第百六十七話【幕間】「江戸城編―三枚の紙」
※この回は【幕間】です。時は卯月上旬、第百六十四話より前に遡ります。
一
話は、少しばかり遡る。
薩摩の行列がまだ西の海の上にあり、江戸城の評定の間では誰ひとり勅使という言葉を口にしていなかった、卯月のはじめのことである。
江戸では走り梅雨のように、その数日というもの雨が降ったり止んだりを繰り返していた。一橋上屋敷の奥御殿の庭では、青楓の葉が水を吸ってひときわ色を濃くし、池の面に落ちる雫がひっきりなしに小さな輪を作っては、生まれたそばから消えていく。障子を細く開けておくと、湿った土の匂いが縁側を伝って座敷の奥までゆっくりと流れ込んできて、その匂いに混じって、どこか遠くの軒から落ちる水音が絶え間なく届いていた。
その座敷で、近衛糸子は同じ一行を、もう幾日も書き直している。
文机の脇には書き損じた紙が幾枚も積まれていて、一番上の一枚が風を受けるたびに端をわずかに持ち上げては、また元の位置へ静かに戻っていく。その机の中央には、書きかけの紙が一枚だけ置かれていた。。
一、一橋刑部卿慶喜殿を、将軍後見職になさるべく候。
ここまでは、半刻とかからずに書けたのである。書けたところで筆が止まり、止まったまま、糸子はもう何日もこの一行の前に座っていた。
書いているのは、勅の文案であった。
勅使が江戸へ持ち下る紙に、いったい何と記すのか。徳川慶喜を将軍後見職に据える、その条件と枠組みを定める一字一句である。誰を勅使に立てるかという段取りのほうは京の父がすでに済ませてくれていたから、中身を書くのははじめから自分の仕事だと決まっていた。
筆を持つ手そのものは、少しも疲れていない。疲労を感じるのは、一つの事象を何度も違う角度から検分し直す、その頭の使い方のほうであった。
糸子は筆を置き、しばらく天井の板目を見上げた。
島津久光が欲しがっているのは、慶喜を後見職に据えるという結果である。あの人はそれさえ手に入れば満足するであろうし、その手柄を天下に向かって存分に誇るであろう。むしろ誇ってもらったほうが、こちらにはよほど都合がよい。
「わたくしが欲しいのは、結果ではありませぬ」
誰に言うでもなく、糸子は声に出してみた。
結果に付いてくる条件のほうが、本体なのである。同じ「慶喜を後見職に」であっても、その職にどこまでの権限があり、どこまでの期限があり、誰の意によって据えられたことになるのか──それを定めるわずか数行が、この先十年の国の形を決めてしまう。
庭で、雨脚がわずかに強くなった。
池の面の輪が急に数を増して、それまで見えていた鯉の背が、白く濁った水の下へ沈んでいった。
二
糸子が水無瀬実光を呼んだのは、その日の昼下がりであった。
実光は濡れた沓脱ぎのあたりで足袋を確かめてから座敷へ上がり、御簾の手前に膝を揃えると、いつもの通りに深く頭を下げた。線の細い、品のよい顔立ちをした若い公家である。京の御所の空気をそのまま身に纏っているような佇まいは、江戸へ下って何年経っても、少しも崩れる気配がなかった。
「お呼びと承りました」
「実光殿。恐れ入りまするが、一つ、見ていただきとうございまする」
糸子は書きかけの紙を葵に持たせ、御簾の下から差し出させた。
実光は両手でそれを受け取り、膝の上でゆっくりと広げてから、たった一行しか書かれていない紙面へ目を落とした。
その姿勢のまま、この男は思いのほか長く動かなかった。
やがて紙を畳の上へ置き直すと、実光は顔を上げぬまま、静かに口をひらいた。
「……姫様。恐れながら、この一行、勅には載りませぬ」
「どこが、いけませぬか」
「『なさるべく候』にござります」
実光の指が、その文字のあたりでわずかに止まった。
「これは、願いの形にござります。何とぞそうしていただきたい、と申しておるのと同じでござりますれば……帝は、願われませぬ」
糸子は、御簾の内でしばらく黙っていた。
願いではいけないというのは、頭では分かる。では命じてしまえばよいのか…というと、そちらはそちらで幕府が意地になるということも、これまで何度も考え抜いた末に分かっていた。
「では、こういたしましょう」
糸子は新しい紙を引き寄せ、慶喜を後見職に据えるという一事の下へ、その理由を書き添えてみた。上様が長らく御政務を執られぬ状況にあり、それゆえに後見の職が要る──国のためであるという、誰にも文句のつけようのない理屈である。
その紙もまた、御簾の下をくぐった。
「これも、載りませぬ」
今度の返答は、先ほどよりも早かった。
「なにゆえでござりましょう」
「理由を添えるということは、相手を説くということにござります。説く者は、説かれる者より下におります」
実光は、そこでようやく顔を上げた。
