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幕末に転生したら近衛家の姫でした。まず屋根を直します【累計350万PV/75万UU突破‼ 幕末経済戦記】  作者: 1009


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第三十話「中浜万次郎という人」

一

 安政四年の師走が終わり、安政五年の正月が来た。


 京の正月は、静かだった。


 御所の方角から吹いてくる風は相変わらず冷たかったが、空の青さが少し違っていた。冬の終わりを思わせるような、透きとおった青さが、東の空に広がっていた。


 糸子は元旦の朝、縁側に出て、その空を見ていた。


 今年が本番だ、と思っていた。


 去年一年で、備えのほとんどが整った。御門様の三つの条件。堀田正睦との知らせの道。村田蔵六との英語の談判の見立て。旭狼衛の体制の強め。島津斉彬との知らせの通い合い。


 江戸では年の暮れから、ハリスと、岩瀬様、井上様との談判が続いている。


 しかし一つだけ、まだ足りないと感じているものがあった。


 「生きた英語」だ。


 村田蔵六の英語は正確だった。しかし村田も、書物から学んだ英語だ。


 長崎の先生の英語は本物だった。しかしあれは、ロンドンの病院で身につけた、英吉利の医者の英語だ。


 ハリスは、メリケン人だ。


 メリケン人の英語を、メリケンの言葉の癖のまま知っている者と話さなければ、談判で生きた言葉は使えない。


 糸子はその問いを抱えながら、年明けの朝を過ごしていた。


 そこに善次郎からの文が届いたのは、正月の五日のことだった。


二

 文を開くと、善次郎らしい丁寧な字で書いてあった。


「姫君様、新年おめでとうございます。江戸からご報告があります。先月、築地の軍艦操練所で教授を務めておられる中浜万次郎様という方と、知り合いになりました。万次郎様は土佐の出で、かつて漂流してメリケンに渡り、十年近くを過ごされた後に帰国された方です。今はご公儀に召し抱えられ、英語の指南と、西洋の事情の講義を受け持っておられます」


「先日、商談の場でたまたまお会いした折に、姫君様のことをお話ししました。近衛家の姫様が、異国と対等に渡り合うために英語を学んでおられる、とだけ申し上げました」


「万次郎様は初め、信じておられませんでした。しかし話を続けるうちに、顔色が変わられました。しばらく黙っておられた後、『その方に会えないだろうか』とおっしゃいました」


 糸子は文を持ったまま、少し動きを止めた。


 中浜万次郎。


 前世では、ジョン万次郎の名の方が、ずっと通っていた。


 前世の歴史の知識の中に、その名はある。


 土佐の漁師の子として生まれ、漂流してメリケンに渡り、ホイットフィールド船長に拾われて教育を受けた。メリケンで鯨漁に加わり、黄金の掘り当てに出て、日本へ帰るための資金を貯めた。


 帰国後はご公儀に登用されたが、「メリケンに近すぎる」と疑う幕臣もおり、正式な談判の場には出されなかった。


 しかしこの人物が持っている「本物のメリケン」の知識は、糸子が今、何より必要としているものだ。


 糸子はすぐに、善次郎への返書を書いた。


「万次郎殿のご来訪を歓迎します。日取りの調えをお願い致します。ただし、万次郎殿には前もって一つだけお伝えください。近衛家は五摂家の筆頭です。お話は御簾越しになりますが、中身のあるお話ができると申し上げてください」


三

 二月の初め、梅の花が咲き始めた頃、善次郎が万次郎を連れて京に来た。


 京の梅は早い。御所の周りの梅が、白い花を開いていた。


 冬の名残と春の気配が混ざり合った空気の中を、二人は近衛家に向かった。


 近藤が門で、二人を迎えた。


 万次郎の姿を見た時、近藤は少し驚いた。


 思っていた人物と、少し違った。


 漁師の出で、メリケンに渡ったという話から、もっと荒々しい気配の男を思い描いていた。しかし目の前の万次郎は、幕臣らしい落ち着いた装いをしながら、その目に何か強いものを持っていた。


