番外編3 悪女にならなかった女幹部シヴァールの話
「不味いな、オアシスの環境が、徐々に悪化し始めている」
我が砂漠の国タラマスカス、
そのトップであらさせられるダルアン将軍が、
神妙な面持ちで私たち、各飛竜騎士団長の前で呟く。
「ダルアン様、森の魔法使いにもっと協力を頂ければ」
「第二騎士団長、これ以上の依存は立場が逆転する、それは最終手段だ」
「ではどうすれば」「新たな水源、森以外の」「しかし全オアシス、闇の森から流れてきております」
最近は国の上層部にまで入って来ている、
隣国『闇の森』に住む魔法使いの面々、すでに我が国の幹部のように振る舞っている、
私も森との送り迎えに乗せたりしているが、対等な立場を護るには、どうすれば良いのか……
(将軍のために、私が出来る事であれば、何でもしたい)
もちろん我が国への忠誠心、
飛竜騎士団第八隊長としての務めでもあるが、
最近は将軍に対してそれ以上の何かを胸に秘めている気がする。
「最近の温暖化、砂漠を冷ます方法は無いのか」
「やはり大規模な雪魔法を」「第五隊長、やはり魔法使い頼みではないか」
「……提言をお許し下さい」「うむ第八隊長、兼幹部のシヴァールか」「ははっ、やはり個々で対応するのが良いかと」
少し頷いたダルアン将軍。
「して方法は」
「個々が精神を鍛える、というのはいかがでしょうか」
「……根本的な解決になるのか?!」「騎士団員としてはその方法で」
私も最近の異常な暑さ、
そして水不足になる日が増えて来ているのを危惧しているが、
騎士団員は我慢すれば良い、問題なのは砂漠の民だ、それをどうにかしなくては。
「荒い方法ですが」「第十一部隊長、言ってみろ」
「他の国を攻めるというのはいかがでしょう」「理由が無い」
「では理由があれば」「この中で私が理由を作れば行くという者、挙手」
真っ先に手を挙げる私、
他の隊長も次々と……それだけのものはこの将軍にはある、
きっと、いざ戦闘となれば、私が心底惚れこんでしまいそうな……
(決して変な意味ではない、いや、あるいはひょっとして……)
というタイミングで、
北から友好団というのはやってきた、
かなり離れた国々が、物好きに視察に来たようだ。
(将軍閣下が、ひとりの聖女に見惚れている)
そして、声が漏れだす。
「あれは……なんと美しい、心が吸い込まれそうだ」
そしてそのままプロポーズ、
あの硬くて妃を娶らない事で有名だったダルアン将軍が……
聖女を見ると確かに、並の踊り子よりも綺麗な化粧をしていた。
(そしてなぜか、私は賭けの対象に)
戦った女竜騎士ドミニクは、
信じられないくらい強かった、
まさに完敗、とても歯が立たない、そう、永遠に敵わないと思える程に……
(だからこそ、私はライバルになりたかった)
あれに並び立ってこその私、
そう思って対等に戦えるチャンスを欲していた私に、
今となっては幸運といえる、予想外の縁談相手が出現した。
(テイクという十五歳の男性、いやこれは……)
「シヴァールだ、しばらく世話になることになった」
「あっはい、テイクと申します、よろしくお願いします」
「きちんとした子供だな」「これでも十五歳ですから」「あの、スティラです、少々お話が」
そうして裏に連れて行かれ、
聞いた話は信じられないものだった。
「天啓の……女神?!」
「はい、テイクちゃんには、未来を予知する女神様が同居なさっています」
「それであの口調」「この世界が魔王に滅ぼされる、それを阻止するために降臨なさっているそうです」
遅れて可愛らしい魔女もやってきた。
「マリーヌです、本来のテイクくんは、おそらく成長を止められて封印されています」
「それは……可哀想だな」「女神様の天啓を授けるために、犠牲になってその身を捧げているみたいで」
「では、どうすれば良いのであろうか」「両方と仲良くする事らしいです、ちなみにテイクくんの方は悪女好きらしいです」「???」
その後に会ったテイクには、
なぜか『シヴァール女史』と言われ、
これはどちらの発言かわからず困惑してしまった。
(しかしまあ、私は相手を選ぶなと命令されれば、選ぶ気は無い)
我が砂漠国のため、
またついに幸せを掴もうとする将軍のため……
聖女テラーが現れなければ、私が正妻に立候補していたかも知れない。
(そんな気が起こる前に、テイクに事実上、嫁いでしまったが)
しかしこのテイク、
なぜこうも好かれるのだろうか、
その疑問は彼の国いや基地に到着してよくわかった。
「な、なんだここは、いったい何がどうなっているのだ」
「オイラの修行所だよ!」「まあまあ、とりあえずサイゼに行きましょう」
「スティラ殿、サイゼとは」「ドリンクバー付けて良いよね?」「うんマリーヌちゃん、みんな付けよう!」
そこはまるで天国、
この世界で最も快適な場所だった、
そして出そうと思えば湧き出る敵、それを倒す事で得られるポイント……
(そのポイントで買える物が、どれもこれも夢のような物だった)
すっかりその環境に骨抜きとなった私は、
ここの王たるテイクの側室に喜んで入りたくなった、
いやもうすでに入っている、あとは皆と、彼を育てるだけ……!!
(後は天啓とやらで、獅子の魔物シトリを倒して我が国は、いや故郷の砂漠は平和になったらしい)
側室も私の下が闇の森から入った、
修行場では私の個室が広くなり部屋も増えた、
そしてテイクの妻として生きていく覚悟も出来た。
(ドミニクにも、ようやく追い付けそうだ)
良きライバルは私を育ててくれる、
そしてこの便利過ぎる生活はもう離したくない、
まだ戦いは続く、次の敵は大魔王モデウスというらしい。
(側室も、あと2人増やすらしい)
1人は女勇者、
もう1人は女の魔物と聞いて不安だが、
テイクなら、いやテイク殿なら女神の加護で何とかしてくれそうだ。
「テイク殿、ここはなかなか面白いな、生活が楽しいのはもちろん、
あのドミニクと競い合うのが本当に楽しい、この生活をくれた事に感謝する、
そしてまだやらねばらならい魔物退治が残っているようだが、それが済めば改めて、私の心を捧げよう」
そして忘れてはならない、
テイクの『悪女好き』という性癖だ。
「テイク殿、まずは魔王の討伐だ、スティラ殿が言うように、
勇者となってくれれば前衛は騎士の私、あと魔法使い2人に、
アサシンが細かい動きをしてくれれば完璧だ、完全な悪女を私が演じるのは、その後でも遅くない」
そう、本当の意味で平和になって、
戦争の必要が無くなれば、側室のひとりとして、
いくらでも悪女になってテイクを泣かせてやろう、様々な意味で。
(実際にベッドで、4人掛かりで……)
そうしてテイクを蹂躙したのち、
正妻側室で取り囲むようにベッドで寝ている私達、
ふと思う、これが幸せなのだと……ただ、ひとつ疑問に思う事がある。
「……私は、そこまで大の酒好きでは無いのだが、いったい誰の事を言っているのだろうか……???」




