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幕末に転生したら近衛家の姫でした。まず屋根を直します【累計350万PV/75万UU突破‼ 幕末経済戦記】  作者: 1009


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第二百三十話「糸子のお嫁入り編―面倒でございます」

一

 糸子は、ニールの目から視線を外さなかった。


 カップへ伸びかけた手は、すでに膝の上へ戻っていた。答えを探している顔ではない。決めた答えを、どのような形で渡すか。それだけを測っている顔だった。


"Forgive me, Mr. Neale. That is a matter within our own house."

「お許しくださいませ、ニール殿。それは、わたくしどもの家の内のことにございます」


 声は柔らかかった。


"It would not be proper for me to speak of it to the envoy of a foreign Power."

「異国の御使者に申し上げる筋のものではございませぬ」


 断りか、とニールが受け取りかけたところで、少女は続けた。


"However, should Great Britain be pleased to tell me, in equal detail, how matters stand within her own house——who sends whom, and upon whose instructions——then I would gladly consider doing the same."

「ただ、英国が御自分のお国の内の事情を、同じだけ詳しくお話しくださるのでしたら――どなたがどなたを遣わし、どなたの指図で動いておられるのか――わたくしも、お話しすることを考えましょう」


 ニールは、すぐには返さなかった。


 誰が誰の命で動いているのか。それを問うことは、本国の訓令を見せろと言うのと同じである。外務大臣から何を命じられ、どこまで自分の判断で動けるのか。それこそ、公使館が最も外へ出さぬ情報だった。


 それに、暮れの座のことがある。


 あの座に自分が出れば、あの一件は公使自身の案件になる。公使の申し入れが退けられれば、それは英国の申し入れが退けられたという意味になる。だが、書記官に任せておけば、傷を負うのは書記官の面子だけで済む。


 そう判断して、ジュリアンを出した。


 誰が誰を遣わしたのかを話すなら、まずそこから話さなければならない。病だと言って座に出なかった男が、本当は何を数えて出なかったのか。それを、この姫の前で口にできるはずがなかった。


 この姫君も、それを承知している。


 そのうえで、こちらの問いにも同じ重さを求めてきた。到底、払えるものではない。払えぬと分かった上で、こちらが問いを引くとでも思っているのか。


 押し方なら、ニールは軍隊でも外交の場でも覚えてきた。だが、この姫が差し出してきたのは断りではなかった。互いに出せないものを、互いに出さずに済ませる形を、先に置いてきたのである。


 ニールは、喉の奥から上がってくる笑いを止めなかった。


"Ha. You ask for my instructions from London in exchange."

「は。代わりに、ロンドンからのわしの訓令を出せと申されるか」


"I ask only for what you ask of me, Mr. Neale."

「ニール殿がわたくしにお求めになったのと、同じものをお願いしたまででございます」


"No minister in this world could ever afford such a price."

「その値を払える公使は、この世におりませんな」


"Then we are agreed, I think."

「では、話はついたようでございますね」


"We have arrived. Let us see to it that we pay neither."

「ついた。どちらも払わずに済ませるとしましょう」


"Then perhaps we may speak of things that cost neither of us anything."

「では、どちらも払わずに済むことを、お話しいたしましょうか」


"Such things are rare at a table like this one, my lady."

「こういう卓で、そういう話はめったにないものだが」


"Not so rare, Mr. Neale. One has only to ask what may be answered."

「それほど、めったにはございませぬ。答えられることをお尋ねになれば、よろしいのです」


 ニールは、組んでいた指を解いた。


 姫君は勝ち誇った顔もせず、それ以上は何も言わなかった。卓の上で、茶の湯気が細く立っている。


 一手目は、引き分けだった。ただ、手の内を見せたのはこちらだけである。英国が、暮れの座の裏に誰がいたのかを知りたがっている。訊いたことで、この姫にそれを掴まれた。


 右隣で、ジュリアンのペンが動いていた。


 ニールは、椅子の上で背を伸ばし直した。正面から入って、正面で止められた。それなら、角度を変える。


二

"Then, let me ask you what you can answer."

「では、お答えいただけることを伺いましょう」


"Please."

「どうぞ」


"What office do you hold at your Court, my lady?"

「姫君は、朝廷でどのような役目をお持ちか」


 誰が出したのかを話せないなら、出された者が何者なのかを訊く。役目が分かれば、誰の下にいるのかも、おおよそ見当がつく。


 姫君は今度はためらわなかった。


"I have been given the duty of speaking with the gentlemen of foreign nations, within the Court."