「帝が幕府をお説きになるという形は、朝廷の紙には書けませぬ。書けば、その一枚は勅ではなくなり、ただの願書になり果てまする」
理由は書けない。
糸子は胸のうちで一つを消した。消しながら、そのぶんだけこの紙の書きようが痩せていくのを感じていた。
「……ならば、期限を書きましょう。上様がお癒えになるまで、と」
「その期限は、日にちにござりまするか」
「いいえ。日にちは書けませぬ」
「では、何をもって切れると定められまするか」
「上様の御平癒をもって」
実光は少しだけ考えてから、これは…と小さく息を吐いた。
「それでござりますれば、あるいは載りましょう。なれど、日を切ってはなりませぬ。三年とも五年とも、書いてはなりませぬ」
「なにゆえ」
「帝のお言葉に、期限はござりませぬゆえ」
糸子は、それも消した。
次に糸子が試みたのは、数であった。後見の職に何人を付け、どの役所を通し、どの筋から人を出すか──実務の骨組みを、勅の中へ書き込んでしまおうとしたのである。
その紙は、実光が受け取るより先に止められた。
「姫様。数は、勅には載りませぬ」
「一つも、でございますか」
「そうでござります。数を書けば、その紙は実務の紙になりまする。実務の紙は、勘定所か奥右筆の書くものにござりますれば」
消せるものが、一つずつ消えていく。
願いは書けない。理由は書けない。数も書けない。日を切ることもできない。糸子は御簾の内で、自分の手のなかから紙が抜き取られていくような、妙に手応えのない感覚を味わっていた。
「では、どこに書けばよろしいのです」
その問いに、実光は答えられなかった。
答えられぬまま、雨の音を数えるほどの間が過ぎた。庭のほうで青楓の枝が水の重みに耐えかねて一度だけ大きく撓み、溜まっていた雫を池の面へまとめて落とした。
実光は、その音のほうを見なかった。畳の目に落とした視線をそのままにして、しばらくしてから、ようやくこう言った。
「……勅は、書けることの少ない紙にござります」
その一言が、この日の座敷にいちばん長く残った。
三
翌朝も、雨であった。
糸子は明るくなるのを待たずに文机へ向かい、まったく白い紙を新しく引き寄せていた。
昨日までのやり方が間違っていたのだと、寝ているあいだにはっきりしていたのである。書きたいことを書いて、それを勅の形へ寄せていこうとするから収まらない。順序が逆であって、まず載る形だけを並べ、載らぬものは端から外へ出してしまえばよかった。
願いは捨てた。理由は条の外へ出した。数と期日は、はじめから書かないものとした。
そうして残った骨だけを、糸子は淡々と組み上げていった。
慶喜の条は、ほどなく形になった。後見職に据えるという一事と、その任が上様の御平癒までであるという一句、そして御宗家の跡目には及ばぬという一句。三つを並べただけの、そっけないほど短い条である。
春嶽の条も、それに続いた。政を総べ裁く職に任ずるとだけ書いて、その職の名は幕府において定めよ、と結んだ。大老という語は、一字も使わなかった。
二つの条を並べて眺めているうちに、糸子はふと筆を止めた。
止めてから、自分が何につまずいたのかを確かめるのに、しばらくかかった。
(……この二人は、何を決めるのでしょう)
後見職という座を作った。総裁職という座も作った。だが、その二人が何を、どこで、どういう手続きで決めるのかが、この紙のどこにも書かれていない。座を二つ据えたところで、決める場所がなければ、その二人はただ江戸城のなかで肩書きを持っているだけの人になってしまう。
いちばん先に据えるべきものを、いちばん後まで忘れていたのだと気づいて、糸子は少し可笑しくなった。
新しい一枚の、いちばん上へ筆を下ろす。
政のことは先例のごとく将軍に委ねる、と書いた。書いてから、その下へ、国事の重きものは江戸城に諸藩を召して議し、その議を経て奏せよ、と続けた。
最も重い条が、いちばん最後に生まれた。
*
昼を過ぎてから、実光がまた呼ばれた。
三条だけになった紙を受け取ると、この男は一度目を伏せてから、頭のなかで音にするようにして、ゆっくりと通読した。
一度読み終えて、また頭へ戻る。二度目も同じ速さで読み、三度目に入ったところで、紙の上を辿っていた指が、ある一句の手前でぴたりと止まった。
「……江戸城にて」
「はい」
「京では、ないのでござりまするな」
「京では、ござりませぬ」
実光は、しばらく畳の目を見ていた。
この男は物を考えるとき、視線を下へ落とす癖がある。落としたまま瞬きの数だけが増えていって、やがて息を吸う音が一つ、御簾の外で小さく鳴った。
「京が政の場となれば、諸藩が上りましょう。上れば、志士が集まりましょう。そうなれば……」
そこで、実光は言葉を止めた。
