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45歳。転移、若返り、強くなる!  作者: ユーマ


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8話

鉱山の入口には、まだ戦いの余韻が残っていた。


地面には魔狼の死体が転がり、負傷した自警団員たちが仲間に肩を借りて運ばれていく。


張り詰めていた空気が、少しずつほどけ始めていた。


ユーマは刀についた血を布で拭った。


買ったばかりの刀。


刃こぼれはしていない。


だが、わずかに違和感が残っている。


(少し歪んでるな)


最後の一撃の衝撃だろう。


無理はさせない方がいい。


そう判断して、静かに鞘へ収めた。


「……やっぱり変」


エレナがしゃがみ込み、赤い核を拾い上げる。


光は弱くなっている。


だが、完全には消えていない。


内側で、何かがくすぶっているように見えた。


「こんなの、普通の魔石じゃない」


ユーマもそれを見る。


うまく言葉にはできない。


だが、近くにあると落ち着かない。


「……嫌な感じがするな」


「でしょ?」


エレナはすぐに反応した。


「なんかこう、見てるだけで落ち着かないっていうか」


言葉を探しながらも、楽しそうに頷く。


「やっぱり普通じゃないよね」


「調べられるのか?」


「うん。専門の人に見せれば何か分かると思う」


エレナは立ち上がる。


「それと、ユーマには団長にも会ってほしい」


「団長?」


「メイセキ自警団の団長。街で一番強い人」


ユーマは少しだけ肩の力を抜いた。


「強い人はあまり得意じゃないな」


「なんで?」


「面倒ごとが増える」


エレナはくすっと笑う。


「でも絶対気に入られると思うよ」


その時、自警団員の一人が近づいてきた。


「あ、あんた……これ全部、一人でやったのか?」


ユーマは軽く首を振る。


「周りが持ちこたえてくれてたからだ。俺は隙をついただけだよ」


「いや、それでも十分おかしいだろ……」


男は苦笑する。


「素材は全部あんたのもんだ。規則だ」


「そうなのか」


「特にあの大きいのは高く売れるぞ」


「異常個体だからね」


エレナが横から言う。


「解体屋に持っていけば、かなり値がつくと思う」


ユーマは頷く。


「助かるな」


村長が歩いてきた。


周囲を見て、深く息を吐く。


「……助かった」


短い言葉だったが、重みがあった。


「すっげぇ……!」


トンボが目を輝かせる。


魔狼の周りをぐるぐる回る。


「やっぱユーマ兄ちゃん、めちゃくちゃ強ぇ!」


ユーマは少しだけ笑う。


「そのうちお前もできるようになる」


「ほんとか!?」


「ああ。ちゃんとやればな」


トンボの顔がぱっと明るくなる。


村長が腕を組む。


「ユーマ。しばらく街に残るか?」


「残る?」


「二、三日だ。素材の換金もあるし、団長にも顔を出しておけ」


エレナも頷く。


「赤い魔石のこともすぐ共有できるしね」


「いいなぁ!」


トンボが叫ぶ。


「オレも残りてぇ!」


「駄目だ」


即答だった。


「帰るぞ」


「えぇー……」


その横でナキが言う。


「……私は残る」


村長が眉を上げる。


「ナキ?」


「ユーマを一人にできないし……」


少し言葉を選ぶ。


「街のことも、私の方が分かるから」


「一人でも問題ない」


ユーマが言う。


「ある」


即答だった。


だが声は柔らかい。


「……放っておくと無茶しそうだから」


ユーマは苦笑する。


「そんなつもりはないんだけどな」


「ある」


やっぱり即答だった。


ナキが少しだけエレナを見る。


「あと……変な人にも捕まりそう」


「え、あたし?」


エレナはきょとんとしてから笑う。


「それは否定できないかも」


「おい」


エレナは楽しそうにユーマの腕に触れる。


「だってユーマ、目立つもん。強いし、ちゃんとしてるし」


「ちゃんとしてる、は初めて言われたな」


「そこ自覚ないの?」


ナキが一歩前に出る。


「ユーマは私が見るから」


「保護者?」


「そう」


即答だった。


エレナはくすっと笑う。


村長はため息をつく。


「……まあいい。ナキ、任せた」


「うん」


「トンボ、帰るぞ」


「えぇぇ……」


しぶしぶついていく。


去っていく背中を見送りながら、ユーマは小さく息を吐く。


「……騒がしいな」


だが、どこか穏やかだった。


「じゃあ、あたしはこれ調べてくるね」


エレナが赤い核を軽く持ち上げる。


「明日また会おう」


「ああ」


「ナキちゃんもね」


「……うん」


「宿は任せて!」


エレナは自警団員を捕まえる。


「この二人、“石鶴亭”までお願い!」


案内されて街へ戻る。


夕方のメイセキはまだ騒がしかった。


「あいつか?」

「魔狼を倒したって……」

「一人で……?」


ひそひそ声が聞こえる。


ユーマは少し困ったように眉を下げた。


「……目立ったな」


「仕方ないわよ」


ナキは少しだけ誇らしげに言う。


「本当にすごかったし」


やがて大きな宿が見えてきた。


石造りの三階建て。


暖かな灯り。


「ここだ。“石鶴亭”」


中に入ると、広いロビーに木の香りが広がっていた。


「……すご」


ナキが小さく呟く。


「二部屋取ってある」


「二部屋……?」


ナキが少し反応する。


「別々なら問題ないだろ」


ユーマは自然に言う。


「……そうね」


少しだけ間があった。


鍵を受け取る。


静かな廊下。


ナキは落ち着かない様子で周りを見る。


「なんか……ほんとに街に来たんだなって感じ」


ユーマは窓の外を見る。


夜のメイセキ。


灯りが続いている。


遠く、鉱山の火が揺れていた。


(しばらくは、ここか)


胸の奥に、少しだけ安心感があった。


だが同時に。


あの赤い核の感触。


言葉にできない嫌な感じ。


まだどこかに残っている気がした。

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