 遠くを見ている目だ、と近藤は思った。


 遠い海の向こうを見てきた人間の目だと…


四

 座敷に通された万次郎は、最初に、部屋の造りを一度だけ見た。


 御簾が下がっていた。


 その向こうに、気配がある。


 善次郎が隣に座っていた。実光も同席していた。村田蔵六も来ていた。


「中浜万次郎殿、ようこそ近衛家へいらっしゃいました」


 御簾の内から、声がした。


 万次郎は少し驚いた。


 思っていた声と違った。


 公家の姫の声というものを、万次郎は聞いたことがなかったが、もっと細く、もっと儚い声を思い描いていた。しかし御簾の向こうの声は、穏やかだが芯があった。


「此度は遠路、誠に有り難き幸せに存じます。御簾越しで失礼ですが、どうぞ楽になさってくださいまし」


「……はい。お招きいただき、光栄です」


 万次郎が答えた。


 しばらく、最初の挨拶と世間話が続いた。


 旅の様子。京の寒さ。善次郎との出会い。


 万次郎は話しながら、御簾の向こうの気配を感じていた。


 静かだが、心を凝らしている。


 何かを待っている。


 糸子が言った。


「万次郎殿、一つ確かめさせてくださいな」


「はい」


「英語で話しても、よろしゅうございますか」


 万次郎が止まった。


「……英語で、ですか」

「はい。わたくしの英語がどれほどのものか、確かめていただきたいと思うております」


 万次郎は少し考えた後、英語で言った。


「Good morning. My name is Nakahama Manjiro. I am honored to meet you.」

(おはようございます。中浜万次郎と申します。お会いできて光栄です)


 御簾の内から、英語で返事が来た。


「Good morning, Mr. Nakahama. I am Konoe Itoko. I have been studying English for about two years. Please correct me if I make any mistakes.」

(おはようございます、中浜殿。近衛糸子と申します。英語を学んで、二年ほどになります。間違いがあれば、ご指摘ください)


 万次郎は固まった。


 「御簾の向こうから英語が来た」という事実が、しばらく頭の中で収まらなかった。


 村田蔵六が隣で、かすかに笑っていた。


五

 万次郎が体勢を立て直した。


「Your English is very clear. Where did you learn?」

(英語がとても明瞭です。どこで学ばれましたか)


「I learned from Mr. Murata Zoroku, and for a short time from a Dutch naval surgeon who had studied in London. But I know my pronunciation might be too formal.」

(村田蔵六殿と、ロンドンで学んだ蘭人の軍医から、短い間ですが教わりました。ただ、発音が堅すぎるかもしれないと思っております)


 万次郎が少し前に乗り出した。


「That explains it. You sound like an English doctor.」

(それで分かりました。英吉利の医者のような話し方です)


「Is that a problem?」

(それは困ることですか)


「Your pronunciation is very correct. Almost too correct. Harris is from New York.」

(発音はとても正確です。正確すぎるくらいです。ハリスは、ニューヨークの男です)


「Too correct?」

(正確すぎる?)


「It depends. When speaking with a formal diplomat, it’s perfect. But when you want to catch the natural rhythm of an American’s talk, it can sound a little stiff.」

(場合によります。正式な外交官と話す時は、それで完璧です。しかし、メリケン人の話の自然な調子を掴みたい時には、少し堅く聞こえるかもしれない)


 御簾の内で、わずかに動く気配があった。


「Can you show me what you mean? How would a real American say the same thing naturally?」

(どういう意味か、見本を見せていただけますか。本物のメリケン人なら、同じことをどう自然に言いますか)


 万次郎が少し笑った。


「Sure. For example, instead of saying ‘I would like to understand your position,’ an American might say ‘I’d really like to get where you’re coming from.’」

(いいですよ。例えば『あなたの立場を理解したいと思います』と言う代わりに、メリケン人なら『あなたの言いたいことを、本当に分かりたい』という感じで言います)


 糸子が繰り返した。


「I’d really like to get where you’re coming from.」


「Good. But try to relax the rhythm a little more——」

(いいですね。ただ、調子をもう少しゆるめて——)


「Like this? ‘I’d really like to get where you’re coming from.’」

(こうですか?)


 万次郎が、しばらく黙った。


「……Honestly, that already sounds natural. Your tongue is still Japanese, but your ear is American now.」

(……正直に言って、もう自然に聞こえます。舌はまだこの国の舌ですが、耳はもう、メリケンの耳です)


 御簾の内から、小さく満足した気配がした。


 村田蔵六が、小声で実光に言った。


「姫様が、ご満足されています」


「声で分かりまするか」


「二年の間、毎週聞いておりますから」


六

 本題に入った。


 糸子が日本の言葉で言った。


「万次郎殿、今日来ていただいたのは、英語の発音を確かめるためだけではございませぬ」


「はい、それは分かっています」


「善次郎から聞かれたことについて、教えていただきたいことがあります」


「対等ということですね」


「はい。ただ、その前に一つお聞きしたい。善次郎から聞いた話の中で、万次郎殿の心が動いたのは、どの部分でしたか」


 万次郎がしばらく考えた後、答えた。


「対等に、という部分です」


「なぜ、その部分に」


「……メリケンで学んだことの中に、相互という考え方があります」


 万次郎が続けた。


「メリケンは国を建てた時の精神として、すべての人間は平等だと言っています。しかし実際には——」


 万次郎が少し間を置いた。


「実際には、その精神が守られていないことがある。しかし、その精神は本物です。メリケン人の中に、その精神を本当に信じている人間がいる」


「その精神を、この国との約定に求めることは——メリケンの理屈として正しい、とお考えでしょうか」


「はい。ホイットフィールド船長という方が、わたくしを拾ってくれました。彼はわたくしを、対等な人間として扱ってくれた。メリケンには、そういう人間がいる。その人たちに届く理屈です」