止めた先にあるのは、自分の父のいる場所であった。禁裏の周囲に住まい、刀も持たず、家格と作法だけを頼りに千年を生き延びてきた者たちの町である。そこへ兵と血気と正義とが同時に流れ込んだとき、何が起きるかを想像するのに、この男は有職の知識をまったく必要としなかった。
「……公家が、脅されまするな」
「はい」
実光は、それ以上その話を続けなかった。
続けずに、紙を膝の上へ戻して、また別のところを指でなぞりはじめた。
「姫様。この三条は、たしかに勅の形をしておりまする。……なれど、細目がまるでござりませぬ」
「はい」
「参勤の員数はいかがなさりまするか。勘定所の目録は。異国よりの兵器の買い付けは。──いずれも、この紙には一字も載っておりませぬ」
「載りませぬゆえ」
糸子の返答は、あっさりしたものであった。
載らないことは、昨日のうちに全部教えてもらった。教えてもらったからこそ、今日の紙にはそれが一つも書かれていないのである。
実光は、そこで初めて困った顔をした。困りながら、この男は自分でも思いがけないほど率直な問いを口にしていた。
「……何なら、書けるのでござりますか」
御簾の内が、静かになった。
庭では雨がいったん止んで、軒先から落ちる雫の間隔が、少しずつ長くなりはじめている。その音の隙間が広がっていくのを聞きながら、糸子は膝の上で指を組んだり解いたりしていた。
やがて、その手が止まった。
「実光殿。一つ、お伺いしてもよろしゅうございますか」
「なんなりと」
「勅使は、勅だけを持って下られるのでござりますか。ほかに、何もお持ちにならぬのですか?」
実光の目が、わずかに大きくなった。
「……覚、にござりまするか」
「はい」
勅使が下向する折、勅そのもののほかに、朝廷の意向を細かく書き付けた覚書の類を携行するのは、珍しいことではない。だが、それは勅ではなかった。勅ではないから重みも軽く、だからこそ、書けることが桁違いに多い。
二枚目が、そこで生まれた。
「姫様」
実光は、めずらしく声を強くした。
「申し上げておきますが、覚は、勅ではござりませぬ。幕府は必ず、こう申しましょう。──覚であれば、拘束はござるまい…と」
糸子は、少しだけ笑い、少しだけ悪い顔をした。
「そう申していただけましたら、しめたものでございまする」
四
覚を書きはじめてみると、筆はよく進んだ。
勅の三条を書くのに幾日もかかったのが嘘のように、参勤の員数のこと、江戸屋敷の御用金のこと、減じた分を海防へ振り替えること、その明細を毎年幕府へ報せること──思いつく端から条になっていく。書けることが多いというのは、これほど楽なものかと、糸子は少し呆れるほどであった。
その筆が、また止まった。
止めたのは、自分で書いた勅の第一条であった。国事の重きものは江戸城に諸藩を召して議す、という、あの一句である。
(誰が召されるのか)
(何人集まれば、決まったことになるのか)
(同じ数に割れたら、誰が決めるのか)
(決まったことを、誰が書き留めるのか)
問いは、湧きはじめると止まらなかった。
議の場を作るということは、議の作法を作るということである。誰が何をどういう順序で言い、どう数え、どう記すか──それが定まっていない場所に人を集めれば、集まった者は必ず声の大きさで勝負をはじめる。声の大きさで勝負をする場所を、糸子はこの国のどこにも作りたくなかった。
だが、作法は勅には入らない。覚にも、細かすぎて入らない。
糸子は筆の軸を唇のあたりで止めたまま、しばらく動かなかった。
それから、いつもと変わらぬ調子でこう言った。
「では幕府に、作っていただきましょう」
「は?」
「議の作法にござりますれば、議を開く側がお定めになるのが筋でございましょう」
実光は、なるほど…と言いかけて、途中で口を閉じた。
筋は通っている。通りすぎているほどである。朝廷が議の作法まで定めれば、それは幕政への容喙になるが、幕府が自分の城で開く議の作法を自分で決めるというのは、誰も文句のつけようがない。
通っているのだが、この男の頭のなかで、何かが一つだけ収まりきらなかった。
「……姫様。それでは、中身は誰がお決めになるのでござりますか」
糸子は答えなかった。
答えずに、文机の端から三枚目の紙を引き寄せて、そこへ筆を入れた。
実光は、それを見ていた。
見ていて、この御方がいま何をしておられるのかを理解するまでに、しばらくかかった。理解した瞬間、この男は膝の上に置いた手を、無意識のうちにきつく握り込んでいた。
(……幕府がお作りになるものを、ここでお書きになっておられる)
筆は止まらなかった。座の性、列座の資格、議長の権限、定足、決の取り方、議題の触れ、下調べ、発言の作法──湧いて出てくるというより、はじめからどこかに書かれてあったものを写しているような速さであった。
