13
日曜日が終わり、月曜日の昼下がり。
電気の途絶えた山崎家は、外界の熱をそのまま溜め込み、巨大な温室のようになっていた。
息をするだけで、肺の奥がじっとりと濡れていくようなねっとりとした空気。
予備校の冷房を逃れて家に戻ったはずの零二は、自室のベッドの上で、Tシャツの胸元をパタパタとあおぎながら天井を見つめていた。
その時、リビングの方から、不自然に低く抑えられた話し声が聞こえてきた。
お袋の声だった。
普段の、あの涼やかで澄み切った、ナイフのような響きはどこにもない。
まるで濁った泥水を絞り出すような、ひどく卑屈で、それでいて奇妙な焦りに満ちた声だった。
零二は音を立てずにベッドから這い出し、ドアを数センチだけ開けた。
隙間から、暗い廊下の向こうにあるリビングが見える。
お袋は、昨日親父が膝をぶつけたあの「鉄塊(懸垂マシン)」の影に隠れるようにして、スマホを両手で耳に押し当てていた。
その背中は、親父のそれとは対照的に、小さく丸められている。
「ええ、ええ……分かっております。オフィスサービス様……はい。昨日が期日だったことは、重々承知しておりまして……」
オフィスサービス。
昨日、鉄塊に貼られた配送伝票にカモフラージュとして印字されていた、地方の消費者金融の名前だ。
お袋は、エアコンの効かない蒸し風呂のようなリビングで、じっとりとした汗を額に浮かべながら、何度も何度も誰もいない暗闇に向かって頭を下げていた。
「はい、はい……ただ、今月末には確実にまとまった額が。主人のプロジェクトがですね、ええ、今週中にも決まりまして、大きな昇進を伴うものでして。ええ、ボーナスもかなりの額が一括で入る予定なんです。主人の勤務先は、皆様もご存知の大手メーカーですので、その、そちらの心配はございませんから……!」
零二は、暗闇の中で小さく息を吐き、唇の端を吊り上げた。
ゾクゾクするような滑稽さが、胃の底からせり上がってくる。
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