「しかし、ハリスは?」


 万次郎の顔が、少し変わった。


「ハリスは——」


七

「ハリスという人物について、教えていただけますでしょうか」


 糸子が言った。


「Can you tell me about Harris? What kind of man is he?」

(ハリスは、どのような人物ですか)


 英語で聞いたのは、わざとだった。


 日本の言葉で話す時より、万次郎が率直に話せると思ったからだ。


 万次郎が英語で答えた。


「I have never spoken with Harris myself. But I have read what he wrote, and I know men like him. Harris is intelligent. Very intelligent. He knows trade, and he knows how to negotiate. But——」

(わたくしはハリスと直に話したことはありません。しかし彼の書いたものは読みましたし、ああいう男は知っています。ハリスは頭が切れます。非常に。貿易を知っていて、交渉の仕方を知っている。しかし——)


「But?」

(しかし?)


「He underestimates Japan. He believes Japan cannot argue back in English. He believes Japan doesn’t know the law of nations. That assumption is his biggest weakness.」

(この国を軽く見ています。この国が英語で言い返してくるとは思っていない。この国が万国の法を知っているとは思っていない。その思い込みが、ハリスの一番の弱みです)


 糸子が少し間を置いた。


「And if Japan argues back in English, using the law of nations——」

(では、この国が英語で、万国の法を使って言い返したら——)


「He won’t know what to do. His whole strategy is built on the belief that Japan will be confused and passive. If that belief breaks——」

(どうすればいいか分からなくなります。彼の策のすべてが、この国は戸惑い、受け身になる、という見込みの上に組み立てられている。その見込みが崩れれば——)


「His strategy collapses.」

(策が崩れます)


「Yes. Exactly.」

(はい。その通りです)


 万次郎が、御簾の方を見た。


 「御簾の向こうの十の姫が、今この見立てを静かに受け取っている」という事実が、万次郎に不思議な感覚を与えた。


八

 茶が運ばれた。


 しばらく、話が緩やかな時を持った。


 糸子が改まった様子で言った。


「万次郎殿、一つ、まったく別のことをお聞きしてよろしいですか」


「はい」


「メリケンという国のことです。ただし、表向きの話ではなく——ある部分について」


「どのような部分ですか」


「書物で読んだことがあります。メリケンの、元からその地に住む人々について」


 万次郎の顔が変わった。


 糸子が続けた。


「海の向こうから来た人々が、長い年月をかけてその方々に何をしてきたか——病の持ち込みによる人口の激減、土地の強制的な奪取、涙の旅路と呼ばれる強制移住、文字の読めない方々に不利な契約書に署名をさせた欺瞞——これらのことを、書物で読みました」


「……はい」


「万次郎殿は、そのことをご存知でしたか。そしてメリケンにいた時、それをどのようにお感じになりましたか」


 万次郎が、少し長い間、黙った。


 座敷の外では、梅の木が冬の名残の風に揺れていた。白い花びらが一枚、庭に落ちた。


「……知っていました」


 万次郎が、ゆっくりと言った。


「メリケンにいた時、西の方へ行くことがありました。そこで見たものがあります」


「何を見ましたか」


「かつて元からの人々が住んでいた土地に、白人の農場が広がっていました。元からの人々は、遠くに見える丘の向こうへ追いやられていた。その丘の向こうで、何が起きているのか——わたくしには、直に見ることはできませんでした。しかし、話として聞きました」


 万次郎が続けた。


「ホイットフィールド船長は、良い人でした。わたくしを本当に対等に扱ってくれた。しかし、その船長でさえ——元からの人々の扱いについて話す時は、何かを見ないようにしていた」


「見ないようにしていた、とは」


「見えているのに、見ていないふりをする——あの感覚です。善意の人間でも、自分の世が作った仕組みの中に生きている。その仕組みが何をしてきたかを真っ直ぐに見ることは、その善意の人間にとっても難しい」


 糸子は、静かに聞いていた。


「メリケンは、自由と平等を、国を建てた理念にしています。それは本物だと思いますか」


「……本物だと思います」


「しかし、元からの人々への扱いと、食い違っています」


「食い違っています。その食い違いに、メリケン人の多くは、今もきちんと向き合っていません」


「万次郎殿は、その食い違いについて、どうお感じになりましたか」


 万次郎が、また少しの間、黙った。


「怒りを感じました」


「怒り?」


「はい。しかしその怒りは、メリケン全体への怒りではありませんでした。良い人間がいることは知っていた。その良い人間たちが、なぜその食い違いを真っ直ぐに見られないのか——そこへの怒りです」