実光は声をかけそびれたまま、ただ動く筆を見ていた。
有職故実というものは、要するに前例の学問である。かつてこう行われたゆえに、今度もこう行うべしと説くのが、この男が父から受け継いだ役割であった。前例のないところへ新しい作法を拵えるという行いは、本来ならば有職の対極にあって、口にすることさえ憚られる。
それを、この御方は前例のないまま書いておられる。
しかも、書かれていくものの一つ一つが、なぜか有職の理屈で説明のつく形をしていた。御前に准ずるという言い方も、家格を論ぜぬという言い方も、こちらが後から典拠を探し当てられる場所へ、あらかじめ足を置いてある。偶然でこうはならない。かといって、この御方が有職を学ばれたという話も聞いたことがなかった。
(……順序が、逆なのではあるまいか)
実光の胸のうちを、その一行がよぎった。典拠があるから正しいのではなく、正しいものを書けば典拠のほうが後から追いついてくる──そういう考え方があり得るのだとすれば、自分が二十年かけて覚えた作法は、いったい何であったのか。
やがて糸子は筆を置き、二枚目の覚のほうへ戻って、その第六条にたった一行だけを書き足した。
一、諸藩の議のことは、別に定むべき旨、お加えくださりませ。
それだけである。
議の作法は別に定める──そう書いておけば、幕府は必ず、その「別に定めるもの」を自分たちの手で作らねばならなくなる。作らねばならなくなった者は、必ず、作り方を知っている者を探すのである。
最後に糸子は、三枚目の上書きへ筆を下ろした。
『勅にはお載せくださりますな』
父への指図である。送りはするが、載せてはならない。何を勅とし、何を覚に加え、何を文箱の底へ納めるか──その仕分けは、京の座敷にいるあの人に委ねるほかなかった。
五
その日の夜は、灯が細かった。
油を惜しんでいるわけではなく、糸子が芯を短くしたまま気にも留めずにいるからである。書き損じた紙が畳の上に幾枚も散らばり、そのうちの何枚かは風で寄せ集まって、部屋の隅に小さな吹き溜まりを作っていた。
葵が茶を替えに入ってきたのは、そんな刻限であった。
葵は、部屋へ入るときの音をほとんど立てない。障子を引く速さも、膝を送る幅も、いつも同じである。糸子はその静けさを、江戸へ来てからずっと当たり前のものとして受け取ってきた。
持ってきた湯呑みを置き、それから、畳に散った紙を踏まぬように少しだけ膝の向きを変えた。
紙に書かれているものを、この侍女は読まない。読めたところで、たぶん分からない。ただ、その紙が何枚積み上がったかということと、それが何日ぶんの夜であるかということは、誰よりも正確に分かっていた。
三日前は、朝餉に箸をつけられた。二日前は、汁だけを召し上がった。昨日は、膳をそのまま下げた。葵が数えているのはそういうことばかりであって、政の話でも紙の話でもない。ただ、その数え方でいくと、今夜がいちばん深いところにいるらしいということは分かるのである。
姫様は、こういうときに愚痴を仰せにならない。疲れたとも、難しいとも、誰かのせいだとも仰せにならず、ただ紙を替えて、また書きはじめられる。葵はその横顔を、江戸へ下ってからずっと見てきた。そして、いつも同じことを思う。
──この御方は、休み方だけを知らない。
だから、こちらが替えるのである。茶を替え、灯を替え、火鉢の炭を替える。それしかできぬけれども、それをやめてしまえば、この部屋には替わるものが何もなくなってしまう。
「姫様。この紙は、何になるのでござりますか」
糸子は、少し考えてから答えた。
「……人が、死なずに済む仕組みでございます」
葵は、それ以上訊かなかった。
訊かずに、灯の芯を切って、少しだけ明るくしてから出ていった。
部屋がわずかに明るくなったぶん、畳の目や、散らばった紙の端の折れ具合までが、はっきりと見えるようになった。糸子は湯呑みを両手で包んだまま、しばらくその明るさのなかに座っていた。
茶は、ちょうどよい熱さであった。
一口飲んで、糸子は自分の肩がひどく凝り固まっていたことに、そこで初めて気がついた。首を回すたびに小さな音が鳴り、その音の間の抜けた感じが、なんだか可笑しかった。
(……根を詰めすぎでございますね)
湯呑みを両手で持ったまま、糸子はしばらく何も考えないでいた。
この四年ばかり、ほとんどやったことのない過ごし方であった。庭では雨がまた落ちはじめていて、池の面を打つ音と、屋根瓦を伝って落ちる音と、葉の上で跳ねる音とが、それぞれ違う高さで重なっている。江戸の雨は京の雨より粒が太いと、いつだったか実光が言っていた。
それを思い出したところで、糸子は湯呑みを置いた。
六
