24 お兄ちゃんの暴走
色雄は、生まれて初めてというような衝撃を受け、
飛び出さんばかりに目を大きく見開いて叫んだ。
そして撫子の表情をマジマジと見詰める。
その撫子の頬は熟した桃のようにピンク色に染まり、
瞳は澄んだ湖の水面のように潤んでいる。
それはまさしく誰かに恋焦がれる乙女の表情であったが、
その感情が自分ではなく、別の人物に向けられたものだという事を、
数多の女の子を恋の虜にしてきた色雄は敏感に感じ取った。
(ま、まさか撫子さんは、本当に僕以外の男に恋をしたというのかっ⁉)
世の中の女の子は、全て自分の魅力の虜となるのが当然だと思っていた色雄は、
その事実が信じられなかった。
撫子は、今でこそ自分の好意をはねつけているが、
それは照れくさいからであって、
いずれは自分の魅力の虜になる日が必ず来ると本気で信じていた。
なのに、いきなり現れたどこの馬か魚の骨とも分からない男に、
撫子は心を奪われてしまった。
それが誰であろうと、色雄はその事実を受け入れる事ができなかった。
なので色雄は再び撫子の両肩を掴み、乱暴な口調で言った。
「目を覚ますんだ!その感情は本来、俺に向けるべきものなんだ!
それが何かの間違いで、訳の分からない男に心を奪われてしまった!
それは完全に一時の気の迷いだ!今ならまだ遅くはない!
早くその気の迷いから覚めて、運命の相手であるこの僕の愛を受け入れるんだ!」
「誰が運命の相手よ!それが私の運命なら、いっそ死んだ方がマシだわ!」
色雄の言葉に再び怒りの感情を取り戻した撫子はそう叫んだが、
色雄はそれにひるむ様子もなくこう叫ぶ。
「それが気の迷いと言うんだ!こうなったら力ずくで目を覚まさせてあげるよ!」