「朝廷の内で、異国の方々とお話しするお役目を与えられております」


 答えは、それだけだった。役の名も、誰に与えられたのかも、いつからかも言わない。


 ニールは、その短い一文を手の中で転がしてみた。短いが、足りないとは思わなかった。


 この国の役人の答えは、たいてい長い。前置きがあり、断りがあり、上役に伺う旨があって、最後に何も決まっていないことが分かる。ニールは日本に来て、そういう答えを幾度と聞いてきた。


 姫の答えは、その逆だった。出せる情報だけを出し、出せぬ部分は最初から線を引いている。だからこそ、語られた部分については疑う理由がなかった。


 英語を話す姫が、朝廷の内で異国との話を任されている。


 暮れにジュリアンの報告を聞いたとき、ニールは、朝廷の使者が座にいるだけで答えは幕府だけのものではなくなる、と考えた。誰がそこまで読んで人を出したのかは、分からないままだった。


 報告には続きがあった。この姫は姿を晒し、代理公使の名をこちらより先に口にし、英国で言えば王家の姫にあたると、英語で告げたという。


 ニールは笑った。我が大英帝国を脅すか、と。笑いはしたが、笑い事ではなかった。


 あの座にいたのは、飾りに連れてこられた者ではない。異国と話すことを役目とする者が、その役割を果たすために坐っていたのである。


 となれば、次に知るべきことは、この姫君の役目がどこから下りてきているかだった。


 役目を与えた者の名は、言われなかった。それでも、朝廷の内で役目を与えられる者は限られている。その中で、この姫はどこに立っているのか。どれほど上に近いのか。


 遠回しに訊く気は、もうなかった。この姫に探るような聞き方をすれば、同じようにかわされるだけだ。こちらの時間だけが失われる。


 暮れの座で、ジュリアンが用意した三つの求めのうち、二つはその場で消された。


"I thank you, my lady. That is clearer than many answers I have had in this country."

「礼を申す。この国で受けた多くの答えより、よほど分かりやすい」


"I am glad of it."

「それは、ようございました」


 ニールは、卓の上に両の手を置いた。ジュリアンが顔を上げた。


"Then——"

「では――」


三

"Forgive a soldier's bluntness, my lady."

「軍人の無骨を許していただきたい、姫君」


"I shall."

「お許しいたします」


"How near do you stand to your Mikado?"

「姫君は、帝に、どれほど近いところにおられる」


 ジュリアンのペンが、紙の上で一度跳ねた。


 朝廷の姫に、代理公使が帝との距離を正面から訊いている。幕府の役人にこの問いを向ければ、まず顔色が変わり、次に口が閉じる。隠し事があるからではない。帝のことを自分の口で語る資格がないと思っている者の顔である。江戸の役人にとって、京は語るものではなく、仰ぐものらしかった。


 この人物は、仰ぐ側にいない。王家の姫にあたる家に生まれ、朝廷の内に役目を持っている。帝との距離を訊かれて、口が重くなる立場ではない。


 顔色は変えまい。平然と、何かを返してくるだろう。その返答次第で、答えの半分は分かる。


 姫君の顔色は、変わらなかった。そして、答えもしなかった。膝の上で手を重ねたまま、少しだけ首を傾けて、問いを返してきた。


"Mr. Neale, are you at liberty to call upon Her Majesty Queen Victoria whenever you please?"

「ニール殿は、ヴィクトリア女王陛下に、気軽にお目にかかれますか」


 ニールは、思わず糸子の顔を見直した。


 また女王陛下である。さっきこの姫は、王配の死を悼み、女王の喪に触れた。そのときも虚を突かれた。


 なぜここで、と考えるより先に、答えが口から出ていた。


"Certainly not."

「とんでもない」


 考えるまでもないことだった。


"A chargé d'affaires does not call upon his Sovereign as he would upon a neighbour."

「代理公使の身で、隣家を訪ねるように陛下のもとへ参れるものではない」


 言ってから、ニールは何を言わされたのかに気づいた。


 英国の代理公使は、自国の女王に気軽には会えない。それを、この姫君の前で、自分の口で言った。


 この問いは、こちらの問いへの答えではなかった。こちらの距離を、先に測らせたのである。女王の名を負って異国に立つ者でさえ、自分の君主からはこれだけ遠い。その物差しを、こちらの手に握らせた。


 答えを取り消す気はない。事実である。英国の代理公使は、ロンドンの宮廷から最も遠いところで働く者の一人だった。本国から船で何十日もかかる港で、女王の名で条約を守らせ、女王の名で居留民を守る。女王の名を負いながら、女王の顔を見る折はまずない。英国の外交は、そういう者たちで回っている。


 姫君は、その仕組みを知っていて、こちらの口からそれを言わせたのだ。


 握らせておいて、何を測るつもりなのか。


 右隣で、ジュリアンが手帳にペンを置いたまま動かなかった。


 糸子が、口を開きかけた。


四

 座の端で、正木退蔵は息を詰めていた。


 この客殿で、姫様のほかに異人の言葉が分かる日本人は、自分しかいない。


 座に着いたときには、そのことを深く考えていなかった。語学所から取扱所へ出ている者として、端に控えておれと言われただけである。姫様をお助けせよとも、何を聞いても口外するなとも言われていない。言われるまでもないことだと思っていた。