 糸子が静かに言った。


「理念と、現の差でございます」


「その通りです」


「自由と平等を言いながら、それを一部の人間にしか当てはめない。その差が——」


「その差が、約定にも表れます」


 万次郎が言った。


「メリケンは、相互という考えを知っています。しかしこの国との約定で、それを当てはめようとしなかった。なぜかといえば——この国を、元からの人々と同じように見ていたところがあるからでございましょう」


「対等な相手ではなく、教え導くべき相手として…」


「はい」


「しかし、わたくしが英語で、万国の法を引いて言い返せば——」


「その見方が、崩れます」


 万次郎が続けた。


「姫様、一つ申し上げます」


「はい」


「元からの人々は、英語を知らなかった。法を知らなかった。文字の読めない方も多かった。だから、欺きの契約書に署名をさせられた」


「はい」


「姫様は、英語を知っている。万国の法を知っている。その差が——」


「同じことを繰り返させない、最初の壁になりましょう」


「その通りです」


九

 糸子は少し間を置いた後、言った。


「万次郎殿、一つお聞き致します。メリケンにいた十年近くで、あなたが最も大切だと思ったことは、何でございましょうか」


「……」


 万次郎が、しばらく考えた。


「言葉を持つことです」


「言葉を?」


「言語という意味ではありません。自分の考えを、相手に伝えられる言葉を持つことです」


「どういう意味でございましょうか?」


「わたくしが初めてメリケンに着いた時、英語が分かりませんでした。何も言えなかった。何も主張できなかった。人々の善意だけに、頼るしかなかった」


 万次郎が続けた。


「しかし英語を学んで、自分の考えを言えるようになった時——わたくしは初めて、対等な人間として扱われるようになりました。言葉があれば、主張できる。主張できれば、相手は聞かねばならない。相手が聞けば、対等な関わりが生まれる」


「言葉が、対等の始まり、ということでありましょうや」


「はい。逆に言えば——言葉を持たない相手は、どんなに優れた文明を持っていても、対等には扱われない。元からの人々が、そうでした。言葉の壁があった。その壁が、すべての始まりでした」


 糸子は静かに頷いた。


「だから、わたくしは英語を学んでおりまする。言葉が、対等の始まりですから…」


「姫様が英語を学んでいる訳を、わたくしは善次郎殿から聞きました。しかし今この話を聞いて——」


 万次郎が、御簾の方を見た。


「わたくしが十年かけて、体で学んだことに、姫様は書物と理屈で辿り着いている。そのことが——正直、驚きです」


「書物には限りがあります。だから今日、万次郎殿に来ていただきました」


「わたくしに教えられることがあるとすれば——」


「ありましょう。ハリスという人物の、談判の癖。メリケンの外交官が何を重んじ、何を軽んじるか。どのような理屈に弱いか。それは、書物では学べませぬ」


十

 話が、談判の具体へ移った。


「Let me tell you how Harris thinks. He believes time is on his side.」

(ハリスの考え方をお話しします。彼は、時は自分の味方だと思っています)


「Why?」

(なぜですか)


「Because he believes Japan will eventually give in. He thinks Japan is afraid of Western military power. So the longer the negotiation goes, the more Japan will panic and accept worse terms.」

(この国はいずれ折れる、と思っているからです。この国は西洋の兵の力を恐れている、と考えている。だから談判が長引くほど、この国は焦って、悪い条件を呑むと思っている)


「What if Japan doesn’t panic?」

(この国が焦らなかったら?)


「Then his whole strategy breaks down. Harris needs Japan to be afraid. If Japan is calm and logical, he doesn’t know what to do next.」

(策のすべてが崩れます。ハリスには、この国が恐れていることが要る。この国が落ち着いて、理屈で来るなら、次に何をすればいいか分からなくなる)


「And if Japan uses the law of nations——」

(そして、この国が万国の法を使ったら——)


「He can’t ignore it. He knows it well enough. If you use it correctly, he has to answer it. He can’t just pretend he doesn’t understand.」

(無視はできません。彼はそれを十分に知っています。正しく使えば、彼は答えねばならない。分からないふりはできない)


「So the key is——」

(つまり、鍵は——)


「Use what he knows. Use the principles he believes in. Reciprocity. Equal treatment. These are American values. If you demand these things using American logic, he cannot refuse without contradicting his own country’s values.」

(彼が知っていることを使うことです。彼が信じている原則を使う。相互。平等な扱い。これらは、メリケンの値打ちです。メリケンの理屈でこれらを求めれば、彼は、自分の国の値打ちと食い違うことなしには、断れない)


 糸子が、しばらく黙った。


 その沈黙は、考えている時の糸子の沈黙だった。


「That is exactly what I planned to do. But I was not completely sure. Now I am sure.」