残っているのは、あと一句であった。
勅の三条は書けた。覚の七条も書けた。式目の十五条も、書くべきことはあらかた書き終えている。それでもこの紙が終わらないのは、いちばん最後に置く数行が、まだどうしても収まらないからであった。
書きたいのは、報告である。
諸藩の会計も、幕府の勘定所の目録も、集めさせるだけでは意味がない。集めたものを朝廷へ上げさせる、その一手がなければ、この三枚は絵に描いた餅で終わる。
糸子がはじめに書いたのは、こういう一行であった。
『年に一度、書付をもって奏し申すべく候』
書いた瞬間に、これは駄目だと分かった。
『年に一度』というのは数である。数は勅には載らないと、実光にさんざん教えられたばかりであった。
数を落として、義務だけを残してみる。書付をもって奏すべし──今度は数がない代わりに、命令の匂いが濃くなりすぎた。命じられたと受け取った幕府が何をするかを、糸子はもう何度も頭のなかで見ている。まず突っぱねて、それから中身を考えるのである。たとえその中身が幕府自身のためであっても、順序は変わらない。
ならばと、語尾を柔らかくしてみた。
柔らかくしたとたん、その一行は、後からいくらでも反故にできる紙になった。都合が悪くなれば、あれは願いであって命ではなかった、と言い逃れられてしまう。
強く書けば意地になり、弱く書けば反故にされる。
その隙間は、指一本ほどの幅もない。
糸子は書き損じを一枚、また一枚と脇へ積み上げながら、その狭い隙間を探し続けた。夜が更けて、雨がまた落ちはじめ、庭の池の面がざわざわと鳴りはじめても、まだ探していた。
*
筆が止まったのは、灯の油がそろそろ尽きようという頃であった。
止まったまま、糸子は、書いたばかりの一行を見ていた。
命じてはいない。義務も書いていない。数もない。
ただ、聞きたいと言っているだけである。
(……これなら、断れませぬ)
断る余地がないのではない。そもそも、断るという行いが成り立たないのだ。
「聞きたい」と望む者に、「聞かせぬ」と答える道は初めから存在しない。「聞かせぬ」と突っぱねるには、相手の言葉を『命令』だと受け取る必要があるが、そう受け取った瞬間、言葉を勝手に捻じ曲げた幕府の側が無礼を働くことになるからだ。
糸子は、しばらくその一行を眺めていた。
今度は、いくら眺めても違和感がなかった。
七
翌朝は、雨が上がっていた。
庭の青楓は前夜までの水をまだ葉の裏に抱えていて、風が渡るたびに、そのぶんだけ重たげに揺れている。池の面は油を流したように静かで、そこへ朝の光がまっすぐに落ちていた。
糸子は夜のうちに清書を終えた三枚を並べ、御簾の下から実光へ差し出させた。
「読んでくださりませ。書けぬところがござりましたら、遠慮なく仰せくださいまし」
実光は一礼して、一枚目を手に取った。
勅
一、政のことは、先例のごとく将軍に委ぬ。
国事の重きものは、江戸城に諸藩を召して議し、その議を経て奏せよ。
一、一橋刑部卿慶喜を、将軍後見職と為す。
その任、将軍家の御平癒あるまでとす。後見の職、御宗家の跡目に及ばず。
一、越前中納言慶永を、政を総べ裁く職に任ず。
職の名は、幕府において定めよ。
右のこと、幕府において宜しく計らうべし。
朕、その計らいを聞くことを楽しみとす。
読み終えて、実光が顔を上げた。
「……これは、幕府が喜びましょうな」
「そうでしょうか」
「政を将軍にお任せなさると、勅に書いてござります。これほど有難い勅は、ここ十年ござりませぬ」
実光の口調には、皮肉の色がまるでなかった。
この十年、朝廷から江戸へ下った紙といえば、条約のことで叱り、人事のことで難じ、攘夷のことで急かすものばかりであった。そこへ、政は将軍に委ねるという一句が正面から書かれた勅が届く。幕閣は安堵するであろうし、安堵したついでに、あとの二条も呑むであろう。
「後見職の条も、よろしゅうござります。期限を切っておられるようで、日にちは一つも書いておられませぬ。跡目に及ばずという一句も、これは幕府の側が言い出したがっていたことにござりましょう」
「はい」
「越前様の条も、名を幕府に付けさせるというのが妙にござりますな。付けた名は、付けた者のものになりまする」
実光は、末の二行に何も言わなかった。
言うほどのものではなかったからである。
*
二枚目を取り上げると、実光の指の動きが少し変わった。
勅よりも紙が厚く、字数が多い。この男は覚という書き物の扱いを知っていたから、はじめから細かく読むつもりで肩の力を抜いていた。
御沙汰の覚
一、参勤交代は、これまでの通りとす。ただし供の員数に上限を定め、江戸屋敷の御用金・手伝普請を減ずべし。
一、減じたる分は、海防の備えに充つべし。各藩、毎年その明細を幕府へ報せ、幕府はこれを取りまとめて朝廷へ奏すべし。
