表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45歳。転移、若返り、強くなる!  作者: ユーマ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/28

11話


「嫌だ」


即答だった。


訓練場にいた団員たちが固まる。


ガトリンですら一瞬だけ言葉を失った。


エレナは吹き出し、ナキは小さく息を吐いた。


ユーマは木槍を返しながら言った。


「縛られるのは苦手なんだ」


「即答かよ……」


ガトリンは呆れたように頭を掻く。


「自警団ってのはそんな悪いもんじゃねぇぞ。飯は出る、寝床もある、多少の金も出る」


「それはありがたいな。でも、今は困ってない」


「村でも飯は食える、か」


「世話になってるしな」


ガトリンは鼻で笑った。


「だが魔物は出る」


「それはどこも同じだろ」


「違うな」


ガトリンの声が少し低くなる。


「ここは、守る側だ」


ユーマは答えなかった。


少しだけ考えるように視線を落とす。


だが、すぐに顔を上げた。


「……今は、決められない」


ガトリンはしばらく黙っていたが、やがて肩をすくめた。


「まあいい。すぐ決めろとは言わねぇ」


「助かる」


「ただ、お前みたいな奴は必要だ。今まで見たこともねぇ」


そう言うと、ガトリンは団員たちに指示を飛ばし始めた。


訓練場の空気が少しずつ戻っていく。


エレナが近づいてきた。

「団長、結構本気で欲しがってるね」


「そうか」


「そうか、じゃないよ。あの人があそこまで言うの珍しいんだから」


エレナはくすっと笑ってナキを見る。

「ナキちゃんはどう思う?」


「え?」


「ユーマがメイセキに住むの」


ナキは言葉に詰まった。


嫌だ。


そう思った。


でも、それを言っていいのか分からなかった。


ユーマは強い。


必要とされている。


ここにいた方がいいのは、きっと間違いない。


でも――


ナキは視線を落とした。

「……分からない」


エレナはそれ以上聞かなかった。


夕方。


二人はメイセキを出て、村へ戻る道を歩いていた。


空は赤く染まり、風が少し冷たい。


ユーマはいつも通りの歩調で前を行く。


ナキはその少し後ろを歩きながら、何度も横顔を見た。


言いたいことがある。


でも、うまく言葉にならない。


しばらくして。


ユーマがぽつりと口を開いた。


「嫌だったか」


「え?」


「俺があそこに残る話」


ナキは足を止めかけた。


ユーマは振り向かないまま続ける。


「顔に出てた」


「……出てない」


「出てた」


短くて、逃げ場のない言葉。


ナキは小さく息を詰まらせた。


ユーマは少しだけ声を落とす。


「無理に言わなくていい」


その一言は、優しかった。


責めるでもなく、探るでもない。


ただ、置いてくれる言い方。


ナキは少しだけ肩の力を抜いた。


それでも、言葉を探す。


「……でも」


小さく声が出る。


「ユーマは、ああいう場所の方がいいと思う」


ユーマの足が止まった。


ナキは俯いたまま続ける。


「強いし、必要とされてるし……村にいるより、きっと」


その先が続かない。


胸が苦しくなる。


言いたいのに、言いたくない。


そんな感覚。


沈黙。


風の音だけが通り過ぎる。


やがて。


ユーマが静かに言った。


「一人で行くつもりはない」


ナキが顔を上げる。


ユーマは少し困ったように笑っていた。


「ナキを置いていく理由もないしな」


心臓が大きく鳴る。


「……そういう言い方、ずるい」


「そうか?」


「そう」


ナキは顔を逸らす。


でも、さっきまでより呼吸が楽だった。


ユーマは続ける。


「俺はこの世界のことを知らない」


「……うん」


「金のことも、街のことも、魔道具も」


ナキは思い出す。


火の魔道具。


ユーマは使えなかった。


強いのに、そういうことは何も知らない。


「一人だと、たぶん色々やらかす」


少しだけ苦笑するユーマ。


ナキは思わず小さく笑った。


「やらかすわね」


「だろ」


「絶対騙される」


「それは困るな」


少しだけ、空気が軽くなる。


ナキは小さく息を吸った。


「……だから」


言葉を選ぶ。


「私がいないと、困るでしょ」


ユーマは少し考えてから答えた。


「そうだな」


間を置いて、もう一度。


「助かってる」


まっすぐな言葉だった。


飾りも、照れもない。


だからこそ、強い。


ナキは何も言えなくなる。


ただ、小さく頷いた。


「……うん」


二人はまた歩き出す。


さっきより少しだけ距離が近い。


夕焼けの中、影が並んで伸びていく。


村までの道は、まだ続いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