(それがまさに、わたくしが考えていたことです。しかし、すっかり確かではなかった。今、確かになりました)


 万次郎が静かに言った。


「You were already there. You just needed confirmation.」

(あなたは、もうそこに辿り着いていました。確かめが要っただけです)


十一

 夕刻が近づいてきた。


 梅の花が庭に散り、赤い夕の光を受けて、白く輝いていた。


 万次郎が言った。


「一つ、私的なことをお聞きしてよいですか」


「なんでございましょう」


「姫様は今、おいくつですか」


「十になりまする」


「……」


 万次郎が少し間を置いた。


「わたくしが初めてメリケンの船に拾われた時、十四でした。何もできなかった。何も分からなかった。


 しかし、十の姫様が——」


「わたくしにも、分からないことはたくさんありますよ」


「しかし、分かっていることが、わたくしが十四の時より、遥かに多い」


「書物のおかげでございます。そして、いろいろな方が教えてくださるおかげでございます」


「書物だけではありません」


 万次郎が言った。


「先ほどの、元からの人々のお話——あれを聞いて、わたくしが感じたことをお話しします」


「はい」


「メリケンで十年近く過ごして、わたくしはそのことを、ずっと考えてきました。しかし日本に帰ってから、そのことを真剣に話せる相手がいなかった」


「なぜでありましょう?」


「この国の人々にとって、元からの人々の話は、遠い外国の話です。自分たちに関わりのないことに見える。しかし姫様は——」


「自分たちに関わりのあるお話として、聞いておりました」


「なぜですか?」


 糸子が少し考えてから言った。


「言葉を知らない相手は、対等に扱われない、という話として聞いておりました。だからこの国も、言葉を知らなければ——同じ扱いを受けるやもしれませぬ。そうならないために、わたくしは英語を学んでいるのでございます」


 万次郎が、しばらく黙った。


「……その考え方は、わたくしが十年かけて辿り着いたことと、同じです」


「同じでございますか」


「はい。言葉を持つことが対等の始まりだということを、わたくしは体で学びました。姫様は理屈で辿り着かれた。しかし、辿り着いた場所は同じです」


 糸子が静かに言った。


「では、同じ場所に立っている者として——これから、中浜殿のお力をお貸しいただけますか」


「……はい」


 万次郎が答えた。


 その言葉は短かったが、迷いがなかった。


十二

 帰り際、万次郎が近藤に声をかけた。


「あなたは、近衛家の守護についている方ですか」


「はい。旭狼衛の近藤勇と申します」


「姫様を、守っているのですね」


「はい」


「……どのようなお方ですか」


 近藤が少し考えた後、答えた。


「言葉で人を動かすお方です。刀より、言葉の方が鋭い」


 万次郎が少し笑った。


「メリケンにも、そういう人間はいます。しかし、十でそれができる人は——」


「おらぬでしょうな、あちらにも…」


「おりませんね」


 万次郎が門の外に出る前に、もう一度振り返った。


「近藤殿」


「はい」


「その姫様を、しっかり守ってください」


「命をかけて」


「……頼みます」


十三

 万次郎が帰った後、糸子は帳面を開いた。


 今日の対話を記録した。


 万次郎が教えてくれたこと。ハリスの考えの道筋。時の圧を逆に使える見込み。相互主義を、メリケンの値打ちとして突きつける理屈。


 そして——元からの人々の話から、万次郎が語ったこと。


「言葉を持つことが対等の始まりだ、と万次郎殿は言った。体で辿り着いた言葉だった。わたくしが前世と今世の知識を合わせて、理屈として辿り着いたことを、この方は生きることで学んでいた」


「どちらが正しいかではない。同じ場所に立っているということが大事だ」


 糸子は最後に書いた。


「備えは整いつつある。しかし——今年はまだ、もっと大きな嵐が来る」


「堀田様の上洛が、間もなくある。その後、勅許の問題が動く。そして——」


 糸子は筆を止めた。


 井伊直弼の名を書きそうになって、止めた。


 書くことが、現になるような気がして。


 しかし書かなければ、備えができない。


 糸子は書いた。


「井伊直弼が動く前に、できることをすべてやる」


十四

 その夜、縁側で近藤が夜番をしていた。


 糸子が、近藤に声をかけた。


「近藤殿、万次郎殿を、どのようにお感じになりましたか?」


「……不思議な方でした」


「どのように」


「遠くを見ている目をしています。海の向こうを見てきた人間の目だと思いました。しかしその目に、この国への情けがあった」


「この国への情け?」


「はい。メリケンで長く過ごして、それでもこの国に帰ってきた。帰ってきて、この国のために働いている。ご公儀に疑われながらも、それでも動いている。その訳が、この国を良くしたいという思いからだと感じました」


