30 紳士クンの考えた一文
そんな希里を見て色んな意味で心配になった紳士クンは、おずおずと尋ねる。
「あ、あの、希里お姉様?大丈夫、ですか?」
それに対して希里はしばらくの間ゼェゼェ言っていたが、
ようやく呼吸が落ち着いた所で体を起こし、
右手で目に浮かんだ涙をぬぐいながら言った。
「ハァ、ハァ、だ、大丈夫よ。いや~、笑った笑った。
こんなに笑ったのは生まれて初めてだわ」
それに対して紳士クンは、夕べ撫子の手紙を書くのを手伝った手前、
まるで自分の事のように恥ずかしそうに言った。
「あ、あの、そんなに笑っちゃあ悪いですよ。
お姉ちゃんも、一生懸命悩んだり考えた末に、この手紙を書いたんですから」
すると希里は
「そうね、ゴメンゴメン」
と言いながらも、紳士クンの隣に立ち、撫子の手紙を広げながらこう続ける。
「確かにこの手紙は、凄く真剣な気持ちで書いたのが伝わって来るわ。
でも、だからこそ笑いがこみ上げてきちゃうのよ。
だって、いつもあんなにツンケンしてて怒りんぼうで男勝りな撫子さんが、
こんなにもしおらしくて可愛らしい手紙を書いたんだと思ったら、
何だか笑えるじゃない?」
「いつもツンケンしてて怒りんぼうなのは、
希里お姉様がお姉ちゃんに対して、
いつもそうさせる言動をするせいだと思いますけど・・・・・・」
「確かにそうなんだけど、あの撫子さんの口から、
『あなたは相当に重い、恋の病にかかってしまったのですね』
なんて言葉が出てきたのかと思うと、プッ、クククッ・・・・・・」
そう言って片手で口をふさいで再び笑いだす希里。
ちなみにその部分は、紳士クンが考えて手紙に加えた一文なのだが、
この状況でそれを白状する気にはとてもなれない紳士クンは、
ただただ顔を真っ赤にしながら黙り込む他なかった。