「……姫様。参勤を、緩めてはおられませぬな」
「緩めませぬ」
「諸藩は、緩めよと申しておりましょうに」
「諸藩が申しておられるのは、金が掛かりすぎるということでございます。江戸におることそのものが厭だと申された御方は、ほとんどおられませぬ」
実光は、そこで少し考えた。
金だけを軽くして、江戸に置くことは変えない。不満の中身だけを的確に抜き取って、仕組みそのものは残す。言われてみれば当たり前のようでいて、この二十年、誰もそう書かなかった。
「残った金で、何をお買いになるとお思いですか」
実光は、すぐには答えられなかった。
答えられぬまま、二条目の「海防の備えに充つべし」という一句を、もう一度目でなぞった。
「……鉄砲、にござりまするか」
「はい」
一、海防の入用については、幕府もまた、その入りと出を年に一度、奏すべし。書式は改むるに及ばず、勘定所年々の目録の写しをもって足れりとす。
「これは……幕府も出すのでござりますか」
「はい」
「なれど、書式は改めずともよいと」
「勘定所には、毎年お作りになっている目録がござります。それを写していただくだけでございます」
実光は、その条をもう一度読み返した。
新しい様式を求めれば、幕府は必ず渋る。渋るというより、作る手間を口実にして先延ばしにする。ところがこの条は、いま作っているものをそのまま写せと言っているだけであった。勘定を預かる者ならば、これは断る理由が一つも見当たらない。すぐに、それなら出せまする、と答えるであろう。
答えたあとのことを、実光はそこで考えた。
「……一年目は、ただの紙にござります。二年目も。──三年目に、どうなりまするか」
「三年ぶんの推移が、朝廷の手元に揃いまする」
「集めるのは幕府にござりましょう」
「集めるのは幕府でございます」
実光は、そこで長く黙った。
この男が黙ったのは、驚いたからではない。それよりも先に、頭のなかで数字が三年ぶん並んでしまったからである。どの藩がどれだけ海防に注ぎ込み、幕府の勘定がどう痩せていくか──それが一枚の紙の上で年ごとに並んだとき、それを読める者がどこにいるかを、この男は考えた。
集める側は、集めることに追われる。書式を揃え、遅れた藩を督促し、束ねて写しを取る。その作業に埋もれた者に、三年ぶんを横に並べて眺める暇はない。
「……読めるのは、こちらだけにござりますな」
糸子は、答えなかった。
そのことが、答えであった。
一、異国との交渉は、幕府一手にこれを扱う。諸藩、異国と直に事を構うべからず。もし事あらば、その始末はその藩の負うところとす。
実光は、その条を読んで、うなずいただけであった。
異国のことは幕府が一手に扱う──至極まっとうな条である。まっとうすぎて、読み返す必要も感じなかった。
一、異国よりの兵器買い入れは、値を一つに定むるため、定めたる会所を通すべし。
一、諸藩の議のことは、別に公議式目をもって定む。
なお、官職なき者も国事の議に加わり得ることは、すでに江戸城において行われおる通りなれば、あらためて論ずるに及ばず。
一、禁裏の警衛は、諸藩の当番をもって之に充つ。率兵の上洛は、朝廷の召しによる場合を除き、これを禁ず。
「……最後の条は」
「率兵の上洛を、禁じておきまする」
「これは、薩摩を縛りましょうな」
「薩摩を、ではございませぬ」
糸子は、御簾の内で湯呑みを置いた。
「此度うまく参りましたならば、他の御家は必ず真似をなさいます。兵を率いて京へ上れば朝廷が動くのだと、そう覚えてしまわれる。覚える前に、道を閉じておきとうございます」
「……なるほど」
実光は覚を膝の上へ置き、そこでいったん息をついた。
七条のどれもが、読めば読むほど幕府に都合のよいことばかり書いてあった。参勤は緩めず、外交は幕府の一手とし、諸藩の会計は幕府が取りまとめる。それでいて、その一つ一つが幕府の手を煩わせる方向にしか動いていないことに、この男はまだ気づいていない。
*
三枚目を手に取ったとき、実光の動きが止まった。
上書きに、一行だけ書かれていたからである。
「勅にはお載せくださりますな……」
「はい」
「載せぬものを、お送りになるのでござりますか」
「父上に、知っておいていただかねばなりませぬゆえ」
実光は、しばらくその一行を見ていた。
載せるなと書いた紙を送るという行いが、何を意味するのかを測りかねていたのである。測りかねたまま、この男は紙をひらいた。
公議式目
一、この議は、御門の召しによりて開く。ゆえに、議の座は御前に准ずるものとす。
一、議に列するは、異国と相対したる経験を有する藩とす。
石高・家格をもって、これを定むるにあらず。
