表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45歳。転移、若返り、強くなる!  作者: ユーマ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/28

23話 ナキ①


補給・サポート部隊の詰所は、朝から騒がしかった。


人の出入りが多い。


荷車の音。帳簿をめくる音。怒鳴り声。


「違う違う!それ昨日の分だろ!」

「いや今日のだって!」

「日付見ろ!」


ナキは入口で立ち止まった。


少しだけ周囲を見渡す。


「……すごいわね」


物の流れが速い。


人の動きも、言葉も。


止まっていない。


だが――


雑だ。


「あなたがナキ?」


振り向く。


短く切った髪の女性。


「はい」


「マルタよ。ついてきて」


ナキが一歩踏み出した、その瞬間。


周囲の空気が、わずかに変わる。


「……おい」

「ちょっと待て」

「なんだあれ」


ひそひそ声。


だが隠せていない。


「普通に可愛くねぇか?」

「なんで補給来た?」

「場違いだろあれ」


一人が小さく笑う。


「……これは荒れるな」


別の男がすぐに言う。


「いや俺が教えるわ」

「こういうの最初が大事だからな」


「は?お前に任せたら泣くだろ」

「俺の方が優しいって」


小さな牽制が始まる。


ナキは気づいていない。


ただマルタの後ろを歩いているだけだ。


マルタが一瞬だけ振り返る。


「……仕事しろ」


一言。


少しだけ静かになる。


だが視線は消えない。


詰所の奥。


机の上には帳簿と紙。


箱に詰められた物資。


整っているようで、整っていない。


マルタが紙を一枚投げる。


「これ見て」


ナキは受け取る。


ざっと目を通す。


「……食料の入荷記録ですね」


「そう」


「何か問題がありますか?」


「あるから聞いてる」


ナキはもう一度見る。


今度は少しだけ時間をかける。


指で数字をなぞる。


流れを追う。


数秒。


「……ズレてますね」


周囲が少し静かになる。


「どこが」


ナキは紙を指差す。


「ここ、ここ、それとここ」


「三日分、規則的に減ってます」


団員が口を挟む。


「誤差じゃねぇの?」


ナキは首を横に振る。


「誤差にしては揃いすぎてます」


少しだけ間。


「運搬の途中で抜かれてますね」


空気が変わる。


「……誰に」


「外部です」


即答。


「内部なら、もっとバレにくくやります」


ざわつき。


さっきまで軽口を叩いていた男たちが、口を閉じる。


見る目が変わる。


その時――


「いいねぇ」


軽い声。


振り返る。


壁にもたれていた男。


いつからいたのか分からない。


マルタが言う。


「……ハインツ」


周囲が小さくざわつく。


「副隊長だ」

「外の交渉全部やってる人だぞ」


男はゆっくり歩いてくる。


ナキの手元の紙をひょいと取る。


「補給部隊の副隊長、ハインツ」


軽く名乗る。


「外とのやり取り担当だ」


ナキを見る。


「よろしく」


「ナキです。よろしくお願いします」


ハインツは紙に目を落とす。


ざっと確認。


「……三日前からだな」


周囲が止まる。


「運搬ルートは東側に寄ってる」


「時間帯は昼前後」


団員が驚く。


「……そこまで分かるのかよ」


ハインツは肩をすくめる。


「現場は見てるからね」


そしてナキを見る。


「君は外部って言った」


「理由は?」


ナキは答える。


「ズレ方が綺麗すぎます」


「焦ってる人のやり方じゃないです」


少しだけ間。


「“バレてない前提”で動いてる人の抜き方です」


ハインツが止まる。


数秒。


そして――笑う。


「なるほどね」


「視点がいい」


その一言で、空気がさらに変わる。


ハインツは紙を軽く叩く。


「で、どうする?」


ナキは迷わない。


「明日、罠を張ります」


周囲がざわつく。


「多めに積んで、同じ量減るか確認します」


「時間もずらします」


「反応が出ます」


ハインツの目が細くなる。


「いい」


即答。


だが続ける。


「その前に“外”を確認する」


「供給側の反応を見たい」


ナキは頷く。


「……確かに」


「内外どっちか確定できますね」


ハインツは笑う。


「そういうこと」


マルタが腕を組む。


「責任は?」


ハインツは短く言う。


「俺が持つ」


一言。


マルタは数秒だけ考えて――


頷いた。


「……任せる」


空気が締まる。


ハインツがナキを見る。


「午後、外に出る」


「実地でやるよ」


ナキは頷く。


「はい」


短く。


無駄がない。


ハインツは少しだけ笑う。


「いいね」


「話が早い」


一歩引く。


「じゃあ行こうか」


その言葉で――


ナキの立ち位置が変わる。


新入りではない。


“役割を持つ側”に入った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