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第125章 転換点

その夜、リリーはネイサンとアパートのリビングに座り、手にワイングラスを持っていた。ダニエルからの電話のことはまだ話していなかったが、体に張り詰めた緊張感は隠しきれないものだった。


「ひどく疲れてるようだね」

ネイサンは二人のグラスにワインを追加しながら言った。


リリーは力のない笑みを浮かべた。

「ずっと苦闘してるわ。取締役会はまだ成果を迫ってくる。サンパウロの進出をゆっくりと進める理由が分からないらしい。どうしても、自分の決断は誰かに疑われるような気がするの」


ネイサンは彼女の隣に座り、優しく心配する表情で見つめた。

「リリー、君は会社にとって最善のことをしてる。誰にも無理に悪い決断をさせられないだろう。カーター企業には君のビジョンがあるし、それは決して妥協できないものだ」


リリーはグラスを見つめ、中のワインをゆっくりとかき混ぜた。

「そう願っているわ。だけどこの調子でどれほど長く続けられるか、分からない。圧力があまりに強いの、ネイサン。取締役会の支持を失うのが怖い。全力を尽くしてるけど、それで足りるのか不安だ」


ネイサンは彼女の手を取り、温かく確かな握りで励ました。

「足りるよ。君は正しいことをしてる。もし取締役会がそれを理解しないなら、それは経営陣を変える時かもしれない。この会社は君が一から築き上げたんだ、今の姿にするのは君だ。誰にも自分を疑わせてはいけない」


リリーの心は感情で満たされた。キャリアで最も困難な時期も、ネイサンの揺るぎない信頼が自分の心の支えだった。これまでも何度も彼に頼ってきたし、今夜も例外ではなかった。


「会社を失いたくないわ、ネイサン」

細い声で囁いた。

「私を信じてくれた全ての人たちを失望させたくない。だけどこの慌ただしさの中で、自分自身を失いたくもない。荷が重すぎて、時には自分で処理できるか疑うことがあるの」


ネイサンはそっと彼女の顔を両手で包んだ。

「一人で戦ってるわけじゃないよ、リリー。僕が傍にいる。何が起こっても、二人で立ち向かう。僕は君を信じてる。それに何があっても、君は今までの君と変わらない。自分が誰かを見失わないで」


リリーは目を閉じ、彼の言葉の重みを心に染み込ませた。それは自分が求めていた、気づかないうちに渇望していた安らぎだった。ネイサンの言う通りだと分かった。前途は容易ではないが、彼がそばにいてくれれば、前に進み続けられる。


二人が沈黙の中で肩を並べて座ると、リリーの頭の中は次第に澄んでいった。これからも難しい決断は続くだろう。カーター企業が成功する道は平坦ではないが、たとえ周囲の反対にあっても、正しい選択を貫く決心が固まった。


翌日からの日々は、さらなる会議、交渉、辛い話し合いで満たされた。だがリリーは企業の未来を見つめると、自分の決断に対する自信が強まっていった。カーター企業は、利益率を超えた理念の上に成り立っている。それらの信念を守り続ける限り、どんな困難も乗り越えられると確信した。


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