議の座においては家格を論ぜず。いずれも御門の御前に列する臣なればなり。
なお、政を総べ裁く職にある者は、幕府の側に列するものとす。
「……家格を論ぜず、と」
「御門様の御前にては、いずれも臣にござりましょう」
実光は、そこで初めて筆を持ちたくなった。
これは有職の理屈である。しかも、反論の余地のない理屈であった。御前において臣の格を論じないというのは、千年のあいだ繰り返されてきた作法そのものであって、これを否と言うには、朝廷の儀の根本を否まねばならない。
姫様は有職を御存じない。御存じないのに、有職でしか通せぬ場所へ、正しく手を伸ばしておられる。
一、議長は将軍後見職これを務む。議長は議を進むるを務めとし、議題を退くる権はこれなし。ただし、議の場に諮るに堪えざる旨、議長これを申し述ぶることを得。
議長は議に加わらず。可否相半ばするときのみ、これを裁す。
一、列座三家をもって議は成る。
召しに応ぜざる者、また座を退きたる者は、議の趣に異存なきものとす。
「……来ぬ者を、賛成と数えるのでござりますか」
「はい」
「それは、些か乱暴では」
「そうでしょうか?」
糸子は、筆を置いた。
「将軍様は、この幾年、何ひとつお答えになっておられませぬ。それでも御政務は回っております。お答えが返らぬことを、御異存なしと解しておられるからでございます」
実光の顔から、表情が抜けた。
「……幕府が、みずから」
「はい。幕府がお作りになった理屈にござります」
「では、これに異を唱えれば」
「この幾年の御政務を、まるごと否といたすことになりましょう」
実光は、そこで返す言葉を持たなかった。
一、議は、列座の過半をもって定む。
一、議題は、二十日前までに各家へ触れ知らすべし。届かざりしときは、その議、成らず。
ただし急を要するものは、当日これを下すことあり。
議に先立ちて相談したることあらば、議の初めにこれを申し述ぶべし。
一、議題のうち細かき詮議を要するものは、あらかじめ各家の重臣をもって下調べの寄合を設け、そこに諮りたる後、座に上すべし。
一、物申さんとする者は、まず議長の許しを請うべし。許しなくして発すべからず。
人の申すあいだ、これを妨ぐる声を発すべからず。褒むるも謗るも、同じ。
一、議の進めようにつき申し立てんとする者は、他に一家以上の賛同を得たる上、これを申し出づべし。一家のみの申し立ては、取り上げず。
一、一度の召しを一会期とす。その会期のうちに決したる事、重ねて議に上すべからず。
実光は、その五条を黙って読み進めた。
どれも、座を整えるためのごく当たり前の作法にしか見えなかったからである。順序を定め、割り込みを禁じ、根回しを申告させ、蒸し返しを封じる。有職を学んだ者の目には、むしろ地味に映るほどであった。
一、議の書付は、朝廷・幕府・諸藩、おのおの書役を出してこれを記す。
三通相違なきを確かめて後、議決と為す。もし相違あらば、天朝御用掛これを裁し、裁したる文言をもって正とす。
書付の写しは、所見を付さず、そのまま朝廷へ納むべし。
「一言も申されぬ御方が、決まったことの文言をお決めになる」
「はい」
実光は、その条をもう一度、頭から読み直した。
どこにも無理がなかった。三つの書付を突き合わせるのは、理に適っている。食い違えば誰かが裁かねばならぬのも、道理である。三家が別々に書いた記録が一字一句まで一致するなどということは、この世に起こり得ない。ならば裁定は必ず要り、裁定を下す者が文言を決める。
正しいことしか書いていないのに、行き着く先が一つしかない。
一、議定りたる事は、後日、書付をもって諸藩へ触れ出すべし。
ただし、議のあいだ、これを外へ漏らすべからず。
一、議の座に入るは、大小ともに預くべし。供の者、議場の廊に立つべからず。
一、座を乱す者あらば、
一、議長これを戒む。
二、改めざるときは、その日の座を退かしむ。
三、退きたる家は、その日の決を有せず。
四、たびかさなるときは、次の召しより、その家の座を除く。
五、なお甚だしきときは、朝廷へ言上す。
一、この式目を改むるは、列座すべての諾を要す。
「姫様。この最後の一条にござりますが」
「はい」
「四家と幕府の御思惑が、すべて揃うことは」
「ござりますまい」
「では、この式目は」
「二度と、変わりませぬ」
実光は、その紙を膝の上へ静かに置いた。
全会一致を求めるという条は、この上なく公正に見える。誰も反対できない。反対する者は、自分だけの都合で決まりを変えたいのだと言われてしまうからである。反対できぬがゆえに、最初に書いた者が、永久に勝ちつづける。
*
「姫様。……これは、いつお使いになるのでござりますか」
「使いませぬ。これは、幕府がお作りになるものにござります」
実光には、その言葉の意味が分からなかった。