「近藤殿は、人をよく見ますね」


「守るためには、人を見なければなりません」


 糸子がしばらく黙った後、言った。


「近藤殿、今年は大きな動きがありましょう」


「はい、分かっています」


「旭狼衛の体制を、さらに整えてくださいまし。江戸へ動けるよう…」


「江戸へ——いよいよですか」


「いつになるかは、まだ分かりませぬ。なれど、備えだけはしておく必要がありまする」


「承知仕りました」


 近藤が続けた。


「姫様、一つだけ聞かせてください」


「なんでしょうか?」


「今日の万次郎殿との話で、何か変わりましたか」


 糸子は少し考えた後、答えた。


「確かになりました」


「何が、ですか」


「これまで備えてきたことが、正しかったということでございます。相互主義の理屈も、法的解釈基準も、御門様の条件も——万次郎殿の話を聞いて、それらが一つの線として繋がった気が致しました」


「その線が、ハリスとの談判に使える?」


「はい。ばらばらに見えていたものが、今日、一本の線になりました」


 近藤が静かに頷いた。


「では俺たちは、その線が使われる場所に、姫様を連れて行きます」


「よしなに、お頼み申し上げます」


「合言葉は変わりません」


「命をかけて、でございますね」


「はい」


 二月の京の夜は、冷たかった。


 しかし梅の花の香りが、かすかに風に混じっていた。


 春が来ようとしていた。


 そしてその春の先に、この国の形を変えるかもしれない談判が待っていた。


 近衛糸子は帳面を閉じて、明日の支度を考え始めた。


 今年は、いよいよ本番だ…


 第三十話 了

【人物解説】ジョン万次郎という、あまりにも数奇な男


中浜万次郎。


ジョン万次郎、といった方が馴染みがあるでしょう。


幕末には坂本龍馬や勝海舟、高杉晋作、西郷隆盛など、物語にしたくなる人物がいくらでもいます。


けれども、生涯そのものの「あり得なさ」でいえば、万次郎ほどの人物はそうはいません。


なにしろ彼は、武士の子ですらありません。


文政十年(一八二七)、土佐国中浜村、現在の高知県土佐清水市に生まれた、貧しい漁師の息子です。


父を早くに亡くし、家計を助けるために働いていた少年でした。


その少年の人生が変わったのは、十四歳のときです。


天保十二年(一八四一)正月、万次郎は仲間四人と漁に出ました。


ところが海は荒れ、小さな漁船は黒潮に流されます。


ようやくたどり着いたのが、伊豆諸島の鳥島でした。


もちろん、そこに村などありません。


人もいません。


あるのは岩と海と鳥ばかりです。


五人はそこで、実に百四十三日を生き延びました。


そして彼らを救ったのが、アメリカの捕鯨船ジョン・ハウランド号でした。


ここから万次郎の人生は、当時の日本人にはほとんど想像することさえできなかった方向へ転がっていきます。


当時の日本は、まだ幕府の海禁政策のもとにありました。


外国へ自由に渡航できる時代ではありません。


助けられたからといって、そのまま日本へ送り届けてもらえるわけでもない。


仲間たちはハワイに残りました。


しかし万次郎は、一人、捕鯨船に残ります。


船長ウィリアム・ホイットフィールドとともに、さらに海へ出る道を選んだのです。


十四、五歳の少年です。


英語など話せません。


アメリカがどんな国なのかも知らない。


その少年が、アメリカ人ばかりの捕鯨船に乗り込み、太平洋を渡っていく。


この決断ひとつを取っても、万次郎という人間の性格が見える気がします。


彼は、とにかく前へ行く人でした。


知らないから怖がるのではない。


知らないから見てみる。


分からないなら覚える。


できないなら、できるようになる。


万次郎の人生には、そういうところがあります。


やがてホイットフィールド船長は万次郎を故郷マサチューセッツ州フェアヘーブンへ連れていきました。


万次郎はそこで英語を学び、数学を学び、測量を学び、航海術を学びます。


日本ではまだ、身分によって人生の大部分が決まっていた時代です。


ところが海の向こうで万次郎が出会った世界では、少なくとも彼自身の経験としては、覚えれば仕事を任される。働けば金を得ることができる。能力を示せば、船の重要な役目を任される。


