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第 14 章:告白

ネイサンのオフィスは相変わらず洗練され、整然としていた。壁一面にガラス張りの窓が設けられ、街全体を見渡す大パノラマが広がっている。リリーは彼の机の前に立ち、両手を強く組み、胸の鼓動を激しく打ち鳴らしていた。ネイサンはいつもの椅子に腰を下ろしていたが、今日の佇まいはいつもと違っていた。わずかに肩に力が入り、顎は決意に固く引き締まっている。

「リリー」

柔らかくも芯の強い声で彼は切り出した。

「俺たちのこと、この先の行く末について、ずっと考えてきた。もう、目を逸らし続けるわけにはいかない時だと思う」

リリーは唾を飲み込み、喉はカラカラに渇いていた。

「どういう意味ですか?」

ネイサンは立ち上がり、ゆっくりと彼女の方へ歩み寄る。

「仕事上の関係を貫こうとしてきたのは分かっている。だが、もう取り繕うのは限界だ。俺たち二人とも、この関係が単なる仕事だけではないことを知っている」

リリーの鼓動は一気に速まった。

「ネイサン、私は――」

「今すぐ答えを出せとは言わない」

感情を込めた張り詰めた声で、彼は彼女の言葉を遮った。

「ただ、分かってほしい。俺は君と共にいたい、リリー。もしこの想いを現実のものにするのなら、もうずっと隠し通すわけにはいかない」

リリーの心は激しく躍った。いつか秘密の関係が限界を迎えることは分かっていた。だが彼の口から直接言葉にされると、現実の重みが一気に押し寄せてくる。

「でもカーター・エンタープライゼスは? あなたの評判は? これまで二人が積み上げてきたすべては、どうなるの?」

ネイサンはさらに一歩近づき、真っ直ぐ彼女の瞳を見つめる。

「これは仕事だけの問題じゃない、リリー。俺たち自身の問題だ。面倒だからといって、この絆を手放すつもりはない」

リリーの頭の中は混乱に包まれた。これまで血を滲むような努力を重ね、今の地位を築き上げてきた。確かな未来が約束されていない恋のために、すべてを投げ捨ててもいいのだろうか。ネイサンが軽々しい約束をする男ではないことは分かっている。それでも、脆い自分をさらけ出す覚悟は、まだ持てずにいた。

「考える時間が欲しい」

か細く、聞き取れないほどの声で囁いた。

ネイサンの表情は和らいだが、その瞳には揺るぎない強さが宿っていた。

「即答は求めない。ただ…… よく考えてほしい。この想いをずっと暗闇に閉じ込めておくことはできない。自分の本心、そして俺に対する気持ちを、正直に見つめてくれ」

リリーは頷き、心は激しく乱れていた。この瞬間が来ることは予感していた。だがいざ直面すると、重大な選択を下す自信が湧いてこない。これまで経験したどの問題よりも、重たい決断がのしかかってくる。キャリアも、恋心も、すべてが危うい天秤の上に置かれていた。

ネイサンはそれ以上何も語らなかった。その場で振り返り、自分の机へと戻っていく。リリーは一人そこに立ち尽くし、思いに耽った。自分は常に状況を掌握することを誇りにしてきた。だが今や、自らの手で状況を操る力は遥か遠くへ消え失せてしまった。未来がどうなるかは誰にも分からない。ただ一つだけ確かなのは、すべてが変わり始めており、もう後戻りはできないということだった。

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