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45歳。転移、若返り、強くなる!  作者: ユーマ


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9話

翌朝。


ユーマが目を覚ました時、窓の外はすでに明るかった。


厚い布団と静かな部屋。


柔らかい寝床に、一瞬だけ感覚がずれる。


ここがどこだったか、少しだけ考える。


だが、窓の外から聞こえる人の声と荷車の音で思い出した。


――メイセキ。


ユーマはゆっくりと身体を起こした。


(よく寝たな)


身体の調子は悪くない。


むしろ軽いくらいだった。


その時、扉が少し強めに叩かれる。


「ユーマ!起きてる!?」


ナキの声だった。


「起きてる」


「朝ご飯行くわよ!」


急かすような声に、ユーマは小さく息を吐いて扉を開けた。


ナキはすでに支度を終えていた。


どこか機嫌が良さそうだ。


「早いな」


「街の宿って、朝ご飯まで出るのよ」


「普通じゃないのか?」


「普通じゃない」


真顔だった。


「村だとパンとスープだけでも贅沢」


ユーマは少しだけ頷く。


「そうか」


「だから今日は楽しみ」


そう言って、少しだけ笑った。


二人は一階の食堂へ向かう。


朝の食堂はすでに賑わっていた。


商人、冒険者、自警団員。


様々な人間が食事をしている。


席に座った瞬間、周囲の視線が集まった。


「あれ、昨日の……」

「魔狼倒したやつだろ」

「思ったより若いな」


ひそひそ声。


昨日より露骨だった。


ユーマは少し困ったように視線を落とす。


「……目立つな」


「仕方ないでしょ」


ナキがじろりと周囲を睨む。


何人かが慌てて目を逸らした。


ユーマはそれを見て少しだけ苦笑する。


「そういう顔もできるんだな」


「できるわよ」


ナキは平然と言う。


「ユーマ見てると、なんか腹立つし」


「なんでだよ」


「無自覚だから」


その時。


入口の方が騒がしくなった。


「いたいた!」


聞き慣れた声。


エレナだった。


朝から全力だった。


「おはよー!」


手を振りながら一直線に来る。


「朝から元気だな」


ユーマが言うと、


「元気だよ?」


当然のように返された。


そのまま隣に座る。


距離が近い。


ナキがじっと見る。


「……近い」


「え?」


「近い」


「普通じゃない?」


「普通じゃない」


やり取りを見て、ユーマは少しだけ口元を緩めた。


「朝ご飯食べたら行くよ!」


エレナが言う。


「どこへ?」


「素材屋。換金でしょ?」


ナキが身を乗り出す。


「そんなに高くなるの?」


「昨日のは結構いくよ。特に牙」


楽しそうだった。


食事を終え、三人は外へ出る。


朝のメイセキはすでに動いていた。


荷車が行き交い、店が開き、人が流れる。


ナキはきょろきょろと周囲を見る。


「……人多い」


「慣れるよ」


ユーマが静かに言う。


「最初はそんなもんだ」


少しだけ優しい声だった。


ナキは一瞬だけユーマを見る。


それから小さく頷いた。


やがて素材屋に着く。


店主は三人を見るなり目を細めた。


「昨日の兄ちゃんか」


ユーマは袋を下ろす。


「素材、持ってきた」


中身を広げる。


牙、毛皮、爪。


異常個体のそれを見た瞬間、店主の表情が変わった。


「……なんだこりゃ」


牙を手に取る。


「こんなの見たことねぇぞ」


「鉱山で出たやつだ」


エレナが補足する。


店主は黙って確認を続ける。


そして赤い核の欠片を見ると、顔をしかめた。


「気味が悪ぃな……」


「分かるか?」


ユーマが聞く。


「分からん。だが、普通じゃねぇ」


短い答えだった。


店主は紙に数字を書く。


「全部で金貨十八枚だ」


ナキが固まる。


「じゅ、十八!?」


ユーマはナキを見る。


「そんなにか?」


「そんなによ!」


思わず立ち上がる。


「村なら家直せるくらいある!」


ユーマは少しだけ目を丸くした。


「……それは助かるな」


素直な感想だった。


店主は頷く。


「異常個体は珍しい。特にこの牙はいい素材だ」


ユーマは袋を受け取る。


重い。


だが、その重みよりも。


(しばらくは困らないな)


安心の方が先に来た。


「じゃ、次は団長のとこ!」


エレナが歩き出す。


街の中心から少し離れた場所。


大きな石造りの建物。


門をくぐると、音が響いていた。


カン、カン、と硬い音。


訓練場だった。


中央で、一人の男が武器を振っている。


長身。


筋肉の塊のような体。


手にしているのは巨大なハルベルト。


それを軽々と振っている。


一振りごとに空気が揺れる。


周囲の団員たちは距離を取っていた。


危険だからだ。


男は最後の一振りを終えると、ゆっくりとこちらを見た。


鋭い視線。


そのままユーマを捉える。


「……お前か」


低い声だった。


エレナが軽く手を振る。


「連れてきたよ、団長」


男が近づいてくる。


ユーマの前で止まる。


視線が上から下まで動く。


値踏みではない。


“確かめている”目だった。


「思ったより若いな」


ユーマは一拍置いてから答える。


「……そっちは、思ってたより迫力があるな」


少し柔らかい言い方だった。


周囲がわずかにざわつく。


男は一瞬だけ目を細めて――笑った。


「はっ、いいな」


豪快な笑いだった。


「俺はガトリン。この街の自警団団長だ」


「ユーマだ」


短く名乗る。


ガトリンは口元を吊り上げる。


「お前、強ぇな」


その一言で空気が変わる。


団員たちの視線が集まる。


エレナは楽しそうに笑っている。


ナキは明らかに嫌そうな顔だった。


ガトリンはハルベルトを肩から下ろす。


「なぁ、ユーマ」


その目が変わる。


戦う者の目だった。


「少しだけ、手合わせしてみねぇか?」


ユーマはその視線を受け止める。


そして一度だけ、周囲を見る。


ナキ。


エレナ。


団員たち。


それからガトリンへ戻す。


小さく息を吐いた。


「……怪我人はもう出てないんだな?」


ガトリンが一瞬きょとんとする。


「ん?」


「さっきまで戦ってたみたいだったからな。続きで人手がいるなら、そっちを優先したい」


数秒の沈黙。


それから。


ガトリンが、さらに大きく笑った。


「ははっ……なるほどな」


面白そうに目を細める。


「問題ねぇよ。今は手ぇ空いてる」


ユーマは頷く。


「……じゃあ、少しだけな」


ナキが顔をしかめる。


「ちょっとだけよ」


釘を刺すように言った。


エレナは完全に楽しそうだった。


「いいね、それ」


訓練場の空気が一気に張り詰める。


次の瞬間を、全員が待っていた。

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