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45歳。転移、若返り、強くなる!  作者: ユーマ


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第24話 ナキ②


午後。


詰所の外は、午前とは違う忙しさがあった。


荷車が並び、商人たちが出入りしている。


値段の話。納期の話。文句。


金の匂いがする場所だった。


「行くよ」


ハインツが歩き出す。


ナキはその横に並ぶ。


「午前の話、覚えてるね」


「はい」


「今日は“確認”が目的だ」


ハインツは前を見たまま言う。


「いきなり詰める必要はない」


「反応を見て、どこまで踏み込むか決める」


ナキは頷く。


「分かりました」


少しだけ間。


ハインツが横目で見る。


「あと一つ」


「はい?」


「無理に勝ちに行かなくていい」


ナキがわずかに首を傾げる。


ハインツは笑う。


「交渉は“崩す順番”が大事だからね」


「今日は崩し方を見る」


ナキは理解する。


「……はい」


簡素なテントの前。


男が一人、椅子に座っていた。


太っている。指には金の指輪。


いかにも商人、という風体。


「おう、ハインツか」


「久しぶりだな」


ハインツは軽く手を上げる。


「変わらず羽振りいいね」


「まあな」


軽い会話。


だが空気は探り合い。


ハインツが本題に入る。


「値段、上げたね」


男は肩をすくめる。


「市場が動いてるんだ、仕方ねぇ」


「三割は強気すぎる」


「嫌なら他当たれ」


即答。


周囲の空気が少しだけ固くなる。


ハインツは崩さない。


むしろ一歩引く。


「そうか」


あっさり引く。


男が少しだけ拍子抜けする。


その瞬間。


ハインツが視線だけでナキに振る。


ナキが一歩前に出る。


「はじめまして」


にこりと笑う。


空気が変わる。


男の目がナキに向く。


「……お前は?」


「ナキです」


「補給部隊に入りました」


男の口元が緩む。


「へぇ……いいの入れたな」


後ろで誰かが小さく舌打ちする。


ナキは気にしない。


「少し教えていただきたいことがあって」


「なんだ?」


ナキは自然に距離を詰める。


「今回の値上げって、市場だけが理由ですか?」


一瞬、間。


男の目がわずかに動く。


ハインツは何も言わない。


ただ見ている。


男が笑う。


「他に何がある?」


ナキは首を傾げる。


「いえ、最近こちらの記録が少しおかしくて」


「入荷数が合わないんです」


空気が変わる。


ほんの少しだけ。


男の指が動く。


ナキは見逃さない。


「もし運搬の途中で減ってるなら」


「供給側としても困りますよね?」


言い方は柔らかい。


だが、逃げ道を塞いでいる。


男が黙る。


ハインツはまだ動かない。


ナキが続ける。


「もちろん違うなら大丈夫です」


「その場合は純粋に価格の話になりますので」


一歩だけ引く。


圧を緩める。


「ただ――」


少しだけ笑う。


「どちらにしても、こちらがそのまま受け入れる理由はないですよね?」


沈黙。


数秒。


男が舌打ちする。


「……チッ」


椅子にもたれかかる。


「どこまで気づいてる?」


ナキは即答しない。


一瞬だけ考える“間”を作る。


「全部ではないです」


「でも、“減っている”ことは事実です」


男が鼻で笑う。


「大したもんだな」


そしてハインツを見る。


「教育いいな」


ハインツは軽く肩をすくめる。


「素材がいいだけだよ」


ナキは小さく続ける。


「もし外で抜かれてるなら」


「こちらとしては損失分を考慮する必要があります」


「なので――」


一拍。


「一割でお願いします」


男が笑う。


「欲張るな」


ナキは引かない。


「情報も含めてです」


視線がぶつかる。


数秒。


男が先に逸らす。


「……一割五分」


ナキはすぐには頷かない。


ハインツを見る。


一瞬だけ目が合う。


ハインツがわずかに頷く。


ナキが答える。


「それでお願いします」


決着。


男は手を振る。


「ったく、やりにくいの連れてきやがって」


ナキは笑う。


「よく言われます」


男が苦笑する。


「あとで情報回す」


「助かります」


交渉は終わった。


帰り道。


少し歩いたところで。


ハインツが口を開く。


「よかったよ」


ナキが見る。


「どのあたりがですか?」


「全部」


即答。


少しだけ笑う。


「最初に圧をかけすぎなかった」


「途中で引いた」


「最後に締めた」


指で順番を示す。


「ちゃんと崩してる」


ナキは少しだけ考える。


「……途中で引いたのは、相手の逃げ道を残すためです」


ハインツが頷く。


「それができるなら十分だ」


少し間。


「これから外は任せるよ」


ナキが止まる。


「私でいいんですか?」


ハインツは即答する。


「いい」


「さっきので証明された」


ナキは一瞬だけ考えて――


頷く。


「……やってみます」


ハインツは満足そうに笑う。


「いいね」


「頼りにしてる」


その言葉で――


ナキの役割が決まった。


補給部隊の“対人の要”。


外と向き合う人間。


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