いま自分の膝の上にあるこの紙は、間違いなく、この座敷で書かれたものである。それを幕府が作るとは、どういうことなのか。
「議の場ができますれば、作法が要りましょう」
糸子の声は、いつもと同じ調子であった。
「作法が要れば、幕府はお困りになります。二百六十年、そのようなものをお作りになったことがござりませぬゆえ。困っておられるところへ、有職の御方が『申し上げたきことがござります』と仰せになれば──」
そこまで聞いて、実光はようやく理解した。
「……わたくしが、書いたことになりまするか」
「はい」
*
実光の背を、一年前と同じものが走り抜けた。
あのときは、まだ届いてもいない父の書状を、この御方が言い当てた。京から文が来ると告げられ、その通りに来て、その中身まで合っていた。先を読まれているのだと、あのときは思った。
今は、違う。
この御方は、先を読んでいるのではない。まだ起きていないことを、いま、紙の上で終わらせておられるのだ。
議の場はまだない。議長も、列座の四家も、書役の三通も、この世のどこにも存在していない。それでも、その場で誰が何を決められるのかは、もうこの膝の上で決まっている。
起きるのは、これからである。
だが中身は、もう決まっている。
「……この実光」
声が、思ったより低く出た。
「姫様の絵図の、一筆たりとも、狂わせはいたしませぬ」
一年前に一度、口にした言葉であった。
同じ言葉を、今度は震えずに言えた。
そう言い切れてしまった自分自身と、そこまで人を呑み込む目の前の絵図が、実光には恐ろしかった。
八
実光が退がったあと、糸子はもう一度、一枚目を手元へ引き寄せた。
三条は、これでよい。末尾の二行も、昨夜のうちに収まった。それでも、まだ一つだけ書き足したいものが残っていた。
糸子は第一条の下へ、静かに筆を下ろした。
一、右は、当面の間の定めにござります。
書き終えたところへ、忘れ物を取りに戻った実光が、廊下から声をかけてきた。糸子が招き入れて紙を見せると、この男は一目見るなり、困ったような顔をした。
「姫様。それは、載りませぬ」
「存じております」
「……存じておられて、お書きになるのですか」
「はい」
糸子は、筆を置いてから、こう答えた。
「書かねば、消えたことにもなりませぬゆえ」
実光は、その意味を測りかねたまま、今度こそ本当に退がっていった。
*
一人になってから、糸子はその一行をしばらく眺めていた。
政のことは先例のごとく将軍に委ぬ──あの一条は、幕府にとって何よりの安堵になる。安堵させるために書いたのだから、それでよい。だが、あの一句を永の約束として置いてしまえば、いつか幕府から政を返してもらう日が来たとき、こちらは自分の書いた紙に足を取られることになる。
当面の間である、と書き添えておきたかった。
書けば削られると分かっていて、それでも書いた。
(父上なら、消してくださる)
そのうえで、なぜそうしたのかを書いて、よこしてくださるだろう。
それは問いであった。
娘から父への、たった一行の問いであった。江戸から京までの十日ぶんの距離を隔てて、この一行だけが、政の話ではないものとして父の手に届く。
*
三枚を重ねて巻き、封をして、上書きを整える。
巻いてしまうと、思ったより厚かった。指の腹で押さえてみると、紙の重なりが確かな抵抗を返してくる。
(……父上、驚かれるでしょうね)
驚いて、それから読むだろう。読んで、一枚目だけを勅になさるだろう。二枚目は勅使の荷に加え、三枚目は文箱にお納めになるはずである。
仕分けの指図は、書かなかった。
父上ならば、必ずお分かりになるだろう。
「あとはお任せいたしまする。父上……」
糸子は封じた文を膝の上に置き、雨上がりの軒からまだ落ちつづけている雫の音を聞きながら、しばらくそうしていた。
悪くない気分であった。
自分の描いた絵図が、遠く離れた京で形になっていく。江戸にいて待つばかりというのは退屈ではあるが、そういう身でいられるということは、全てがうまく回っているという証しでもある。
*
畳の上には、書き損じた紙が、まだ幾枚も散らばったままであった。
葵が朝に片づけるだろう。片づけられて、燃されて、それで終わりである。
誰も読まぬ紙が、いちばん多く積み上がった夜であった。
第百六十七話 了
最後まで読んでいただきありがとうございました.。
今回のお話は、第百五十八話「京洛布陣編―抑える者、煽る者」の三の場面を、まるごと一話に膨らませたものです。数行で流したあの雨の日に、実際には三枚の紙が書かれておりました。
なお、幕間はこれで終了です。明日からは本編、将軍後見編がスタートします。
引き続き、よろしくお願いいたします m(_ _)m




