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45歳。転移、若返り、強くなる!  作者: ユーマ


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第25話 ナキ③


補給部隊の詰所に戻ると、空気が明らかに違っていた。


さっきまでと同じ場所。


同じ人間。


なのに――視線が違う。


「おかえり!」

「どうだった?」

「うまくいったのか?」


一斉に声が飛んでくる。


ナキは少しだけ驚いた顔をする。


「え、はい。問題なく」


後ろからハインツが答える。


「一割五分でまとまった」


一瞬、静寂。


次の瞬間――


「は!?」

「三割から下げさせたのか!?」

「マジかよ!」


一気に騒ぎになる。


視線がナキに集中する。


さっきまでの“可愛い新入り”を見る目じゃない。


完全に“結果を出した人間”を見る目。


「お前……何したんだ?」

「脅したのか?」

「いや顔だろ絶対」


ナキは困ったように笑う。


「普通に話しただけですよ」


「それができねぇんだよ!」


即ツッコミが飛ぶ。


笑いが起きる。


その流れの中で――


ハインツが一歩前に出る。


「交渉は今後、ナキに任せる」


空気が止まる。


一瞬の沈黙。


「……マジで?」

「いきなりかよ」


ハインツは周囲を見渡す。


「異論ある?」


誰も口を開かない。


開けない。


さっきの結果を見せられている。


ハインツは頷く。


「決まりだ」


その一言で――


ナキの役割が正式に決まった。


ナキは少しだけ目を丸くする。


「私でいいんですか?」


ハインツは即答する。


「いい」


「さっきので十分証明されてる」


短い。


だが、重い。


ナキは小さく息を吐いて――


「……分かりました」


頷いた。


そのやり取りを見ていた団員が、ぽつりと呟く。


「……すげぇな」


別のやつも続く。


「正直、めちゃくちゃ助かる」

「外のやつら相手すんの苦手なんだよ」


「すぐ頭にくるしな」

「話長くなるし」


ナキはくすっと笑う。


「じゃあ、そこは任せてください」


その一言で空気が決まる。


「頼んだ!」

「マジで頼む!」

「助かるわ」


ナキが帳簿に目を落とす。


「これ、さっきの続きですよね」


「ああ」


ページをめくる。


数秒。


「……ここもズレてます」


「は?」


男が顔を出す。


「どこだ?」


ナキが指差す。


「ここです。あとここも」


「……ほんとだ」


周囲がざわつく。


ナキは淡々と言う。


「さっきと同じパターンです」


「時間帯も似てます」


ハインツが頷く。


「なら同一だな」


マルタが腕を組む。


「明日の罠で確定ね」


ナキは頷く。


「はい」


その時――


奥から声がする。


「――話は聞いたわ」


空気が一瞬で締まる。


セリナ。


補給部隊長。


全員の背筋がわずかに伸びる。


ハインツが簡潔に言う。


「交渉完了。条件は一割五分」


「原因は外部抜きの可能性高」


セリナはナキを見る。


数秒。


視線が動かない。


「あなたがナキね」


「はい」


「再現性は?」


即答が求められている。


ナキは迷わない。


「条件が揃えば可能です」


「相手の状況次第ですが、同様の結果は出せます」


セリナは数秒だけ考える。


そして――


頷いた。


「いいわ」


短い一言。


だが、それで十分だった。


「外部交渉、正式に担当しなさい」


空気が変わる。


完全な“承認”。


「結果を出し続けなさい」


それだけ言って、セリナは去る。


静寂。


そして――


「……おい」

「今の完全に認められただろ」

「やべぇな」


ざわめきが戻る。


ナキは小さく息を吐く。


ほんの少しだけ、力が抜ける。


その時。


団員の一人が思い出したように言う。


「そういやよ」


「ナキと一緒に来たやつ、調査部隊でえらいことになってるらしいぞ」


ナキの手が、ぴたりと止まる。


「……え?」


「なんか変な武器使うことになったとかでさ」

「ドランが大はしゃぎしてるってよ」


別の男が笑う。


「それだけじゃねぇぞ」


「街でも話題になってる」


ナキが顔を上げる。


「話題……?」


「ああ」


「女どもが騒いでたぞ」


「“無口で強いのがいい”とか」

「“ああいうのがいい”とかよ」


笑いが起きる。


ナキは一瞬だけ黙る。


「えっ……そうなんですか?」


思わず出る。


少しだけ声が上ずる。


「そりゃそうだろ」

「目立つしな」

「顔も悪くねぇし」


ナキは少しだけ視線を落とす。


「……へぇ」


短く。


だが、ほんの少し間がある。


帳簿にペンを走らせる。


さらさらと音が響く。


「無口で強いとか一番モテるやつだろ」

「分かるわ」


ナキの手が、ほんの少しだけ止まる。


「あ……」


小さく呟く。


すぐに書き直す。


何事もなかったように。


マルタが横目で見る。


気づいている。


でも何も言わない。


ナキは一度だけ、息を整える。


そして顔を上げる。


いつもの笑顔。


「でも、こっちはこっちで忙しくなりそうですね」


周囲が笑う。


「頼もしいな」

「助かるわ」

「最初からいてくれよ」


ナキも笑う。


完璧に、いつも通り。


――に見える。


少しして。


誰も見ていない瞬間。


ナキは小さく呟いた。


「……別に、いいけど」


ペンを置く。


ほんの少しだけ――


頬がプクッと膨らんでいた。


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