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45歳。転移、若返り、強くなる!  作者: ユーマ


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6話

魔石屋を出る頃には、メイセキの通りは昼の熱気に包まれていた。


鍛冶屋から響く金属音。

露店から漂う焼いた肉の匂い。

荷車を引く馬の足音。

鉱山帰りらしい男たちの笑い声。


街は活気に満ちている。


だが——


(……さっきの、まだ残ってるな)


赤い魔石の感覚が、頭の奥に引っかかっていた。


理由は分からない。


ただ、忘れていいものじゃない気がする。



「じゃあ次は服」


ナキが切り替えるように言った。


「服ならいい店知ってるわよ」


横から、いつの間にかエレナが並ぶ。


「ついてくるのか」


「行くよ?」


きょとんとした顔。


「だって面白そうだし。ユーマ、絶対服で印象変わるもん」


そのまま自然に隣へ来て、腕に軽く触れる。


距離が近い。


「ねえ、ロングコートとか絶対似合うよ」


「ロングコートか……」


「うん。背高いし、顔もいいし」


「顔……」


ユーマは少しだけ困ったように笑う。


慣れていない。


そういう言葉に。


「ユーマは動きやすい方がいい」


ナキが間に入る。


「街だけじゃないし、また戦うかもしれないから」


「えー、でもせっかくだよ?」


「……着せ替えじゃない」


「ナキ、怒ってる?」


「怒ってません」


間。


「……普通です」


全然普通ではなかった。


ユーマは小さく息を吐く。


(賑やかだな)



エレナに連れて行かれた店は、大通りに面した大きな服屋だった。


中には様々な服が並んでいる。


店主がユーマを見るなり、少し目を細めた。


「背がいいわねぇ。何でも似合いそう」


「ほら!」


エレナが嬉しそうに振り返る。


「まずこれ!」


差し出されたのは黒のロングコート。


細身で、内側に紺の布が使われている。


「長くないか?」


「いいから着てみて!」


半ば押し込まれる形で試着室へ。


——しばらくして。


外に出る。


「……」


「……」


一瞬、空気が止まる。


「やっぱり似合う!」


最初に声を上げたのはエレナだった。


ぐっと距離を詰める。


襟を整え、肩を軽く叩き、袖を引く。


「こっち向いて」


「……こうか」


「うん、いい」


満足そうに笑う。


ナキは少しだけ遅れて口を開いた。


「……似合う」


短い。


だが、ちゃんと見ていた。


「でも、それだと動きにくい」


そう言ってナキが持ってきたのは、実用的な服だった。


灰色のシャツと黒のズボン、短めの上着。


「こっちも着て」


——再び試着。


出てくる。


今度はナキの目が少しだけ柔らかくなる。


「……うん。こっちもいい」


「なんか強そうだよね」


エレナが腕を組む。


「でも私はロングコート派」


「普段はこっち」


「えー」


二人は本気で悩み始めた。


ユーマは苦笑するしかない。


(こういう時間も、悪くないな)



結局、


普段着、外套、戦闘用。


いくつかを揃えることになった。



次に向かったのは武器屋だった。


店内には様々な武器が並ぶ。


剣、槍、斧、弓、杖。


ユーマは一本ずつ手に取る。


振る。


(……違うな)


重さ。

重心。

しっくりこない。


「そんなに違うの?」


エレナが覗き込む。


「少しな」


「へえ」


店の奥。


一本の刀が目に入る。


細身。

無駄がない。


手に取る。


抜く。


(……これだ)


違和感がない。


自然に振れる。


「それ、魔鉱石使ってるよ」


店主が言う。


「軽いし、丈夫だ」


ユーマは軽く振る。


空気を切る感触が、心地いい。


「これにする」


「お、いいの選ぶね」


エレナが覗き込む。


「似合ってる」


「……うん」


ナキも小さく頷く。



剣を腰に差す。


その瞬間、ようやく形になった気がした。


(……これで動ける)



——その時だった。


鐘の音が響く。


一度。


二度。


三度。


空気が変わる。


人の流れが乱れ、自警団が走る。


「鉱山側だ!」


「魔物だ!」


「数が多い!」


ざわめきが広がる。


エレナの表情が変わる。


さっきまでの軽さが消える。


「ごめん、行くね!」


すぐに動こうとする。


その瞬間——


ユーマは感じた。


(……来る)


鉱山の方角。


嫌な気配。


濃い。


重い。


あの赤い魔石と同じ——


いや、それ以上に。


胸の奥がざわつく。


身体が、勝手に警戒する。


(これは……まずい)


エレナが踏み出す。


ユーマは腕を掴んだ。


「待ってくれ」


「え?」


「一人で行くな」


静かに言う。


だが、はっきりしている。


「……危ない」


エレナが一瞬だけ目を見開く。


ユーマは鉱山の方を見たまま続ける。


「理由はうまく言えない。でも——」


少しだけ間を置く。


「嫌な感じがする」


エレナはそれを聞いて、ほんの少しだけ真顔になる。


そして、すぐに笑った。


「……じゃあ、一緒に行く?」


軽い調子。


でも、断る気はない。


ナキが一歩前に出る。


「……ユーマ」


心配そうな声。


ユーマは少しだけ振り返る。


「大丈夫だ」


優しく言う。


「無理はしない」


ナキは一瞬迷って——


小さく頷いた。


「……気をつけて」



ユーマは前を向く。


鉱山の方へ。


騒ぎの中心へ。


(行かないといけない)


理由は分からない。


だが、はっきりしている。


(これは、見過ごせない)


エレナが隣に並ぶ。


「なんかさ」


少しだけ楽しそうに言う。


「面白くなってきたね」


ユーマは小さく息を吐いた。


「……そうだな」


その言葉とは裏腹に、


胸の奥の違和感は、消えていなかった。



街の喧騒の向こうで、


“何か”が、確実に動いていた。

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