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忘却勇者と欠けた世界  作者: ナイトさん
第一章存在しないはずの勇者

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第4話「空白の戦い」

森に入った瞬間、空気が変わった。

「……いるな」

ゼノが短く言う。

気配は一つ。

だが、重い。

カイは弓に手をかける。

「魔物じゃないな」

ノアが小さく頷く。

「人魔だ」

その一言で、全員の緊張が跳ね上がる。

現れる。

黒く歪んだ影。

人の形をしているが、人ではない。

“人魔”。

ゼノが一歩前に出る。

「俺がやる」

無駄のない踏み込み。

完璧な剣。

一瞬で間合いを詰める。

斬る。

確実に捉えた一撃。

だが――

「……っ!?」

弾かれる。

あり得ない。

ゼノが距離を取る。

その目に、わずかな驚き。

「硬いな」

人魔が動く。

速い。

カイが矢を放つ。

風を裂く一撃。

命中――するはずだった。

だが、その軌道がわずかにズレる。

「は?」

当たらない。

いや、当たっているのに“外れている”。

違和感。

セラが叫ぶ。

「気をつけてください! 何か変です!」

リシアが魔法を展開する。

「空間が……歪んでる?」

説明がつかない。

“何かが一つ足りない戦場”。

カイは直感する。

(これ、昨日の夢と同じだ)

その瞬間、人魔が踏み込む。

ゼノに向かって。

間に合わない。

「ゼノ!!」

だが、その前に――

ノアがいた。

いつの間にか。

剣を振るう。

その一撃は、綺麗じゃない。

軌道も荒い。

でも――

“当たるべき場所に、ねじ込まれる”。

人魔が初めて後退する。

ゼノが目を見開く。

「……今の」

ノアは何も言わない。

再び踏み込む。

連撃。

荒い。

無駄が多い。

でも、すべてが“噛み合っている”。

カイは理解する。

(こいつ、分かってる)

(このズレを、最初から分かってる)

最後の一撃。

ノアの剣が人魔を貫く。

沈黙。

人魔は崩れ、消える。

戦いが終わる。

だが、誰もすぐには動かない。

ゼノが口を開く。

「……なぜ当たる」

ノアは答えない。

リシアが呟く。

「私の魔法、少しズレてた……」

セラも震える声で言う。

「何か……一つ足りない感じがしました」

カイはノアを見る。

確信している。

「お前、知ってるだろ」

ノアは少しだけ目を細める。

そして、静かに言う。

「……慣れてるだけだ」

その言葉で、すべてが繋がる。

(慣れてる?)

カイの背中に、冷たいものが走る。

このズレ。

この戦い。

“初めてじゃない”。

ノアは、すでに経験している。

でも他の誰も知らない。

カイは一歩踏み出す。

「それ、どういう意味だよ」

ノアは答えない。

ただ前を向いて歩き出す。

その背中が、あまりにも遠い。

カイはその場に立ち尽くす。

そして、はっきりと理解する。

“何かが消えている”

それは記憶だけじゃない。

戦いの中にも、確かに存在している。

そして、それを知っているのは――

ノアだけだ。

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