表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
122/180

# 第122章 延期がもたらす代償

サンパウロ進出延期の決定は、取締役会から即座の反発を招いた。リリーは反対意見を予想してはいたものの、これほど強い激しい反応には覚悟もできていなかった。


翌朝、リリーは役員室に座り、険しい表情の役員たちを前に臨んでいた。部屋の空気は張り詰め、重い雰囲気に包まれている。投資家と取締役が一堂に会し、延期の理由をリリーに問いただそうとしていた。


「自分の置かれた立場は分かっているだろう、リリー」

取締役会長のダニエルが冷たい口調で切り出した。

「我々はずっと成果を約束してきた。サンパウロは戦略の要だった。なのに関税や行政規制を理由に、計画全体を先送りにするなど論外だ。この決断は会社に大きな損害をもたらす」


リリーは深く息を吸い、頭の中で言葉を整理した。準備はしてきたつもりでも、真正面から責められると、現実の重圧が一層強く胸に迫る。

「圧力は十分理解しています、ダニエル。だけど無理に進出を急ぐわけにはいきません。リスクが高すぎるのです。サンパウロの政治情勢は不安定で、他市場で強引な施策が招いた弊害も既に目にしています。戦略を立て直す必要があるのです」


役員たちが互いに視線を交わし、部屋は一瞬静まり返った。やがて最高財務責任者のカレンが声を上げた。


「リリー、ブランドを守ろうとする気持ちは分かる。だが現実を見れば、我々は利益を追求する企業だ。サ0ンパウロを延期すれば貴重な時間と将来の収益を失う。競合は我々の立て直しを待ってはくれない」


リリーの指がテーブルの縁を強く握り締めた。この主張は予想していたが、やはり胸に刺さる思いがした。

「短期の利益のために、理念を犠牲にするつもりはありません。成長戦略は長期的なビジョンに沿わせなければならない。これらの市場で長く成功したいなら、正しいやり方で進出することが必須です。それはペースを緩め、戦略を練り、信頼できるパートナーを見極めることを意味します」


ダニエルは身を乗り出し、口調を鋭くした。

「だが時間の猶予がないとしたらどうする? 競合に先を越されたら? 投資家がいつまでも待ってくれないことは、君も分かっているはずだ」


「そのことは承知しています」

リリーは揺るぎない声で答えた。

「だが私は、これまで築き上げてきたものを信じています。一時の利益のために、企業の信頼と名声を犠牲にするつもりはありません」


長い沈黙が訪れた後、取締役たちはひそひそと私語を交わし始めた。リリーの言い分は伝えきったが、これからの道のりが一層困難になることは明白だ。自分の決断がカーター企業のためだけでなく、未来のためにも正しい選択であることを、彼らを納得させなければならない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