11 撫子の反応
(う、うぅ・・・・・・いっそこのまま消えてなくなりたい・・・・・・)
本気で紳士クンがそう願う中、撫子は靴箱の扉に手をかける。
それを見た希里は、大きく目を見開きながら紳士クンの肩をギュッと掴む。
全く正反対な気持ちの二人に見詰められているとも知らず、
撫子はついに、自分の靴箱の扉を開けた!
それは毎日の行き帰りに行う、いつもの動作。
普段なら撫子はそのまま靴を履き替え、さっさと校舎から出て行く所だが、
今日の撫子はそこでピタッと動きを止めた。
何故ならその視線の先、自分の靴箱の中に、一通の封筒が入っていたからだ。
それは紳士クンが書いたラブレターだったが、
それが紳士クンが書いたものだという事を撫子は知らないし、
それがラブレターかどうかも、今の時点で撫子は分からない。
そんな中撫子は目を丸くしながら、
靴箱の中に入っていた封筒を手に取り、裏表を眺める。
そこに差し出し人の名前は書いておらず、
小さく控え目な字で、『蓋垣さんへ』とだけ書かれている。
「あ、あぁ、あ・・・・・・」
その様子を目の当たりにしている紳士クンは、
両肩をブルブルと震わせ、声にならない声を漏らす。
一方の希里は、興味津津で目を爛々(らんらん)と輝かせ、撫子の次の動作に注目していた。
(いっそこの場で、そのラブレターを破り捨てて!)
と、紳士クンは心の中で願った。
が、その願いもむなしく、撫子はその場で封筒の封を開け、
中の便せんを取り出してそれを読んだ。
それは時間にすれば一分も無かったが、紳士クンには果てしなく長く感じた。
希里は希里で、撫子があのラブレターを読んだ後、
どんな反応をするのかを一瞬たりとも見逃すまいと、
これ以上ないというくらい大きく目を見開いている。
そんな中撫子は、ただ、静かにその便せんを折りたたんで封筒に戻し、
その封筒を自分の鞄にしまい、さっさと靴を履き替え、
まるで何事も無かったかのように、校舎から出て行った。
「あ、あれ?」
そのあまりにいつもと変わらない撫子の行動に、
希里は肩透かしをくらったような声を上げ、
校門の方へ歩いて行く撫子の後姿を見送った。




