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忘却勇者と欠けた世界  作者: ナイトさん
第一章存在しないはずの勇者

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6/16

第6話「思い出せない名前」

朝。

空気は、昨日よりも重かった。

誰も何も言わない。

でも全員が同じことを考えている。

“何かがおかしい”

カイは歩きながら、前を見る。

ノアの背中。

(逃がさねぇ)

そのまま歩幅を上げる。

隣に並ぶ。

「ノア」

呼びかける。

「なんだ」

いつも通りの声。

でもカイは止まらない。

「話がある」

ノアは少しだけ視線を向ける。

「今じゃなきゃダメか」

「今だ」

即答。

その一言で、空気が変わる。

後ろを歩いていた三人も、足を止める。

誰も口を挟まない。

カイは言う。

「俺、夢見た」

ノアは反応しない。

「誰かいた」

沈黙。

「名前は分からねぇ」

一歩、踏み込む。

「でも分かる」

ノアの目を見る。

「俺たちと一緒にいたやつだ」

空気が張り詰める。

リシアが息を呑む。

セラが手を握る。

ゼノは黙って見ている。

カイは続ける。

「そいつ、死んだだろ」

その瞬間。

ノアの表情が、初めて崩れる。

ほんの一瞬。

でも確かに。

カイは見逃さない。

「やっぱりな」

一歩、さらに踏み込む。

「誰だよ」

声は低い。

でも確実に揺れている。

「名前、言えよ」

沈黙。

ノアは何も言わない。

ただ、視線を逸らす。

それだけで十分だった。

(いる)

(確実にいた)

カイの中で、何かが繋がる。

「なんで思い出せねぇんだよ」

その声は、怒りじゃない。

焦り。

「なんで俺は、そいつの名前も覚えてねぇんだ」

リシアが震える声で言う。

「私も……思い出せません」

セラも続く。

「顔も……声も……分からないのに」

「でも、確かに“いた”んです」

ゼノが小さく呟く。

「……気持ち悪いな」

その言葉で、全員の感情が揃う。

異常。

これは普通じゃない。

カイはノアを見る。

「お前、何した」

直球だった。

逃げ場はない。

沈黙。

長い沈黙。

風の音だけが響く。

やがて、ノアが口を開く。

「……何もしてない」

嘘だ。

誰でも分かる。

カイは一歩踏み出す。

「嘘つくな」

その一言に、力がこもる。

ノアは目を閉じる。

そして、小さく息を吐く。

「……言っただろ」

ゆっくりと目を開く。

「思い出さなくていい」

その言葉で、空気が凍る。

カイの思考が止まる。

(は?)

「どういう意味だよ」

ノアは答える。

「そのままの意味だ」

「忘れていればいい」

あまりにも静かな声。

だからこそ、異様だった。

カイの胸に、怒りが湧く。

「ふざけんな」

拳を握る。

「仲間だろ」

声が震える。

「一緒に戦ったやつだろ!」

その言葉に、全員が息を呑む。

ノアは動かない。

ただ一言。

「……だからだ」

意味が分からない。

カイは叫ぶ。

「何が“だから”だよ!!」

沈黙。

ノアはそれ以上、何も言わない。

ただ、背を向ける。

そして歩き出す。

「待てよ!!」

カイの声が響く。

でも止まらない。

誰も、止められない。

その背中は――

あまりにも遠かった。

カイはその場に立ち尽くす。

胸の奥が、ひどく痛む。

思い出せない。

でも、確かにあった。

大切な何か。

そしてそれを――

ノアは“消した”。

その確信だけがの残った

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