 昨日、取扱所の一階で、正木は武藤と二人してフランスの通詞と言い合いになった。一揃の値を一枚の値と取り違えた通詞に、こちらの訳に誤りはないと英語で言い張ったのである。そこへ商家の娘が割って入り、フランスの言葉で双方から話を聞いて、通詞に花を持たせて騒ぎを収めた。正木の名も、武藤の名も言い当てた。


 その方が、今朝は小袿を着て椅子に掛けていた。


 話が始まってみると、口外するもしないもない話だった。聞いたことを、自分の中でさえ持て余す。


 姫様と代理公使が交わしている英語は、語学所の講堂で聞く英語とは違う。言葉そのものは半分以上分かる。分からないのは、その言葉が何を運んでいるかだった。


 代理公使が笑って引いたとき、その笑いの意味は正木にはすぐには分からなかった。分かったのは、姫様が何一つ出していないことだけである。


 そして今、代理公使は、とんでもない、隣家を訪ねるようには参れぬ、と言わされた。


 正木は、姫様の横顔を見た。椅子の上で背を伸ばしたまま、膝の上の手を動かしていない。


"Then, in the terms of your own country——I am one who may."

「では、貴国で申せば――わたくしは、気軽にお目にかかれる側の者にございます」


 正木の膝の上で、指が一本ずつ固まっていった。


(……何を、仰せられた)


 聞いた英語を、頭の中で並べ直した。しかし、意味は変わらなかった。


 英国の代理公使は、自分の国の女王に気軽には会えない。いま、その男自身の口から、そう言わせた。そのうえで姫様は、自分を「会える側」に置いた。


 帝に気軽に会える、とは一言も言っておられない。貴国で申せば、と言われただけである。それで、代理公使には足りた。英国の女王に会えない男に、英国の物差しで、こちらの近さを測らせたのだ。


(とんでもない御方じゃ……)


 語学所では、英語は商いのための言葉だと教わってきた。値を訊き、荷を数え、約定を取り交わすための言葉である。取扱所の一階で異人の商人と値の話をしたとき、自分の学んだものが役に立つと知って、正木は少し嬉しかった。


 昨日、姫様が収めたのも、値の話だった。だから、正木にも筋が追えた。


 今日は違う。値の話でも、荷の話でもない。英国という国と、この国の朝廷との距離の話をしている。


 同じ言葉が、こういうふうにも使われる。声を荒らげるでもなく、へりくだるでもなく、姫様は英国の代理公使と卓を挟んで、同じ高さで話していた。


 正木は、横目で隣の畳を見た。


 近藤殿は膝の上の拳を動かさず、代理公使の顔を見ていた。正木が見ているあいだに、代理公使の眉が一度だけ上がり、近藤殿の目がその眉の上で止まった。近藤殿に分かったのは、そこまでのはずである。沖田殿も斎藤殿も、言葉は分からない。


 少し離れて坐る松屋殿も同じだった。天朝物産会所の実務を一身に負い、横浜の取扱所を組み直した人である。値の話なら言葉が分からなくても顔つきで読める人だと、取扱所の者は皆言っている。その松屋殿が、膝の上で手を重ねたまま、姫様と代理公使の顔を見比べるばかりで、何も読めずにいた。


 分かるのは、自分だけである。そして、分かったことを誰にも言えない。ここで口を開けば、座が崩れる。


 正木は、喉の奥で一度、唾を呑み込んだ。


 代理公使は、しばらく黙っていた。卓の上で両手を組み、解き、また組んでから、少しだけ身を乗り出した。


"Then your Court is like our own Crown, I take it."

「では、貴国の朝廷は、我が国の王室と同じようなものと見てよいか」


"The Sovereign reigns, but does not govern?"

「君主は君臨すれども、統治せず、と」


 正木は、その英語を聞き取った。


 君臨すれども、統治せず。語学所で読んだ英国の政体の書に、同じ言い回しがあった。王は国の上に立つが、政は議会と大臣が執る、と。


 姫様が、それにどう答えるのか。正木は息を詰めて、姫様の口もとを見た。


五

 姫君は、すぐには答えなかった。


 一度だけ卓のカップに目をやり、それからニールへ目を戻した。


"In one respect, yes."

「一つの点では、さようにございます」


"Above the business of government there stands one who bears the lawful succession of the realm. One who is not the government, yet without whom there is no government. In that, we resemble you."

「政の実務の上に、国の正統を負われる御方がおられます。政そのものではございませぬが、その御方なしには政も成り立ちませぬ。そこは、貴国と似ております」


 ニールは頷いた。そこまでは、頭の中の地図と同じである。女王は政を執らないが、大臣は女王の名で政を執る。


"But there are two differences."

「ただ、違うところが二つございます」


"The first is in the name. Your Queen is a Queen——the sovereign of a kingdom."

