第 97 章 厳しい決断
翌日、リリーはマイケルを招集して会議を開いた。
カーター・エンタープライゼスの今後の進むべき道を、これ以上ないように一度で決断しなければならなかった。
ずっと妥協を重ねながら経営を続けるわけにはいかない。
自分の理念を貫き通すか、それとも自分の納得できない方向へ会社を流させるか、どちらかしかない。
マイケルがオフィスに到着した。
いつもの自信に満ちた雰囲気は消え、焦りばかりが目立っていた。
リリーが決断を迷い続けていることは知っており、この堂々巡りにもううんざりしているのが明らかだった。
「ずっと考え続けてきたわ」
リリーは真っ直ぐ彼の目を見て切り出した。
「そして、決断を下した」
マイケルは眉を上げ、興味を覗かせた。
「聞かせてくれ」
「効率のために、この会社の基盤を捨てるつもりはない」
リリーは毅然と言った。
「成長や変化が必要なのは理解している。だが企業価値観だけは妥協しない。カーター社が唯一無二の存在である理由を、失わせるわけにはいかないの」
マイケルは一瞬黙り込み、彼女の固い決意に驚きを隠せなかった。
言葉を発しようと口を開いたが、慎重に言葉を選ぶようにためらった。
「その条件では経営に携われません」
彼はゆっくり言った。
「利益と拡張性を最優先にしなければ、競争力を保つために必要な成長は到底達成できない」
リリーは少しもひるまず、彼の視線を受け止めた。
「なら、ここまでということね。利益のために、自分の会社の文化を犠牲にするつもりはないわ」
マイケルの表情は曇ったが、ゆっくりと頷いた。
「いいだろう。それが君の選択なら、私は留まらない。だが後悔することになるだろう」
そう言い残すと、彼は部屋を出て行った。
リリーは自分の決断の重みを背負い、一人その場に立ち尽くした。
その夜遅く、アパートへ帰る道中でスマホが震えた。
ネイサンからのメッセージだ。
「君を誇りに思うよ」
数日ぶりに、安堵感がリリーの心に押し寄せた。
誰のためでもなく、自分自身のため、そして必死に築き上げてきた会社のために、正しい選択をしたのだ。
柔らかく微笑み、返信を打ち込んだ。
「ありがとう。その言葉が聞けて救われたわ」
スマホを置くと、リリーは長い間ぶりに、再び自分自身を信じ始めていることに気づいた。




