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紳士クンの、割と不本意な日々Ⅳ  作者: 椎家 友妻
第五話 紳士クンと、撫子の恋
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30 紳士クンの考えた一文

そんな希里を見て色んな意味で心配になった紳士クンは、おずおずと尋ねる。

 「あ、あの、希里お姉様?大丈夫、ですか?」

 それに対して希里はしばらくの間ゼェゼェ言っていたが、

ようやく呼吸が落ち着いた所で体を起こし、

右手で目に浮かんだ涙をぬぐいながら言った。

 「ハァ、ハァ、だ、大丈夫よ。いや~、笑った笑った。

こんなに笑ったのは生まれて初めてだわ」

 それに対して紳士クンは、夕べ撫子の手紙を書くのを手伝った手前、

まるで自分の事のように恥ずかしそうに言った。

 「あ、あの、そんなに笑っちゃあ悪いですよ。

お姉ちゃんも、一生懸命悩んだり考えた末に、この手紙を書いたんですから」

 すると希里は

「そうね、ゴメンゴメン」

と言いながらも、紳士クンの隣に立ち、撫子の手紙を広げながらこう続ける。

 「確かにこの手紙は、凄く真剣な気持ちで書いたのが伝わって来るわ。

でも、だからこそ笑いがこみ上げてきちゃうのよ。

だって、いつもあんなにツンケンしてて怒りんぼうで男勝りな撫子さんが、

こんなにもしおらしくて可愛らしい手紙を書いたんだと思ったら、

何だか笑えるじゃない?」

 「いつもツンケンしてて怒りんぼうなのは、

希里お姉様がお姉ちゃんに対して、

いつもそうさせる言動をするせいだと思いますけど・・・・・・」

 「確かにそうなんだけど、あの撫子さんの口から、

『あなたは相当に重い、恋の病にかかってしまったのですね』

なんて言葉が出てきたのかと思うと、プッ、クククッ・・・・・・」

 そう言って片手で口をふさいで再び笑いだす希里。

ちなみにその部分は、紳士クンが考えて手紙に加えた一文なのだが、

この状況でそれを白状する気にはとてもなれない紳士クンは、

ただただ顔を真っ赤にしながら黙り込む他なかった。



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