「一つは、呼び名にございます。貴国の女王陛下は、女王――王国の君主にあられます」


"Our Mikado is an Emperor."

「わたくしどもの帝は、皇帝にあられます」


"Emperor."

「皇帝、と」


"Mikado is our own word for him. In your tongue, Emperor is the proper one."

「御門というのは、わたくしどもの言葉にございます。貴国の言葉で申すなら、皇帝が正しゅうございます」


 王と、皇帝。ニールは、その違いを軽いものとは聞かなかった。王は一国の君主である。皇帝は、王の上に立つ者の称である。欧州で皇帝を名乗る家は、数えるほどしかない。


 居留地の英国人は、この国の帝をミカドと呼ぶ。皇帝と呼ぶ者もいるが、王と何が違うのかまで考えて呼ぶ者はいない。ニール自身、暮れからそう呼んできた。姫はいま、その呼び名に中身を入れてみせたのである。


"And the second?"

「もう一つは」


"The second is in those who govern."

「もう一つは、政を執る者にございます」


"Those who govern in your country stand upon your Parliament. They answer to it, and through it, to your people."

「貴国で政を執る方々は、議会に拠って立っておられます。議会に責を負い、議会を通して、民に責を負っておられる」


"He who governs here——the Shogun——holds his office by appointment of the Emperor."

「この国で政を執る者――将軍は、帝に任じられて、その職におります」


"He is the Emperor's subject."

「将軍は、帝の臣にございます」


 ニールの指が、卓の上で止まった。


"The Shogun. A subject."

「将軍が。臣か」


"Yes. Even he whom you call the Tycoon holds the office of Shogun by the Emperor's appointment."

「はい。貴国の方々が大君とお呼びになる御方も、将軍の職は帝より任じられております」


 ニールは黙った。


 大君は、英国が条約の相手として交渉し、文書を交わし、公使館を置いた相手である。江戸にいて、兵を持ち、役所を持ち、この国の港を開いた。その大君が、臣だという。


 頭の中の地図が、一枚書き換わった。江戸の上に、もう一つ座がある。兵も役所も持たない京の座に坐る者が、江戸の主を将軍に任じている。


 暮れの談判の前、日本側から届いた返しの末に、朝廷の御使者一名同席、とあった。ジュリアンはそれを、座に格を添えるための一名と読み、ニールも同じように読んだ。京に帝がいることは、英国の公使館でも知っている。ただ、帝は政に関わらない飾りのようなものだと、誰もが見てきた。


 この姫は、英国の女王と同じだと言ったうえで、同じでないところを二つ挙げた。王ではなく、皇帝であること。政を執る者が、議会ではなく帝に拠っていること。


"And one thing more, Mr. Neale."

「もう一つだけ、ニール殿」


"Counting from the first Emperor, this is the two thousand five hundred and twenty-third year of our country."

「初代の帝から数えまして、今年で二千五百二十三年目にあたります」


"There is no older reigning house in the world."

「これより古くから続く君主の家は、世界のどこにもございませぬ」


 ニールは、その数を聞いても顔を動かさなかった。


 二千五百年。英国の王家を何代遡っても、その半分にも届かない。羅馬の帝国でさえ、興ってから西が滅ぶまで、これほど長くは続いていない。数そのものを疑うことはできた。この国の古い書に何が書いてあるのか、ニールは知らない。


 だが、そこを争っても意味はない。この国の者がそう数え、その長さの上に帝を置き、その帝が将軍を任じている。この姫が並べてみせたのは、数ではなく、その形だった。


 条約を結んだ相手の、さらに上に座がある。目の前の姫君はその座の側にいて、しかもその座のそばへ「気軽に」上がれる。


 暮れにジュリアンの報告を聞いたとき、ニールは、かの姫君とのつながりはきわめて重いものになる、と言った。あのときは見立てにすぎなかった。いま、それが確かなものになった。


 右隣でジュリアンのペンが紙を走り、将軍は臣、と書いた。その下に、二千五百二十三、と数字を書いたところで、ペンが一度止まった。ジュリアンは眼鏡に指をやりかけて、やめ、またペンを動かした。


"I have no intention of disputing the numbers."

「その数を、争うつもりはありません」


"I did not suppose you would, Mr. Neale."

「わたくしも争われるとは、思っておりませんでした」


 姫は、そう言って微笑んだ。


 争わないことまで、見越されていた。


"A house that has stood so long learns to think in long spans, Mr. Neale."

「これほど長く続いた家は、物事を長い目で考えるようになるものでございます。ニール殿……」


"Your own Crown is an old one. I think you will understand."

