第 142 章 新たな歩み方
ネイサンと心を交わす話し合いを経て、リリーは立ち止まり、自分の優先順位を見つめ直した。これまでのペースを続けていくことはもう不可能だと、はっきり分かった。カーター企業への情熱は揺るぎないものの、ネイサンの言葉が彼女の目を覚まさせた。仕事とプライベートの両立を学ばなければ、恋人関係を失うだけでなく、いつの間にか自分自身まで見失ってしまう危険があった。
その後数週間は、変化に満ちた日々となった。リリーは業務の負担を和らげるため、新たな方針をいくつか導入した。サラやチームの上級メンバーに業務を大幅に委任し、日常の運営を彼らの裁量に任せるようにした。長い間ずっと感じ続けてきた肩の重圧が、ようやく和らぎ始めた。
また、自分自身のため、そしてネイサンのために時間を割くようにもなった。週末はもう仕事だけに費やすのではなく、二人だけの大切な時間として街を散策したり、長く散歩を楽しんだり、家でただゆっくり過ごしたりするようになった。習慣を変えるのは簡単ではなく、古い癖はなかなか抜けなかったが、リリーはこの生活スタイルを守り抜く決意を持っていた。
ある土曜日の午後、ゆったりとした朝食を済ませた後、リリーとネイサンはソファに並んで座り、今週の予定について語り合っていた。リリーはここ数ヶ月味わったことのない穏やかな気持ちに包まれていた。
「ねえ、ずっと考えてたんだ」
ネイサンは物思いにふける表情で彼女の方を向き、話し始めた。
「カーター企業のこと、事業拡大のことも。君は本当に素晴らしいことを成し遂げているけど、一つ考えてみてほしい。少し立ち止まって、この道のり自体を楽しんでみないか。君の進むペースは驚くほど速いけど、途中の小さな成功を噛みしめることにも、大きな意味があるんだよ」
リリーは微笑み、彼の理解に心から感謝の気持ちが溢れた。
「あなたの言う通りね。ずっと最終的な目標ばかりに目を向けて、ここまで辿り着いた道のりを評価することを忘れていたわ。例えばサンパウロも、大きな成功だった。そして今、さらなる拡大の準備を進めている」
ネイサンは頷き、彼女の手をそっと握りしめた。
「その通りだよ。心から誇りに思う、リリー。君ならきっと大丈夫。でも覚えていて、急ぐ必要なんてない。世界はいつまでもそこにあるんだから」
リリーは寄り添い、彼の肩に頭を預けた。
「あなたが言うと、とても簡単なことのように聞こえるわ。でも本当にその通り。ずっと無意識に走り続けてきたの。目的地ばかり追い求めるのではなく、もっと過程を楽しむようにしなきゃ」
「どれだけ時間がかかっても、ずっとそばで応援してるよ」
ネイサンは温かな声で答えた。