もちろん、十九世紀半ばのアメリカを現代の「自由で平等な民主社会」と同じように考えてはいけません。


奴隷制もあり、人種差別もありました。


万次郎自身も、人種を理由とする扱いの違いを経験したと伝えられています。


それでも彼が見た社会は、土佐の小さな漁村で知っていた世界とは、あまりにも違っていました。


そして万次郎は、その世界で生き抜いてしまいます。


学校で学んだあと、再び捕鯨船に乗りました。


大西洋を渡り、喜望峰を回り、インド洋へ出る。


やがてフランクリン号では航海士を務め、一等航海士にまでなりました。


かつて土佐の小舟で漁をしていた少年が、数年後にはアメリカの大型帆船で航海を担っている。


作り話なら、「少し出来すぎではないか」と言いたくなるところです。


ところが、これは本当に起きたことです。


それでも万次郎は、日本を忘れませんでした。


母がいました。


故郷がありました。


帰りたい。


そこで彼は、自分で帰国資金を作ります。


ちょうどカリフォルニアではゴールドラッシュが始まっていました。


万次郎もそこで働き、資金を得るとハワイへ向かい、かつての漂流仲間と再会します。


そして嘉永四年(一八五一)、仲間二人とともに琉球へ上陸しました。


漂流してから、十年が過ぎていました。


しかし、帰国したからといって、「よく帰ってきた」で済む時代ではありません。


外国で何をしていたのか。


誰と会ったのか。


キリスト教徒になっていないか。


外国と何か約束していないか。


琉球から薩摩へ、さらに長崎へ。


万次郎たちは各地で取り調べを受けます。


そうしてようやく土佐へ戻り、母と再会することができました。


十年前、小さな漁船で海へ出た少年は、英語を話し、世界の海を知り、航海術と測量術を身につけた青年になって帰ってきたのです。


そして、歴史というものは時折、恐ろしく巧妙な巡り合わせを見せます。


万次郎が日本へ戻った、そのわずか二年後。


嘉永六年(一八五三)。


浦賀沖に、黒船が現れます。


ペリー来航です。


日本中が、「異国とは何なのだ」「アメリカとは何者なのだ」と騒然となったそのとき、日本にはすでに一人、


アメリカで暮らし、アメリカ人と働き、英語を話し、彼らの船を動かすことのできる日本人がいた。


それが万次郎でした。


幕府が彼を放っておくはずがありません。


土佐へ戻ったばかりの元漁師は士分に取り立てられ、やがて幕府に召し出されます。


そして故郷の中浜から姓を取り、中浜万次郎と名乗るようになります。


十四歳まで名字を持たなかった漁師の少年が、幕府直参となったのです。


身分制度の厳しい江戸時代を考えれば、異例というほかありません。


しかし興味深いのは、ここから万次郎が何もかも順調に進んだわけではないことです。


幕府にとって、彼の知識は欲しい。


しかし彼は、あまりにもアメリカを知りすぎていました。


アメリカ人と暮らしている。


英語を話す。


彼らの考え方も知っている。


それは強みであると同時に、疑われる理由にもなりました。


「この男は、アメリカ寄りではないのか」


そんな警戒も受けます。


実際、ペリー再来航時の通訳として万次郎が前面に立つことはありませんでした。


ここに、幕末の日本らしい難しさがあります。


外国を知らないから、外国を知る人間が必要になる。


ところが外国を知りすぎている人間は、今度は信用されない。


万次郎は、その矛盾の真ん中にいました。


それでも彼の知識は、日本にとって貴重でした。


英語。航海術。測量。造船。捕鯨。海外事情。


万次郎は自分が見てきたもの、覚えてきたものを、日本人へ伝えていきます。


『英米対話捷径』という英会話書も編みました。


ここが、私は万次郎という人物の面白いところだと思っています。


彼は西洋文明を本で知った人ではありません。


船が嵐に遭えばどうなるか知っている。


外国人と一緒に働けば、どんなことで揉めるのか知っている。


英語が通じなければ何が困るのか知っている。


船を目的地へ運ぶために、数学や測量がなぜ必要なのかも知っている。


つまり彼が日本へ持ち帰ったのは、「西洋についての知識」だけではありません。


西洋の世界で実際に生きた経験そのものでした。


その価値がもっともよく表れたのが、万延元年(一八六〇)の咸臨丸でしょう。


日米修好通商条約の批准書交換のため、日本は使節をアメリカへ派遣します。


その随行艦として太平洋を渡ったのが咸臨丸です。


船将は勝海舟。


福沢諭吉も乗っていました。


そして万次郎は、通弁方として乗り込みました。


航海は容易ではありませんでした。


荒天にも見舞われ、日本側乗組員には船酔いで働けなくなる者も出ます。


しかも咸臨丸には、ジョン・マーサー・ブルック大尉をはじめとするアメリカ海軍の乗員も同乗していました。


したがって、


「日本人だけで初めて太平洋横断を成し遂げた」


あるいは、


「万次郎が一人で咸臨丸を救った」


といった語り方は、少し英雄物語に寄せすぎでしょう。


それでも万次郎が、この船の中で特別な存在だったことは間違いありません。


