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# 第123章 辛い語らい

取締役会の会議は円満に終わらなかった。リリーにとって延期の決定はカーター企業の長期的な安定のために必要な判断だったが、役員たちの理解は到底得られなかった。会議室を出ると、全世界の重圧が肩にのしかかってくるように感じた。決断を下すだけでも辛かったのに、その後の反動は想像を超える厳しさだった。


その夜、心も頭も疲れ果て、気力を失ったような気持ちで家に帰った。ネイサンが既に待っていて、彼女の顔色を一目見ただけで、すぐに優しく抱きしめてくれた。


「会議、どうだった?」

ネイサンは柔らかく問いかけ、手でゆっくり彼女の背中をなでて癒やしてくれる。


リリーは深くため息をついた。

「上手くいかなかったわ。みんな怒ってる。私の決断の意味を理解してくれない。今すぐ成果を出せ、と迫ってくるだけなの」


ネイサンは少し体を離し、肩に手を添えたまま彼女を見つめた。

「リリー、君は正しいことをした。自分の信念を貫き通したんだ、それは誇るべきことだよ」


「分かってる……」

リリーは苛立ちを滲ませた声で答えた。

「だけど辛いの、ネイサン。圧力が押し寄せて、もう抱えきれない。会社が成長しなきゃいけないのは分かってる。でも拡大のためだけに、全てを危険に晒したくないの。私たちが守ってきた在り方を犠牲にしたくない」


ネイサンは切なさを含んだ優しい眼差しで彼女を見つめた。

「一人で全部背負う必要はないよ。君は素晴らしい企業を築き上げてきた、僕は心から誇りに思ってる。時には一番辛い決断こそが、正しい選択なんだ。何があっても、ずっと君のそばにいる」


リリーは力のない笑みを浮かべた。

「あなたがいなかったら、私どうなっていたか分からないわ」


ネイサンはそっと彼女の顔を両手で包み、親指で頬をなでた。

「そんな未来を考える必要もない。僕はずっとここにいる。君ならきっと乗り越えられる」


二人で腰を下ろすと、肩にのしかかっていた重圧が少しだけ和らいだ。ネイサンの揺るぎない支えはいつも彼女の心の錨となってきた。こうした辛い瞬間に、彼が傍にいてくれることがどれほど必要か、改めて痛感した。前途は厳しい道のりだが、彼がいる限り、これから訪れるどんな困難にも立ち向かえる気がした。


その夜、ベッドに横になったリリーは、取締役会の反応、カーター企業が直面する課題、そして自分の立場について思いを巡らせていた。誠実さを持って経営を率いるのが自分の信条だったが、即時の成果を迫る圧力はあまりに強い。役員たちはいつか自分の決断を理解してくれるだろうか。長期的なビジョンを認めてくれるのか、それともリスクを厭わない人物に交代させようとするのか。


答えは分からない。だけど一つだけはっきりしていることがある——自分の理念を手放してはいけない、と。どれほど辛くなっても、カーター企業をここまで導いてきた信念に、忠実であり続けなければならない。


そう心に刻むと、リリーは目を閉じた。ネイサンの支えの強さを胸に感じ、二人なら未来に待ち受けるどんな試練も共に乗り越えられると、確信していた。

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