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キャンドルナイト・エリート ──無職の父と、多重債務の母と、万引きの妹と、サボりの僕──  作者: 端野ゼロ


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日曜日が終わり、月曜日の昼下がり。


電気の途絶えた山崎家は、外界の熱をそのまま溜め込み、巨大な温室のようになっていた。

息をするだけで、肺の奥がじっとりと濡れていくようなねっとりとした空気。


予備校の冷房を逃れて家に戻ったはずの零二は、自室のベッドの上で、Tシャツの胸元をパタパタとあおぎながら天井を見つめていた。


その時、リビングの方から、不自然に低く抑えられた話し声が聞こえてきた。


お袋の声だった。


普段の、あの涼やかで澄み切った、ナイフのような響きはどこにもない。

まるで濁った泥水を絞り出すような、ひどく卑屈で、それでいて奇妙な焦りに満ちた声だった。


零二は音を立てずにベッドから這い出し、ドアを数センチだけ開けた。

隙間から、暗い廊下の向こうにあるリビングが見える。


お袋は、昨日親父が膝をぶつけたあの「鉄塊(懸垂マシン)」の影に隠れるようにして、スマホを両手で耳に押し当てていた。

その背中は、親父のそれとは対照的に、小さく丸められている。


「ええ、ええ……分かっております。オフィスサービス様……はい。昨日が期日だったことは、重々承知しておりまして……」


オフィスサービス。

昨日、鉄塊に貼られた配送伝票にカモフラージュとして印字されていた、地方の消費者金融の名前だ。

お袋は、エアコンの効かない蒸し風呂のようなリビングで、じっとりとした汗を額に浮かべながら、何度も何度も誰もいない暗闇に向かって頭を下げていた。


「はい、はい……ただ、今月末には確実にまとまった額が。主人のプロジェクトがですね、ええ、今週中にも決まりまして、大きな昇進を伴うものでして。ええ、ボーナスもかなりの額が一括で入る予定なんです。主人の勤務先は、皆様もご存知の大手メーカーですので、その、そちらの心配はございませんから……!」


零二は、暗闇の中で小さく息を吐き、唇の端を吊り上げた。


ゾクゾクするような滑稽さが、胃の底からせり上がってくる。



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