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45歳。転移、若返り、強くなる!  作者: ユーマ


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12話


村に戻って、数日が経った。


エレナからの報告は、まだ来ていない。


朝。


ユーマが窓を開けた時、村の入口の方が騒がしかった。


怒鳴り声。

慌ただしい足音。


ただ事じゃない。


外へ出ると、村長と男たちが誰かを運び込んでいた。


荷台付きの馬車が二台。


そこに寝かされているのは、血まみれの人間だった。


「何があった」


ユーマが低く聞く。


村長が振り向く。


顔色が悪い。


「街道でやられた。隊商だ」


運ばれている男の腕は、深く裂けている。

女は足を噛みちぎられかけていた。


ただの怪我じゃない。


ユーマはしゃがみ込む。


「……これ、放っておくと悪化するぞ」


「分かってる」

村長が歯を食いしばる。


ユーマは布を掴み、男の腕を押さえた。


「我慢しろ」


「ぐっ……!」


「すぐ止める」


手際は慣れていた。

強く、でも無駄に痛めないように。


「ナキ、水持ってきてくれ」


「う、うん!」


ナキが走る。


ユーマは傷口を見ながら、眉をひそめた。


(嫌な流れだな……)


傷の奥に、何かが残っている。


魔力の乱れ。


自然じゃない。


「魔物は?」


「でかい狼だ……」

怪我人が震える声で言う。


「しかも……光を吐いた……」


ユーマの目が細くなる。


その時。


馬の足音が近づいてきた。


村の入口に現れたのは、自警団だった。


先頭はガトリン。

その横にエレナ。


後ろには完全武装の団員が続く。


ガトリンがすぐに状況を見る。


「……間に合わなかったか」


「知ってるのか」


「昨日、似た報告があった」


顔が険しい。


「前のとは別物だ。もっと危険だぞ」


ユーマが立ち上がる。


「案内しろ」


ガトリンがちらっと見る。


「来る気か」


「放っておけない」


短く、それだけ。


ガトリンは一瞬だけ笑った。

「いい目してるじゃねぇか」


「総員、森へ入る!警戒しろ!」


部隊が動く。


ナキがユーマの服を掴んだ。


「……無理しないで」


ユーマは少しだけ振り向く。


「ナキも、無理するな。危なかったらすぐ逃げろ」


「……うん」


それだけ言って、ユーマは前を向いた。


森に入る。


空気が重い。


音が少ない。


生き物の気配が、薄い。


「……変だな」

ユーマが呟く。


「何がだ」

ガトリンが聞く。


「静かすぎる。普通、もっと気配がある」


言い終わる前に――


来た。


「右!」


ユーマが叫ぶ。


次の瞬間。


木々をなぎ倒して、巨体が突っ込んできた。


デカい。


牛どころじゃない。


異様な魔狼。


「散開!」


ガトリンの指示が飛ぶ。


だが遅い。


一人、盾役が直撃を受ける。


吹き飛ぶ。


「くそっ!」


槍兵が突く。


弾かれる。


硬い。


ユーマが前に出る。


「下がれ!」


近くの団員の肩を掴んで引き下げる。


「無理に前出るな、狙われる!」


「す、すまん……!」


魔狼が咆哮する。


次の動きが見える。


喉に魔力が集まる。


「来るぞ!伏せろ!」


間に合わない。


ユーマは一歩踏み出した。


「こっちだ!」


あえて前に出る。


視線を引きつける。


次の瞬間。


赤黒い光が放たれた。


直撃。


爆音。


地面が抉れる。


「ユーマ!!」


エレナの叫び。


だが――


煙の中から、ユーマは立っていた。


息は荒い。


服は焼けている。


だが倒れていない。


「……やっぱりか」


ガトリンが低く言う。


ユーマは少しだけ顔をしかめた。


(効いてないわけじゃないな……)


ダメージはある。


ただ、“殺されるほどじゃない”。


魔法が触れた瞬間、弱まっている。


だが――


「長くは持たねぇな……」


小さく呟く。


魔狼が再び来る。


速い。


重い。


ユーマは剣を構える。


受ける。


重い。


腕に響く。


(さっきより……強い?)


違う。


“慣れてきてる”。


攻撃が洗練されている。


「チッ……!」


一瞬遅れる。


肩をかすめる。


血が飛ぶ。


「ユーマ!」


「大丈夫だ!」


短く返す。


だが呼吸が荒い。


連撃。


防ぐ。

避ける。


間に合わない。


「ぐっ……!」


吹き飛ばされる。


地面を転がる。


団員たちが息を呑む。


「おい……押されてるぞ……!」


ユーマが立ち上がる。


足が少し重い。


(早いな……消耗が)


見える。


魔力の流れは見える。


だが、身体がついてこなくなり始めている。


エレナが叫ぶ。

「時間作る!下がって!」


氷魔法。


足止め。


ガトリンが前に出る。


「一回仕切り直すぞ!」


ユーマは息を整えながら言う。


「……いや、いける」


「無茶すんな」


「大丈夫だ。次で終わらせる」


ガトリンが一瞬だけ目を細める。


「……分かった。合わせる」


ユーマが構える。


視線が一点に集中する。


胸。


そこに全部集まっている。


(あそこだ……)


だが距離が足りない。


その瞬間。


「今!」


エレナの火球。


視界を奪う。


ガトリンの一撃。


体勢が崩れる。


ユーマが踏み込む。


だが――


魔狼が無理やり身体を捻る。


牙。


避けきれない。


(間に合わない――)


その瞬間。


横から盾が入る。


団員だった。


「通せ!!」


ユーマの目が一瞬だけ見開かれる。


(……助かった)


迷いは消えた。


一閃。


深く突き刺さる。


中心を断つ。


魔力が崩れる。


巨体が崩れ落ちる。


静寂。


誰も動かない。


ユーマはその場に立っていたが――


ふらつく。


「……あー……さすがに、きついな」


そのまま膝をついた。


ナキが駆け寄る。


「ユーマ!」


「大丈夫……ちょっと疲れただけだ」


安心させるように言う。


そのまま倒れる。


意識が落ちる直前。


視界の端。


木々の奥。


“何か”が動いた。


黒いローブ。


人影。


そいつは、倒れた魔狼から赤い核を拾い上げる。


そして。


ユーマと目が合った。


ほんの一瞬。


――笑った気がした。


次の瞬間、姿は消えた。


「……逃げた……のか」


そこで、意識が途切れた。

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