29 希里が、人生の中で最も笑った日
「え、読むんですか?今、ここで?」
紳士クンがオロオロしながら尋ねると、
希里は至極当然というように頷いてこう返す。
「そりゃそうよ!これこそが今回の作戦の一番のお楽しみ・・・・・・
あ、いえ、せっかく撫子さんがラブレターの返事を書いてくれたんだから、
これを読んでその返事を書かなきゃいけないでしょう?」
「希里お姉様、やっぱりこの状況を楽しんでるだけだったんですね・・・・・・」
「そんな事ないわ!これはあくまで撫子さんを助ける為だもの!」
希里は再び胸を張ってそう言うと、草むらに隠された封筒を手に取り、
その封を開けて中の手紙を読んだ。
そして数分後、手紙を読み終えた希里は・・・・・・。
「アッハハハハハハッ!
フヒヒヒヒッ!
アハッアハッ!」
文字通り、笑い転げていた。
『抱腹絶倒』
という四文字熟語があるが、それはまさに、
今の希里を表現する為に作られたと言っても過言ではなかった。
希里は読み終えた撫子の手紙を手に持ったまま、
のけぞって笑い、
体をかがめて笑い、
大口を開けて笑い、
口を片手でふさいで笑い、
まあとにかく、あらゆる姿勢と、あらゆる表情と、あらゆる声色で笑った。
『笑う門には福来たる』
という諺があるが、ここまでバカ笑いをしていると、
福の神もあきれて逃げてしまいそうなほどに、希里は笑った。
そして更に数分後、笑いに笑った希里は・・・・・・。
「ゼェッ、ゼェッ、ハァッ、ハァ~ッ・・・・・・」
全身全霊で笑い過ぎた為、近くの木にもたれかかり、
すっかりヘトヘトになっていた。
それはまるでフルマラソンを走った直後の人のようで、
体は疲労感で一杯だが、その表情は達成感に満ちていた。