「貴国の王家も、古い御家でございます。お分かりいただけましょう」


 ニールは、すぐには返さなかった。


 長い目で手と、この姫は言った。言ったのはそれだけで、ほかの国の名は一つも出していない。


 それでもニールの頭には、一つの国が浮かんでいた。


 米国である。


 独立を言い立ててから、まだ九十年に満たない。大統領は四年ごとに替わり、そのたびに言うことが変わる。


 居留地の英国人が米国人を語るときの口ぶりを、ニールはよく知っていた。声が大きく、自分の国を自慢し、自由を説きながら南では人を売り買いし、何でも金で量る。英国の新聞は、そういう米国人を戯画にして笑ってきた。


 笑い事で済まなかったこともある。


 一昨年の秋の終わり、米国の軍艦が公海の上で英国の郵便船を止め、乗っていた南部の使節二人を連れ去った。英国の旗を掲げた船に、手をかけたのである。本国は激昂し、カナダへ兵を送った。米国が二人を返したのは、その年の暮れになってからだった。あと一歩で、戦になるところだった。


 あの報せを、ニールは北京で読んだ。公使館の誰もが、同じ顔をしていた。


 長い目で物を考える国と、四年ごとに考えが替わる国。


 姫は、そう比べてみせたわけではなかった。勝手に比べたのは、ニールのほうである。この姫は英国を、あの国と同じ棚には置いていない。ニールは、姫の一言をそう受け取っていた。


 受け取らされた、と気づいたのは、少し遅れてからだった。


"We understand it well, my lady. An old house does not care to be hurried."

「よく分かる、姫君。古い家は、急かされるのを好まぬものだ」


 姫は、小さく頷いた。


 ニールは、卓の上の指をほどいた。頭の中で、一つの答えが組み上がっていた。


六

 米国は、内戦で手が塞がっている。その隙に、この国での主導権を英国が取る。暮れからずっと、ニールはそう考えてきた。


 主導権を取るには、話す相手が要る。幕府とは話している。条約を結び、公使館を置き、何年も役人と坐ってきた。幕府の答えはいつも遅く、いつも曖昧で、いつも誰かに伺いを立てている顔をしている。


 その伺いの先が、京にある。


 京と話す道を、英国はまだ一本も持っていない。フランスも、米国も、ロシアも持っていない。持とうとしなかったのではなかった。京は異人を入れない。異人が京へ近づけば、それだけで騒ぎになる。公使が京の公家に書状を送る筋もない。朝廷と話したければ幕府を通すしかなく、幕府を通せば、話は幕府の都合で削られ、遅れる。


 その道が、いま卓の向こうにある。英語を話し、朝廷の内で異国と話す役目を負い、帝のそばへ気軽に上がれる姫が、英国の代理公使と向き合って坐っている。


 遠回しに言えば、遠回しに返される。この座で、それはもう二度見た。


"My lady. Let me speak plainly, as a soldier should."

「姫君。軍人らしく、率直に申し上げる」


"Please do."

「どうぞ」


"Would you consent to stand between Her Majesty's Government and your Imperial Court?"

「女王陛下の政府と、貴国の朝廷とのあいだに、姫君に立っていただくことはできまいか」


 ジュリアンが、手帳から顔を上げた。上官がここまで真っ直ぐに言うとは、思っていなかったらしい。


 ニール自身、口に出すまでは、もう少し遠くから回るつもりでいた。詫びを済ませ、手土産の話を片づけ、そのうえで折を見て持ち出す。頭の中では、そういう順を組んでいた。


 この座では、その順が通らない。詫びは後へ回され、手土産の話はまだ出ていない。順を待っていれば、姫君の組んだ順で話が進み、こちらの持ち出す折は来ない。だから、いま言った。


 この姫はこちらに地図を描かせ、その地図の真ん中に自分を立たせた。ならば、その真ん中に立っていてくれと頼むのは、筋の通った話である。


 断られることも考えた。そのうえで、断られにくい形にしたつもりだった。英国が朝廷と話す道を求めている。その道に立つことは、朝廷の内で異国と話す役目を負う姫にとって、損になる話ではないはずだった。


 少女は、首を少しだけ傾けた。


七

(……はい?)


 糸子は、ニールの顔を見た。


 真面目な顔である。冗談ではない。軍人らしく率直に、と前置きをして、本当に率直に言ってきた。


(なぜ、わたくしが?)


 英国と朝廷のあいだに立て、という。英国が朝廷に何か言いたくなるたびに、わたくしを通せ。朝廷が英国に何か言いたくなるたびにも、わたくしを通せ。そういうことである。


(……これ、ひょっとして…あのへそ曲がりのときと、同じではございませんか)


 去年、一橋上屋敷の奥で、前置きもなく言われた。その座に、そなたにも同席していただきたい、と。


 あのときは御公儀が、答える口を一つにしないために、朝廷の使者を座に並べた。今度は英国が、朝廷と話す道を持たないために、朝廷の使者を道の上に立てようとしている。


 頼んでくる相手が、御公儀から英国に替わっただけである。


(どうして、どなたもこなたも、わたくしを便利に使おうとなさるのでしょう)


