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忘却勇者と欠けた世界  作者: ナイトさん
第一章存在しないはずの勇者

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9/16

第9話「思い出せない親友

静寂が続く。

誰も動けない。

ノアの言葉が、頭の中で何度も響く。

“本来の勇者はグレンだった”

カイは俯いたまま、動かない。

拳が震えている。

(……グレン)

名前だけが、残っている。

それだけなのに。

胸が痛い。

「……なんでだよ」

小さく、呟く。

ノアは答えない。

カイは顔を上げる。

その目は、怒りで歪んでいた。

「なんで俺は……あいつのこと、思い出せねぇんだよ!!」

叫び。

感情が、一気に溢れる。

「親友なんだろ!?」

その言葉で、空気が震える。

ノアの目がわずかに揺れる。

カイは止まらない。

「一緒に旅してたんだろ!?」

「笑ってたんだろ!?」

「戦ってたんだろ!?」

声が、かすれる。

「……なんで全部、ねぇんだよ」

怒りが、崩れる。

代わりに出てくるのは――

“空白”。

「……何も残ってねぇ」

その一言が、あまりにも重い。

カイはその場に崩れそうになる。

リシアが思わず手を伸ばす。

でも、触れられない。

カイは続ける。

「名前だけだ」

「グレンって名前だけ、残ってる」

震える声。

「それなのに……こんなに苦しい」

「なんなんだよ、これ……」

誰も答えられない。

セラが涙を流す。

リシアは唇を噛む。

ゼノは目を閉じる。

全員、同じだった。

思い出せない。

でも、失っていることだけは分かる。

カイはノアを見る。

その目には、怒りと――

「……返せよ」

願いがあった。

「返せよ……あいつの記憶を」

静かな声。

でも、それが一番重い。

ノアは動かない。

何も言えない。

カイは一歩踏み出す。

「お前がやったんだろ」

「なら、戻せるだろ」

詰め寄る。

逃げ場はない。

「戻せよ」

沈黙。

長い沈黙。

やがて、ノアが口を開く。

「……できない」

その一言で。

カイの中で、何かが切れる。

「は?」

低い声。

「できないってなんだよ」

ノアは続ける。

「完全には、もう戻らない」

空気が凍る。

「消したんだ」

「中途半端じゃない」

「意図的に、深く」

一言一言が、突き刺さる。

カイの手が震える。

「……ふざけんな」

その瞬間。

カイはノアの胸ぐらを掴む。

「ふざけんなよ!!」

初めてだった。

ここまで感情をぶつけたのは。

「お前が勝手に消して!」

「勝手に戻らないとか言って!」

「それで終わりかよ!!」

ノアは抵抗しない。

ただ、受け止める。

「……ああ」

肯定だった。

それが、余計にカイを壊す。

「ふざけんな……」

力が抜ける。

手が離れる。

カイはその場に膝をつく。

顔を覆う。

「……なんでだよ」

声が震える。

「俺、あいつと何してたんだよ」

「なんで何も覚えてねぇんだよ」

誰も答えられない。

ノアだけが、知っている。

でも――

言えない。

言わない。

それが、自分の選んだことだから。

カイは顔を上げる。

涙は流していない。

でも、その目は壊れていた。

「……なぁ」

ノアを見る。

「最後、どうだったんだよ」

静かな問い。

「グレンは……どうやって死んだ」

その言葉で、空気が完全に止まる。

核心。

誰も知らない“最後”。

ノアの呼吸が、わずかに乱れる。

そして――

目を閉じる。

浮かぶ。

あの光景。

血。

叫び。

そして――

“届かなかった手”。

ノアはゆっくりと目を開く。

「……あいつは」

言葉が、重い。

「俺たちを庇って――」

そこで止まる。

全員が息を呑む。

次の言葉を、待つ。

だが――

「……続きは、話す」

ノアはそれ以上言わない。

カイが顔を上げる。

「今言えよ」

ノアは首を振る。

「……次だ」

その一言で、すべてが止まる。

逃げたわけじゃない。

でも、今じゃない。

カイは何も言えない。

ただ理解する。

“まだ終わっていない”

本当の地獄は――

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