第11話「三人の戦い方」
旅は、思っていたよりも単純だった。
歩いて、戦って、また歩く。
それだけ。
「来るぞ!」
グレンの声が響く。
森の中。
気配は三つ。
魔物。
カイはすぐに弓を構える。
「右、任せろ!」
矢が放たれる。
正確な一撃。
一体が倒れる。
残り二体。
グレンが踏み込む。
「俺が前出る!」
速い。
一直線。
無駄のない剣。
斬る。
もう一体が倒れる。
最後の一体が吠える。
ノアが前に出る。
「遅い」
ぼそりと呟く。
剣を振るう。
荒い。
でも――
確実に急所を捉える。
一撃。
静かに終わる。
戦いは数秒だった。
カイが息を吐く。
「楽勝だな」
グレンが笑う。
「連携がいいからな」
ノアは何も言わない。
ただ剣を収める。
カイがちらっと見る。
(こいつ、やっぱ変だな)
戦い方が違う。
グレンは“正しい剣”。
無駄がなく、綺麗で、強い。
カイは“支える戦い”。
隙を見て確実に仕留める。
でもノアは――
(なんか……無理やりだ)
理屈じゃない。
“当てるためにねじ込んでる”感じ。
それなのに強い。
カイが言う。
「ノア、お前さ」
「もうちょい綺麗に戦えねぇのか」
グレンが笑う。
「分かる」
「もったいねぇよな、その力」
ノアは肩をすくめる。
「興味ない」
「勝てばいいだろ」
即答。
カイが呆れる。
「それはそうだけどよ……」
グレンは少しだけ真面目な顔になる。
「いや、でも大事だぞ」
ノアを見る。
「綺麗な剣ってのは、それだけで意味がある」
ノアは黙る。
「無駄がないってのは、命を守るってことだ」
その言葉は、まっすぐだった。
ノアは少しだけ目を逸らす。
(綺麗な剣、ね)
興味はなかった。
でも――
「……お前はできてるのかよ」
小さく返す。
グレンは笑う。
「完璧じゃねぇよ」
「でも、目指してる」
その言葉に、嘘はない。
カイが言う。
「じゃあ俺も」
「弓でも“綺麗”ってあるのか分かんねぇけど」
グレンが笑う。
「あるだろ」
「無駄のない一射ってやつだ」
三人で笑う。
何気ない時間。
でも、それが確かに積み重なっていく。
ノアはその光景を見る。
少しだけ、思う。
(……悪くない)
それだけだった。
夕方。
三人は焚き火を囲んでいた。
カイが肉を焼いている。
「おい、焦げてるぞ」
ノアが言う。
「うるせぇ、食えりゃいいんだよ」
グレンが笑う。
「ノアはこういうのうるさいよな」
「意外と細かい」
ノアは眉をひそめる。
「普通だ」
カイが肉を差し出す。
「ほら、文句言うなら食え」
ノアは受け取る。
少しだけ焦げている。
でも何も言わない。
一口食べる。
「……普通だな」
カイが笑う。
「だから言っただろ」
グレンが空を見上げる。
星が出ている。
「なぁ」
また、その声。
カイが言う。
「今度はなんだよ」
グレンは笑う。
「この旅、絶対面白くなるぞ」
根拠はない。
でも、不思議と信じられる。
カイが笑う。
「もう面白いだろ」
ノアは何も言わない。
でも――
(そうだな)
心の中で、少しだけ思う。
この時間が続くと思っていた。
ずっと。
でも、それは違った。
この時はまだ、知らない。
この中の一人が、いなくなることを。