(暮れの後始末が、ようやく片づくと思いましたのに)


 御公儀からの取り立ては、まだ済んでいない。なのに、次の頼みが来た。今度は、海の向こうからである。


(……ぐぬぬ)


(わたくしは、姫でございますよ)


 姫というのは、そういう役回りのものではない。異国と話す役目は負っているが、それは御門の言葉を異国に正しく伝えるための役目であって、英国のために朝廷の門を開けて回る役目ではない。


(勝手に、人を働かせようとなさらないでくださいまし)


 このおっさんは、座に着いてからずっと、こちらを英国の道具として使えるかどうかを測っていた。測り終えて使えると踏み、使わせてくれと言ってきた。


 あいだに立つというのが、どういうことになるのか。糸子には、おおよそ見当がついた。英国から書状が来るたびに読んで訳し、京へ送る。京から返しが来れば、また訳して英国へ届ける。英国が何かを言い出すたびに、朝廷が呑めるものかどうかを先に量る。量った結果が気に入らなければ英国はわたくしに文句を言い、朝廷の誰かが英国を気に入らなければ、その苦情もわたくしのところへ来る。


 それを、英国のためにやれという。


(これは…姫君のする仕事では、ございませぬ)


 頼み方は、悪くない。率直である。ただ、頼めば働くと思われているのが気に入らなかった。


(もし、どうしても働かせるおつもりなら)


 そのときは、容赦なく毟り取らせていただく。それだけのことである。


 もう一度、ニールの顔を見た。答えを待っている顔である。断られることも勘定に入れてはいるが、断られるとは思っていない顔だった。


 糸子は、首を傾けたまま、思ったとおりに言った。


"Why on earth should I? I am quite busy enough as it is."

「なぜ、わたくしが? これでも十分に忙しいのでございます」


"And frankly, it sounds tiresome."

「それに率直に申しまして、面倒でございます」


  *


 ニールの目が、姫の顔の上で止まった。


 何を言われたのか、すぐには呑み込めなかった。


 英国の代理公使が、女王陛下の政府の名で、朝廷とのあいだに立ってくれと申し出た。それを、この姫君は、面倒と言った。


 英国と朝廷をつなぐ道。他国のどこも持っていない道。帝のそばへ気軽に上がれる姫。条約の相手のさらに上の座。ここまで積み上げてきた見立ての全部に、面倒だという札を付けて、この姫は卓の上へ戻してきた。


 ポルトガルでも、スペインでも、地中海でも、北京でも、申し出を断られたことは幾度もある。断る者は、たいてい理由を述べた。国の事情、本国の指図、時期が悪い、条件が合わない。


「面倒だから断る」などと言われたことは、ただの一度もなかった。


 怒る気にはならなかった。姫の声には、侮りがなかったからである。本当に面倒だと思っている者の声だった。英国の申し出に値打ちがないと言ったのではない。自分がそれを引き受ける理由が、まだどこにもないと言っている。


 言われてみれば、その通りだった。こちらは頼んだだけで、何も差し出していない。


 本国へ出す便に、この一言をどう書けばよいのか。ニールは一瞬、それを考えた。朝廷の姫に窓口を頼んだところ、面倒だと断られた。そのまま書けば、外務省の誰かが笑い、そのあとで、その姫は何者かと訊いてくるだろう。訊かれても、まだ答えられることは少ない。


 右隣で、ジュリアンのペンが紙の上で止まっていた。何と書けばよいのか、分からないらしかった。


 脇の畳から、日本の侍たちがこちらを見ていた。若い侍はニールの顔を見て、口元を引き結んだまま、肩を小さく震わせている。痩せた侍は、顔の形を一つも変えていない。大柄な侍が見ているのはニールではなく、この姫の顔だった。座の端に控えた、もう一人の若い侍だけが、顔の色を失っていた。


 糸子だけが、何事もなかった顔で坐っていた。


八

 糸子はカップを取り、一口、茶を飲んだ。


 客殿の中で音を立てているのは、彼女だけだった。カップが卓に戻る小さな音が、ニールの耳にはっきりと届いた。


 カップから手を離し、膝の上に戻した。


"However——"

「ただし――」


 ニールは、顔を上げた。


"——should Great Britain truly show that she means to be a friend to Japan, then I shall take some pains."

「――英国が、日本と仲良くなさりたいと、本気をお見せくださるのでしたら、わたくしも骨を折りましょう」


 姫の顔は、面倒だと言ったときと少しも変わらず、穏やかだった。


 ニールは、そこで悟った。彼女は、断ったのではない。値を付けたのである。


 ただで働けと言われたから、面倒だと返した。働かせたいなら本気を見せろ、本気の分だけ骨を折る、と言っている。その本気がどれほどのものかを決めるのは、この姫君のほうである。


 日本と仲良く…と彼女は言った。朝廷とも、幕府とも言っていない。英国が日本という国とどう付き合うつもりなのか、その本気を見せろと言っている。


 ただ、一つ分からないことがあった。


"Then let me ask you one thing, my lady."

