佇まいと、隠しきれない健康的な色気のギャップに、俺の心臓がトクンと鳴る。


「あ、あのっ! 私は……これを……!」


詩織が、おずおずと試着室から出てきた。

 彼女は、パステルブルーのフリルが何重にも重なった、可愛らしいワンピース水着を着ていた。まるで小さな天使のような愛らしさだが、そのフリルの下には、控えめながらも確かな女の子のラインが隠されている。


「天城くん、と……海、行くの、夢だったから……。……かわ、いいですか?」


詩織ちゃんは、上目遣いで俺の顔を覗き込み、顔を真っ赤にして制服の裾(今はフリル)をギュッと握りしめた。その小動物的な可愛らしさに、俺の理性が削られていく。


「ふふ……。皆様、とても可愛らしいですね」


三人のファッションショーを微笑ましく見守っていた凛さんが、ゆっくりと立ち上がった。


「では……私も、カイト様の『秘書』として、そして不可侵条約の一員として、少し本気を見せましょうか」


凛さんが試着室へと消え、数分後。

 カーテンが開いた瞬間、店内の空気が、一瞬で凍りついた。


「……カイト様。いかがでしょうか」


そこに立っていたのは、いつもの眼鏡を外し、髪を色っぽくかき上げた凛さんだった。

 彼女が身に纏っていたのは、漆黒のモノキニ。際どいカッティングが、彼女の白くて柔らかな肌をこれでもかと強調し、トップスのフロントは大きく開いて、大人の女性としての深い谷間が露わになっている。

 眼鏡のない彼女の瞳は、いつもよりずっと妖艶で、俺を絡め取るような情念を帯びていた。


「り、凛さん……!? そ、それは……!」

「あら、際どすぎましたか? ですが、私は側室で構わないので……これくらいアピールしておかないと、若いお嬢さん方に負けてしまいますからね」


凛さんは俺に歩み寄り、その柔らかな大人の体を、ごく自然に俺の腕に押し付けてきた。

 (……あぁ、もうダメだ。俺の理性が、一般人としての仮面が、100年の戦闘経験をもってしても、この四つ巴の魅力には耐えきれない……!)


「みんな……! 水着はいいけど、海は紫外線が強いし、クラゲも出るから! とりあえず全員、上からラッシュガード(防御力+30)を着よう!!」


俺のポンコツな異世界基準の心配に、ヒロインたちは「はぁ!?」「天城くん、空気読みなさいよ!」とブーイングの嵐。銀座の高級店は、俺の悲鳴と彼女たちの笑い声に包まれるのだった。



翌日。

 水着騒動も冷めやらぬまま、俺たちはテスト前という名目で、黒田邸の広すぎるリビングを借りて勉強会を開催していた。

 もちろん、昨日の今日で、みんなのテンションは勉強どころではない。


「ねー天城くん、ここの英語、全然わかんないんだけどー。教えて?」


リカが、パジャマ姿(際どいキャミソール)で俺の隣に座り、太ももをすり寄せてアピールする。


「星野さん! 勉強の邪魔よ! ……天城くん、私はこっちの数学が……あ、あの、この解き方、合ってるかしら?」


ナギサ(生真面目なTシャツジャージ)がリカを牽制しつつ、俺の手を自分のノートへと引き寄せる。


「あ、あの、天城くん、私は……」


詩織ちゃん(フリル付きのネグリジェ)は、顔を赤くして俺の腕をギュッと握りしめ、ひょこっと肩越しに覗き込んでいる。


「あらあら。皆様、ずいぶんと勉強熱心ですね。……カイト様、お夜食に最高級のA5和牛とスッポンの雑炊を用意いたしました。今夜のエネルギー補給にどうぞ」


凛さん(大人のシルクのネグリジェ)が、ドローンで豪華な夜食を運ばせながら、大人の余裕)を見せつける。


(……あぁ、これが平和か。テスト勉強っていうより、ただのハーレムパーティーじゃないか……。俺、一般人の高校生って、もっとこう、地味で静かな生活だと思ってたのに……)