日本人でありながら英語を話す。


しかも英語を話すだけではない。


海を知っている。


西洋式の航海を知っている。


アメリカ人船員の考え方も分かる。


日本側とアメリカ側、その両方の世界を理解できる。


万次郎ほど、この航海にふさわしい人間はいなかったでしょう。


咸臨丸はサンフランシスコへ到着します。


十九年前、土佐沖で漂流した漁師の少年が、今度は幕府の役人として太平洋を渡り、アメリカへ戻ってきたのです。


なんとも不思議な人生です。


そして万次郎の影響は、本人が表舞台に立った部分だけにとどまりません。


土佐では彼の海外体験が語られ、その知識は人から人へ伝わりました。


坂本龍馬についても、


「万次郎が直接、民主主義を教えた」


と書いてしまうのは正確ではありません。


二人が師弟関係にあったことを示す確かな史料はありません。


しかし、万次郎の海外体験を聞き取った河田小龍らを介して、その世界観が龍馬たちの世代へ伝わったと考えられています。


一方、後藤象二郎や岩崎弥太郎については、土佐藩の教育機関で万次郎から学んだとする地元資料が残っています。


つまり万次郎は、維新の英雄たちを集めて講義した「幕末の先生」だったわけではありません。


もっと面白い。


彼が持ち帰った世界の実体験そのものが、土佐という土地へ落とされた一粒の種だったのです。


それを直接聞いた者がいる。


その者から聞いた者がいる。


さらに、その話を聞いて海の向こうを想像した若者がいる。


万次郎自身が政治革命を起こしたわけではありません。


けれど、日本人が「世界」を想像するときの材料を、彼は誰より早く持ち帰っていました。


幕府が倒れ、明治になると、万次郎は開成学校――東京大学の前身の一つ――でも教壇に立ちます。


漁師の息子として生まれ、寺子屋で高度な学問を修めたわけでもなかった少年が、最後には新しい日本の最高教育機関で教える側に立ったのです。


彼の人生を追っていると、ときどき不思議な気持ちになります。


万次郎は、最初から「日本を開国させよう」と海へ出たわけではありません。


日本を近代化する使命を背負ってアメリカへ留学したわけでもありません。


十四歳の少年が漁に出た。


嵐に遭った。

死にかけた。

助けられた。

そこで出会った人間についていった。

言葉を覚えた。

勉強した。

働いた。

海を渡った。

そして、母に会うため日本へ帰った。


始まりは、それだけです。


ところが彼が帰ってみると、日本の方が彼の経験を必要とする時代になっていました。


そこが、万次郎の人生の途方もないところです。


もし嵐が少し弱ければ、彼はそのまま土佐へ帰っていたでしょう。


もし鳥島へ流れ着かなければ、命を落としていたかもしれません。


もしジョン・ハウランド号が鳥島へ来なければ。


もしホイットフィールド船長が万次郎を気に入らなければ。


もし万次郎がハワイに残ることを選んでいたら。


もしアメリカで学ぼうとしなかったら。


そして、もし彼の帰国があと二十年早かったなら。


万次郎が身につけた知識は、これほど必要とされなかったかもしれません。


ところが彼が帰ってきたのは、一八五一年。


その二年後に、ペリーが来た。偶然というには、あまりにも出来すぎています。


だから私は、中浜万次郎を「日本最初の国際人」という一言だけで片づけるのが、少し惜しいと思っています。


彼は英雄になるために海を渡った人ではありません。


遭難した漁師の少年です。


ただ、その少年には恐ろしく強い好奇心があった。


目の前に知らない世界が現れたとき、


「怖いから戻ろう」ではなく、「これは何だろう」と近づいていった。


そして見たものを覚え、覚えたものを使い、自分の力にしていった。


だから生き残れた。


だから航海士になれた。


だから日本へ帰れた。


そして結果として、幕末の日本が世界へ目を向けようとしたとき、誰よりも早くその向こう側を知っている日本人になっていた。


幕末という時代には、後世から見ると「この人物がここにいたのは偶然なのか」と思わされる人間が何人も現れます。


中浜万次郎も、その一人です。


ただし彼の場合、その舞台は京都でも江戸でもありませんでした。


始まりは、土佐沖の小さな漁船です。


その小舟が嵐に流され、少年が世界へ放り出された。


そして十年後。世界を知った青年が、日本へ帰ってきた。


黒船がやってくる、わずか二年前のことでした。


私は万次郎という人物を書くたびに、この二年間という短さに驚かされます。


まるで時代の方が、彼の帰りを待っていたようにさえ見えるからです。

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― 新着の感想 ―
ハリスて インパクトほしくて土食べた人だよね 知ってるよ
私の英語は通じればよいというレベルで、外国人(主にフィリピン人)と話す時はジェスチャーを交え何とか。 最も業界の決まりきった内容確認ですが。 妻はアメリカの大学を出ており、私の英語は文法がおかしいとか…
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