「では、一つ訊かせてもらおう、姫君」


"There are the French at Yokohama, and the Americans, the Dutch, the Russians. Why Britain?"

「横浜には、フランスもおる。米国も、オランダも、ロシアもおる。なぜ、英国なのだ」


 姫は、少しだけ首を傾けた。


"Britain is an island, Mr. Neale. So is Japan."

「英国は島国でございます、ニール殿。この国も、島国でございます」


"An island that would grow must live by the sea. In the years to come, this country will have to do the same."

「島国が大きくなろうとすれば、海で生きるほかございませぬ。この国も、これから先はそうなりましょう」


"And there is no nation that knows the sea as Britain does. Yours, they say, is the empire on which the sun never sets."

「そして、海を知ることにかけて、英国に並ぶ国はございませぬ。貴国は、日の沈まぬ国と呼ばれておりますね」


"Your ships put in at every port in the world. If the silk of this country is to cross the sea, I would have it go with those who know the sea best."

「貴国の船は、世界のどの港にも入っております。この国の糸が海を渡るのなら、海をいちばんよく知る方々と渡らせとうございます」


 日の沈まぬ国。


 本国では、誰もが口にする呼び名である。それを、日本の姫の口から聞くとは思っていなかった。


 悪い気はしなかった。島国は海で生きる。英国人が自分の国を語るときの理屈、そのままである。英国人が聞いて心地よい言葉を、この姫は英国人の言い方で並べてみせた。


 心地よかった。心地よくさせられていることも、ニールには分かった。


 そのうえで、もう一つ気づいた。


 島国どうしだから英国と同じ道を行く、とは、この姫は言っていない。英国のようになりたい、とも言っていない。この国の糸を、英国の船で海の向こうへ渡したい、と言っただけである。


 この国をどこへ連れていくつもりなのかは、一言も出てこなかった。


 米国が内戦で手を塞がれているうちに、この国での主導権を英国が取る。かの姫君とのつながりは、そのために重い。暮れからずっと抱えてきた見立てである。つながりを持ちたいのは、こちらだった。彼女は、それを分かっている。


 ニールは、自分がこの寺へ何をしに来たのかを考えた。


 詫びに来た。それは表の用である。裏の用は、この人物を量ることだった。英国にとって使える相手か。どこまで帝に近いのか。何を求めてくるのか。それを自分の目で見て、量るつもりで来た。


 量られていたのは、こちらだった。


 英国が本気なのかどうか、どれほど真剣なのか。それを量るために、この姫は寺を借り、椅子を揃え、通詞を外へ出し、詫びを後へ回して、この座を組んでいたのである。


You probably want to see how I will answer."

『わしがどう答えるかを、見たいのだろう』


 姫の書状を読んだ日、返書を書く前に、ニールはジュリアンにそう言った。あの姫が、どう求めるかを見たいのと同じでな、と。


 見立ては、当たっていた。ただ、こういう形で来るとは思っていなかった。求められるより先に、こちらが答えさせられている。


 彼女は、まだ何一つ求めていない。中身を言わずに、値だけを付けた。先日の書状に、品の名を一つも書かなかったのと同じやり方である。紙には書かん、わしの顔を見て言うつもりだ――あのとき、ニールはジュリアンにそう言った。


 その顔が、いま目の前にある。


 ニールは、腹を決めた。


 量られていると分かったなら、量らせればよい。足りぬと言われれば、その時に足す。本国が何を認め、何を退けるかは、帰ってから考えればよい。いま見るべきは、この少女がどこまで求めてくるのか。それが、軍人のやり方だった。


 喉の奥から、笑いが上がってきた。先日この姫君の書状を読んだときと、同じ笑いである。ニールは、それを止めなかった。


"Heh-heh, ha-ha-ha-ha-ha!"

「くくっ、はっはっはっはっはっ」


 低い笑い声が、客殿の中に短く響いた。脇の畳で、大柄な侍がわずかに身じろぎした。


九

"Very well, my lady."

「よかろう、姫君」


 ニールは、卓の上で両の手を組んだ。


"And how would you have us show it?"

「では、その本気を、どう示せと申される」


 ジュリアンのペンが止まった。上官がいま何を約したのか、一字も落とさずに残さなければならない。ペン先は、紙の上で待っていた。


 彼女は、すぐには答えなかった。


 もうカップには手を伸ばさない。膝の上で手を重ねたまま、ニールの顔を見て、ほんの少しだけ口の端を上げた。


"Let us begin, then, with your apology."

