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紳士クンの、割と不本意な日々Ⅳ  作者: 椎家 友妻
第五話 紳士クンと、撫子の恋
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26 『彼』はすでにここに居る

 そうして色雄の姿が見えなくなった頃、

撫子が紳士クンの背中にガバッと抱きついて呟いた。

 「ありがとう、ありがとう紳士・・・・・・」

 それに対して紳士クンは、またいつもの優しい笑顔に戻ってこう返す。

 「えへへ、今まではお姉ちゃんに守ってもらってばかりだったからね。

これからは僕がお姉ちゃんの事を守ってあげる番だよ」

 「まあ!あんたも随分言うようになったわね!」

 撫子が大げさに驚いてそう言うと、こらえきれなくなったように笑いだし、

それにつられて紳士クンもプッと吹き出して笑った。

そして一通り笑った後で、紳士クンは(うなが)すように撫子に言った。

 「それじゃあ、その手紙を木の下に隠さなくちゃね」

 「そ、そうね。人目につかないようにね」

 紳士クンの言葉にそう言ってうなずいた撫子は、

希里が上で見ているとも知らず、その木の根元に生い茂る草むらに、

パッと見ただけでは分からないように手紙を隠し、

 「それじゃあ私、教室に戻るから!

こ、これ以上ここに居て、その、彼(、)が来たら大変だから!」

 と言い残し、足早にその場から走り去って行った。

撫子の言った『彼』が、すでにこの場に居るとも知らずに・・・・・・。



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