深夜。疲れ果てた(主に俺がヒロインたちの対応で)俺たちは、リビングに並べられた布団で眠りにつくことに。

 問題は、誰がカイトの隣を確保するかだ。


「私が天城くんの右隣なのッ!! 抜け駆け禁止のルール、破ったら承知しないから!!」

「抜け駆けじゃないわ、これは戦略的配置よ! 天城くんの隣は私が死守する!」

「わ、私も……天城くんの、隣……」

「ふふ。私はカイト様の足元でお守りしますので、どうぞ皆様はご自由に」


枕投げ戦争が勃発した。

 ナギサの放つ神速の枕を、リカがギャル流のブリッジで回避し、詩織ちゃんが枕の影に隠れて、凛さんが涼しい顔でそれをモニターしている。


「みんな、静かに! 近所迷惑……じゃなくて、夜中に暴れるのは良くないよ! とりあえず俺は先に寝るから、みんなも静かに寝て……モガッ!?」


俺の顔面に、瑞希の放った枕(本気の一撃)が直撃した。

 俺は(一般人の演技として)気絶したフリをして、そのまま布団の中に潜り込んだ。100年の孤独を経験した俺にとって、この騒がしくて温かい混沌こそが、何よりも愛おしい休息だった。


数分後。

 枕投げ戦争が終わり、静寂が戻ったリビング。


(……みんな、寝たかな)


俺がそっと目を覚ますと――。

 俺の右腕には、リカが幸せそうに抱き着き、左腕には、ナギサが俺の手をギュッと握りしめ、胸元には、詩織ちゃんが俺の制服の裾を握りしめてすやすやと眠っていた。

 そして、俺の足元では、凛さんが俺の足首を枕にして、とろけるような微笑みを浮かべて眠っていた。


(……油断も隙もないな、本当に)


俺は、四人の寝顔を見て、柄にもなく、心の底から優しい気持ちになっていた。

 あぁ、俺はもう、一人じゃないんだ。この温かい日常を、俺は心の底から守り抜くと、改めて誓うのだった。


◆◆◆


そして、その翌日の夜。

黒田邸の最深部、全ての光を拒絶するような重厚な防音壁に囲まれた、モニター室。


凛は、数百のスーパーコンピューターが奏でる不気味なノイズの中で、冷たい光を放つモニターを睨み続けていた。

 眼鏡のブリッジをクイッと押し上げ、彼女の瞳には、カイトに見せる慈愛の微笑みは欠片もなく、裏社会のトップとして、そしてカイトの『側室』としての冷徹な殺気が宿っていた。


「……見つけましたよ」


凛の声が、モニター室の静寂を切り裂いた。

 画面に映し出されていたのは、黒田グループの深海探査艇から送られてきた、『東京湾海底の地形図』。


紅煉ぐれんの連中が使っていた魔科学の源……。この日本で一番大きく、そして最もおぞましい『歪み』の震源地を」


凛が端末を操作すると、海底地形図の一角がズームアップされた。

 本来なら、泥と岩しかないはずの海底。しかし、そこには、現代の建築技術を遥かに超越した、巨大な『古代遺跡』のような構造物が鎮座していた。


「……これ、は……魔素の鼓動……?」


モニターの中、海底に鎮座する遺跡の中心部が、青白く、不気味に発光していた。

 そして、凛の眼鏡が捉えたデータ波形には、ドクン、ドクンと、まるで巨大な心臓が鼓動しているかのような、規則正しい魔素の『脈動』が刻まれていた。


紅煉が使っていた魔科学兵器の魔石も、海洋研究所でカイトが感じた魔力の波動も。その全てが、この海底遺跡から漏れ出している、莫大な魔素によって生み出されたものだったのだ。


「カイト様の、あの温かくて平和な日常を脅かす、災厄の種……」


凛の眼鏡に、モニターの青白い光が不気味に反射する。

 彼女は、モニターに映るカイトの笑顔(凛さんが隠し撮りした、お泊まり会の写真)を愛おしそうに撫で、次の瞬間、その笑顔を汚そうとする海底遺跡に向けて、氷のような冷たい殺気を放った。


「私が……黒田凛が、この命を懸けて、全て刈り取ってみせます」


暗いモニター室で、青白く瞬く魔素の鼓動と、氷の秘書の決意。

 カイトが望んだ『平和な日常』の裏側で、ついに灾厄の中心地が特定され、最終決戦の幕が、静かに、そして確実に上がろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