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紳士クンの、割と不本意な日々Ⅳ  作者: 椎家 友妻
第五話 紳士クンと、撫子の恋
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29 希里が、人生の中で最も笑った日

 「え、読むんですか?今、ここで?」

 紳士クンがオロオロしながら尋ねると、

希里は至極当然というように頷いてこう返す。

 「そりゃそうよ!これこそが今回の作戦の一番のお楽しみ・・・・・・

あ、いえ、せっかく撫子さんがラブレターの返事を書いてくれたんだから、

これを読んでその返事を書かなきゃいけないでしょう?」

 「希里お姉様、やっぱりこの状況を楽しんでるだけだったんですね・・・・・・」

 「そんな事ないわ!これはあくまで撫子さんを助ける為だもの!」

 希里は再び胸を張ってそう言うと、草むらに隠された封筒を手に取り、

その封を開けて中の手紙を読んだ。

 そして数分後、手紙を読み終えた希里は・・・・・・。

 「アッハハハハハハッ!

フヒヒヒヒッ!

アハッアハッ!」

 文字通り、笑い転げていた。

『抱腹絶倒』

という四文字熟語があるが、それはまさに、

今の希里を表現する為に作られたと言っても過言ではなかった。

希里は読み終えた撫子の手紙を手に持ったまま、

のけぞって笑い、

体をかがめて笑い、

大口を開けて笑い、

口を片手でふさいで笑い、

まあとにかく、あらゆる姿勢と、あらゆる表情と、あらゆる声色で笑った。

『笑う門には福来たる』

という(ことわざ)があるが、ここまでバカ笑いをしていると、

福の神もあきれて逃げてしまいそうなほどに、希里は笑った。

 そして更に数分後、笑いに笑った希里は・・・・・・。

 「ゼェッ、ゼェッ、ハァッ、ハァ~ッ・・・・・・」

 全身全霊で笑い過ぎた為、近くの木にもたれかかり、

すっかりヘトヘトになっていた。

それはまるでフルマラソンを走った直後の人のようで、

体は疲労感で一杯だが、その表情は達成感に満ちていた。



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