「まずは――お詫びから、伺いましょう」


 ニールは、姫君の顔を見た。


 お詫び。


 この座に入ってすぐ、自分は詫びから入ろうとした。彼女は手を上げてそれを止めた。あのとき後へ回された詫びが、いま、英国の本気を見せる最初の一つとして、卓の上に置かれていた。


 ニールは、組んだ手の上で、指を一本ずつ動かした。


 右隣で、ジュリアンが顔を上げていた。


 第二百三十話 了

【外国人が見た幕末日本――幕府と朝廷、その複雑な権力構造】


 幕末の外交を理解するうえで、重要になる問題があります。


 それは、当時日本へやって来た外国人たちが、この国の政治をどのように見ていたのかということです。


 現代の私たちは、徳川幕府が江戸で政治を担い、京都の朝廷が伝統的な権威を持っていたことを知っています。しかし、開国直後に日本と向き合った欧米外交官たちにとって、その仕組みは容易に理解できるものではありませんでした。


 江戸には将軍がいる。外国との条約交渉を行い、貿易を管理しているのも幕府である。一方で、京都には「御門(ミカド)」と呼ばれる存在がいる。


 では、本当に日本を動かしているのは誰なのか。


 この疑問こそが、開国後の外国外交官たちが向き合うことになった大きな問題でした。


 一八五八年、幕府はアメリカ、イギリス、フランスなどと修好通商条約を締結しました。


 この時、欧米諸国が外交相手として見ていたのは徳川幕府です。条約を結び、外国人を受け入れ、貿易を管理していたのは幕府だったからです。


 幕府は将軍を「日本国大君(Tycoon)」と称して交渉を進めました。外国側からすれば、実際に外交権を行使している将軍を、日本を代表する政治権力者として扱うことは自然でした。


 しかし、そこには日本独自の政治構造がありました。


 京都の朝廷です。


 外国人外交官たちは朝廷の存在を知らなかったわけではありません。ただ、当初は朝廷が持つ権威が、現実の政治にどれほど影響しているのかを十分には把握していませんでした。


 彼らが最初に理解した日本は、「幕府が統治する国」だったのです。


 その認識が変化していくきっかけとなったのが、一八六二年から一八六三年にかけて相次いだ事件でした。


 生麦事件、国内で激化する攘夷運動、そして長州藩による外国船への砲撃。


 こうした出来事を通じて、外国外交官たちは、日本国内の政治が幕府だけで動いているわけではないことを知っていきます。


 特に大きかったのが、条約をめぐる問題でした。


 幕府は外国と条約を結んでいた。しかし、その条約には京都の孝明天皇による正式な勅許がなかった。


 外国側から見ると、江戸で成立した外交約束が、日本国内で完全に承認されているわけではないという状況でした。


 さらに、朝廷の意向が諸藩の行動に影響し、外国との衝突につながっていく。


 これらの経験を重ねることで、外国人外交官たちは、日本を理解するには幕府だけでは不十分であることを認識していきました。


 初代駐日英国公使ラザフォード・オールコックは、この時代の日本を観察した代表的な外交官です。


 一八六三年に出版した『大君の都(The Capital of the Tycoon)』では、日本の政治や社会について本国へ紹介しています。


 そこに描かれた日本は、一つの権力だけで動く国家ではありませんでした。


 江戸幕府という行政権力。


 京都の朝廷という歴史的権威。


 そして、それぞれの立場で動く諸藩。


 オールコックをはじめとする外交官たちは、こうした複雑な構造を理解しようとしていました。


 もちろん、その理解が最初から完成していたわけではありません。交渉や事件を経験しながら、日本という国の仕組みを少しずつ読み解いていったのです。


 こうした変化は、その後のイギリス外交にも影響します。


 一八六五年に駐日公使となったハリー・パークスは、幕府との交渉を続けながら、薩摩や長州など国内の有力勢力とも接触を深めていきました。


 これは、イギリスが最初から倒幕を目的としていたという単純な話ではありません。


 日本国内の情勢が変化する中で、どの勢力が今後大きな影響力を持つのかを見極めようとしていたのです。


 幕府との交渉だけでは、日本全体の動きを把握できない。


 その現実が、次第にイギリス外交の姿勢を変えていきました。


 幕末日本が複雑だった理由は、外国との力関係だけではありません。


 日本そのものが、江戸幕府という政治権力と、京都の朝廷という歴史的権威、そして各地の諸藩が絡み合う多重的な政治構造を持っていたからです。


 外国人外交官たちは、条約交渉や事件を通じて、その独特な仕組みを少しずつ理解していきました。


 一八六三年前後は、世界から見た日本が「幕府だけでは説明できない国」として認識され始めた時期であり、同時に、日本自身が長く続いた政治体制の限界と向き合い始めた時代だったのです。

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― 新着の感想 ―
英語からの誤訳が今も罷り通っているのがなんとも。「君臨すれども統治」せず、ではなく「統治すれども支配せず」が今も昔も実態です。それを勘違いした天皇が2686年で一人だけ暗殺されましたが。 何故なら国…
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