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45歳。転移、若返り、強くなる!  作者: ユーマ


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16話

メイセキの外壁が見えたのは、昼を少し過ぎた頃だった。


高い石壁。


見張り台。


開かれた大門。


ナキは思わず足を止める。


「……大きい」


「だろ」


トンボはすでに前に出ていた。


「やば、あれ全部街か!?」


「はしゃぐな、置いてくぞ」


ガトリンが軽く言うが、口元は少し緩んでいる。


隊列はそのまま門へ向かった。


門の前では、簡単な確認が行われている。


出入りする人間の列。


商人、旅人、冒険者。


その中に自然と混ざる。


「団長、お疲れ様です」


門番が頭を下げる。


ガトリンは軽く手を上げるだけだった。


「負傷者ありだ。通すぞ」


「はい」


すぐに道が開く。


ユーマたちはそのまま門をくぐった。


その瞬間――


空気が変わった。


音が増える。


声。


足音。


金属音。


呼び込み。


匂いも違う。


焼いた肉、香辛料、獣、鉄。


ナキは思わず立ち止まりそうになる。


「……すごい」


今度は小さな声だった。


トンボは完全に飲まれている。


「人多すぎだろ……!」


「はぐれるなよ」


ユーマが軽く言う。


トンボの襟を掴んで引き戻す。


「うわっ」


「迷子になるぞ」


「ならねぇよ!」


「今なりかけてた」


エレナがくすっと笑う。


「最初はみんなそんな感じよ」


ナキは少しだけユーマの近くに寄る。


無意識だった。


人の多さに圧倒されている。


ユーマはちらっと見るが、何も言わない。


ただ歩幅を少し落とした。


それだけで、ナキは少し楽になる。



しばらく進むと、少し広い通りに出た。


両側に店が並んでいる。


武器屋。


防具屋。


食料。


布。


見たことのない道具も多い。


トンボが完全に目を輝かせる。


「あれ見ろよ!あの剣!光ってるぞ!」


「魔道具だな」


エレナが答える。


「魔力を流すと切れ味が上がるやつ」


「欲しい!」


「高いぞ」


「やめとく!」


即答だった。


ナキは違うものを見ていた。


「……これ、全部お金で買うの?」


「そうだな」


ユーマが答える。


「村みたいに融通は効かない」


「そっか……」


少しだけ真剣な顔になる。


生活の重みを感じ始めていた。


ユーマはそれを見て、少しだけ言う。


「まあ、最初は俺も分からないしな」


ナキが顔を上げる。


「一緒に覚えればいいだろ」


自然な言い方だった。


ナキは少しだけ笑う。


「……うん」



やがて、一行は自警団の拠点へと到着した。


石造りの大きな建物。


中庭には訓練場。


出入りする団員たち。


「戻ったぞ」


ガトリンが声を上げる。


何人かがすぐに駆け寄る。


「おかえりなさい!」


「例の件、どうでした?」


「後で話す。まずはこいつらだ」


ユーマたちへ視線が向く。


「新人だ」


ざわっと空気が揺れる。


「あいつが……?」


「噂の……」


「魔力無しの……」


視線が集まる。


だが、ユーマは気にしていない。


ナキの方が少しだけ緊張していた。


ユーマは小さく言う。


「気にしなくていい」


「……分かってる」


でも、少しだけ背筋を伸ばした。



その時だった。


ふと、ユーマの視線が止まる。


建物の影。


ほんの一瞬。


誰かと目が合った気がした。


だが、すぐに消える。


「……?」


「どうした?」


ガトリンが聞く。


ユーマは少しだけ考える。


「いや……気のせいかもしれない」


だが。


胸の奥がわずかにざわついていた。


あの時と同じ感覚。


森の奥で見た、あの視線。


ユーマは何も言わず、視線を外す。


今はまだ――動く時じゃない。



その頃。


メイセキの外れ。


人の少ない路地。


建物の影に、ローブの男が立っていた。


静かに、街の中を見ている。


その視線の先。


遠くに見える自警団の建物。


「……来たか」


小さく呟く。


その隣に、もう一人。


「見つけたのか」


「ああ」


短い答え。


「間違いない。あの時の男だ」


「どうする」


少しの沈黙。


やがて、低く笑う。


「まずは様子を見る」


「接触は?」


「まだいい」


即答だった。


「急ぐ理由がない」


視線は外さない。


「壊すには、惜しい」


その言葉に、もう一人も小さく頷く。


「……面白くなりそうだな」


ローブの男は静かに言う。


「ああ」


メイセキの喧騒の中で。


誰にも気づかれないまま。


静かに――視線だけが交錯していた。

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